事業部だったとき、ごいっしょした小林史人さんがデビューされました。
本は五月二日発売だそうです。さ・え・ら書房からです。
タイトルからして、ひきつけられますよね。表紙の絵もおもしろいです。
児童文学は長らく女性作家が多く、ひっぱってきました。もちろん、後藤竜司、那須正幹先生など人気作家はいらっしゃいましたが、近年、男性作家が少ない傾向でした。
だから、今回の作品のように骨太の作品をだす男性の作家はまちのぞんでいたわけです。
この作品、『ぼくに友だちがいない理由』は、小五の鈴木育人の視点で語られます。
男子の心情でストーリーが動くわけです。これがそもそも、めずらしい。女性作家は女子目線が多いですから。
几帳面な性格の育人は、整理整頓係りになりますが、同じ係りのさとるは係りの仕事をしません。なんとか、仕事をさせようとさとるを追いかけるうちに、なぜか、うさぎの世話をすることになります。まわりから、さとる係りといわれたりもします。こういう人、いたなーって思いだしますよね。
がんばっていろんなことに取り組んでいく育人ですが、さとるから、うるさがられ「きらい」といわれてしまい、落ち込みます。
そこに、マコちゃんと田沢くんの対立が悪化。ついにけんかが勃発して……。
とても生き生きしたリアルな小学生ライフが展開しています。その中で、やはり男子のワイルドさ、女子とはちょっとちがう男同士の人間関係みたいなのがうまく描かれていて、さすがだなーと思いました。そして、ラスト、階段をかけあがっていく育人がカッコいいです。
だからといって、男性優位目線で書いているわけではありません。女子もちゃんと活躍するし、いい役割を果たしてくれます。
ちらりちらりと書かれる、ある女子を思う育人の恋心がいじらしいですね。ぜひ、読んでみてください。
小林史人さんは、日本児童文学者協会の創作教室出身です。
わたしも講師として二回くらい担当しましたが、小林史人さんは、文章力があり、短編では完成されたものを書いていました。
ただ、やはり、児童書特有のむずかしさ、子どもの視点になりきって書くってところで、少し足踏みされたのかもしれません。でも、この作品で実力を発揮されたと思います。本当におめでとうございます。前向きに、がんばっていらしたからこその成果だったと思います、
小林史人さんの代は書ける人が多く、志津栄子さん、高村有子さんも同期だったんじゃないかな?
ほかにも実力者がいてがんばってらっしゃるので、じきにデビューされると思います。
自分が少しでも、かかわった方がデビューされるのはうれしいですね。
今は児童書というか本全体が冬の時代。デビューは本当にむずかしいです。そこを良く突破されたなーと思いました。
でも、ここがスタート。これからの活躍も期待しています。
さて、その小林史人さんですが、組織部でだす文学フリマでこの新刊を売ってくださるそうです。
五月11日、東京ビックサイトです。詳しくは組織部ブログ、読んでいらしてください。
ぶーす きー47,48 です。入場券1000円がいります。