またひとり、実力派の作家がデビューされました。

花屋の手伝いをする深山朝子と5人の小・中学生との出会いが織りなす、五つの物語。
人間関係のストレスで会社を辞めた朝子は、小学生にも敬語をつかうような、やさしくてちょっと気が弱い性格。
花屋の店先で、また、配達先でと、新しい出会いがあって……。
・私服で登校するカジュアルデーに、迷ったあげく制服で登校してた高橋美月。
・自分のことをなんていえばいいのと迷う川田みちる。「わたし」とうまくいえない
・週に1回やってくる謎の男性、オーノくんのことが気にかかってしかたないが、それをストレートに聞くこともできない遠藤莉子
・まわりの人間関係が変わる速度にうまく順応できず、ついけんかしていまった小林フミカ
・廃業した旅館を定期的にメンテナンスをしてきた森脇晴臣。そこが自分の居場所だったのにそうもいかなくなり……
この五人にうまく朝子ちゃんがからむのです。からみすぎず、その割合がとてもいい。
そして、多感な時期の小中学生の思いを、すくいあげるように細やかに書いています。デビュー作とは思えない完成度で引きこまれました。
高村さんは、創作教室のとき、講師として少し接したことがあります。ただ、代打だったので、1,2回だったように思いますが。
その創作教室のメンバーはどの方も書ける方で、活発な会で印象に残っています。
その中でも、高村さんの作品はひときわ目立っていました。
他の創作教室のメンバーも、きっと高村さんに続き、これからどんどん活躍されていかれるでしょう。
若い作家だけにちゃんと子ども像が新しい。それでいて、表現のしかたが工夫されていて、細かいところに文学性も感じました。
デビュー、おめでとう。桜が咲くいい季節にデビューできてよかったですね。