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♪「嫌われ松子の一生」 山田宗樹著(幻冬舎文庫)
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父の愛情を受けんがために、一生懸命勉強し、国立大学を卒業して中学の教師になった松子。美人で才媛で、これから順風満帆の人生が待っていたはずなのに、たった一段の階段を踏み外し、一気に人生の奈落に転落する運命を辿る。
いや奈落といっても、そこにはそれなりの悪くない人生があったし、這いだす道もあった。でもツキに恵まれないというか、人(男)を見る目がないというか、ある意味の自信過剰というか、岐路の選択を悉く過つ人生だな。最後は松子が哀れでならない。
「嫌われ…」とあるが、必ずしも嫌われっ放しではなく、奈落の中では相応に好かれていた。やっぱり「道を過った」としか言いようがない。それでも甥の笙(しょう)が、松子の人生を追いかけ、炙り出してくれたことに、救いがあるのではないか。笙の父親(松子の弟)が、この人生の軌跡を知ったらどうするのだろう。消し去りようのない後悔に苛まれるのだろうか。
この歳になると、自分の人生を振り返って、いくつかの岐路があったことに気づく。向うの道を進んでいたら、今よりも幸せだったかどうかは、誰にも確かめようがない。でも、その時は随分悩んだとしても、今思えば選択肢が多いに越したことはないと分かる。
せめて子供には、前広に選択肢をたくさん作って欲しい。早い時期に選択肢を狭め、行く先を決めてしまうのは、決して得策ではないのだから。
ところで、最近子供ネタが続いていないかって?…父さんだって悩むのさ…