DVD番号 A-100189
収録年 1992年
評価(A+、A-、B+、B-、Cの5段階評価)
総 合 A- 予算節約型の舞台装置だが、音楽性の高い魔笛
指揮者 A- ヴォルフガング・ゲンネンヴァイン
管弦楽団 A- ルートヴィヒスブルク音楽祭管弦楽団
合唱団 A- 同 合唱団
ザラストロ A- コルネーリウス・ハウプトマン
夜の女王 A+ アンドレア・フライ
タミーノ A- デオン・ファン・デル・ヴァルト
パミーナ A- ウルリーケ ゾンターク
パパゲーノ A- トーマス・モール
演出・舞台装置 A- 豪華ではないがよく考えられている
音 質 A- 優れた音質で心地よい響きに満たされる
上映時間 147分
ドイツのルートヴィヒスブルク城内劇場でのライブ収録である。
透き通った奥行きのある音質が耳に心地よい響きを与えてくれてライブ録音のメリットを生かした出来栄えだった。オーケストラも弦が厚く切れ味が鋭い。おそらく、余程音響効果に優れた劇場だろう。
演出は随所に無駄なお金を掛けない工夫がいろいろとなされており、シンプルで素朴な舞台装置、現代と古代とをミックスした衣装、色彩感覚豊かなイメージでこれまでにない独創的な魔笛で映像の方も満足できるものだった。
歌手ではザラストロ役は聖者にふさわしい威厳を表現した歌唱力で十分な出来栄え。
夜の女王役も超難度の2つのアリアを余裕をもってこなしており、華麗さも伺えて言うことなし。
タミーノ役は声の張り、艶ともにあのシュライアーの系統に属するが残念ながらもっと情感に訴えかける歌唱力がほしい。
パミーナ役のソプラノもなかなか良かったが、王女役としてのイメージはいまひとつの感があり、衣装ももっと考えた方がよい。
パパゲーノ役は歌唱力、演技とも申し分なし。
指揮者をはじめ歌手陣も始めて聞く名前ばかりで全然期待していなかったが予想を上回る出来栄えだった。
アリアや重唱などあらゆる歌唱に場面に応じた情感がきれいに表現されており、劇の運びも快調で演技も含めて全てに神経が行き届いている印象だ。
指揮者のゲンネンヴァインは、ネットで調べても生年が分からないほどマイナーだがどうやら宗教音楽を主に指揮しているようでその純粋さがこの魔笛にも生かされていると思った。
どちらかといえば、舞台装置や演出よりも音楽の美しさに比重を置いた魔笛でこういう趣向の魔笛はDVDといえども大歓迎で、録音もいいし、歌手もいいし、オーケストラもいいし目を閉じて映像を見なくても聴覚だけで十分に楽しめる域に達している。
さすがに、ドイツはワーグナーの楽劇できたえられているだけに魔笛にしてもレベルが高い印象。
舞台装置 パミーナとタミーノ