第4波の脅威が迫る中、山口と福岡を移動する日々が続いている。1月末、隣町の病院へ救急搬送された姉も、先月末、ようやく地元の病院へ転院でき(といっても面会はできないが)、専門的な治療がはじまった。その往来の際に見かけたのが、防衛省が整備を進めている埴生の宇宙監視レーダー基地である。造成工事は2019年9月に始まっているが、工事は大幅に遅れているようだ。
ここは、もともと海上自衛隊山陽受信所跡地(約13万4千㎡)。潜水艦などを探す海自岩国基地の哨戒機からの情報を受信する施設だったが、2010年に閉鎖し更地となっていた。そこに人工衛星と衝突の危険性がある宇宙ごみ(スペースデブリ)を監視するために、防衛省がレーダー基地を整備しているわけだが、目的はそれだけでない。というよりも、中国やロシアが開発する対衛星攻撃兵器「キラー衛星」の監視が重要な役割だとされている。ここで得られた情報を米軍と共有し、宇宙空間で中国とロシアを牽制する狙いがあるという。いわば、自衛隊初の宇宙部隊が運用する軍事施設なのだ。それゆえ、地元住民から不安や反対の声が上がっている。
レーダー施設は無人だが24時間体制で宇宙空間の静止軌道上の日本の衛星を見守るという。昨年5月、東京都府中市の航空自衛隊府中基地に新設された「宇宙作戦隊」が遠隔地で運用する。当初の予定では、20~21年度に6基のレーダー局舎を建設、23年度にパラボラアンテナ(直径15m)を設置、同年に運用が開始されるようになっている。ところが、現場はレーダー局舎どころか基礎工事もはじまっていない。コロナの影響なのかはわからないが、今後の動向を注視していきたい。
※進捗状況はこちら、随時更新中です。
撮影日:2021.4.19
造成工事はまだ終わっていない様子 (山陽道から撮影)
ちなみに、この辺りの地質は砂岩、泥岩。崩れやすいのかフレコンバッグが見られる(地質Navi使用)
こちらは埴生インター側から(2020年5月撮影) 今も大して変わっていない
造成前の海上自衛隊山陽受信所跡地(左が山陽道、上は国道2号線 埴生インターへ 写真:中国新聞より)
設備配置図
何かが起これば、山陽道が通行不能に、、 (防衛省資料より)
《関連記事》
・宇宙監視レーダー、着工控え説明会【山陽小野田】(宇部日報 2019.8.29)
・衛星守る軍事施設宇宙監視レーダー建設対中露 米軍と情報共有(中国新聞 2019.8.31)
《参考資料》
・山陽小野田市『防衛省中国四国防衛局。山陽受信所跡地における施設整備工事の概要』(2019年8月)
・増山博行(山口大学理学部元教授) 「防衛省、山陽小野田に宇宙監視レーダーを設置」(pdf資料)