前々回の「身を以って体験した疲れる音」の続きです。
ウェストミンスター(改)に載せていた「AXIOM80」(復刻版)の後始末の話だが、手っ取り早くこの画像で「一目瞭然」といこう。
言わずもがなだが、上が「AXIOM80」(以下、「80」)の復刻版、下が「スーパー10」(ワーフェデール:口径25センチ、赤帯マグネット)。
80をフルレンジで鳴らし、「スーパー10」を低音域専用(100ヘルツ以下)で鳴らしてみようという魂胆である。
置き場所に困っての窮余の一策だったが、さあ「鬼が出るか蛇が出るか」(笑)。
とはいえ、両ユニットとも同じイギリス勢だし、しかも揃って赤帯マグネットの持ち主だし音色にあまり違和感がないだろうという見込みはある。
両方の小振りの箱とも自作で、半年ほど前に仲間に加勢してもらい「木の共鳴」を狙ってわざわざ薄い板(1.2mm)を使い組み立てたもの。
中身は定在波を防ぐために卵用のトレイを沢山張り付けている。製作当時の画像を再掲。
小さな箱なりに「ARU」(背圧調整器)も後方に付けている。これが無いと「80」の構造上(エッジレスをはじめ繊細なツクリ)からして即アウトである。
なぜなら、後面開放や平面バッフルで鳴らしたために故障(雑音発生)の憂き目を何度も経験しており、そのたびに福沢諭吉が2~3枚飛んでいくのだからたまらん!(笑)
駆動するアンプは「80」がWE300B シングルアンプ、「スーパー10」は力のある「KT88プッシュプル」の出番。
何せ「80」だから大きなハズレはあるまいと踏んでいたが、想像以上に素晴らしかった。
「いい音」の基準は「スケール感」や「透明感」などいろいろあるし、音への感性も人それぞれだが、こと「透明感」に絞り込むとすればこれまでの我が家のシステムの中でも最高クラスだろう。
ただし、低音域を受け持つ箱のツクリが頑丈ではないので歯切れのいい低音は望むべくもなく、あくまでもクラシック向きの緩くてたるんだ音だがこのシステムの狙いとしてはそれで十分。
じっくり耳を傾けて聴いてみると、弦楽器の出来栄えがことのほか素晴らしくて、久しぶりにモーツァルトの弦楽奏曲を聴く気になった。
まずは「弦楽三重奏曲 K563」
35歳で亡くなったモーツァルトの作品数は600曲以上に及ぶが「作品番号」が「563」なので、調べてみたら32歳のときの作品だった。まさに脂が乗り切ったときの作品。
手持ちのCDは3枚。
上段がウィーンフィルハーモニーの選抜メンバー、下段左が「アマデウス弦楽四重奏団」、右側がギドン・クレーメル(ヴァイオリン)を中心とした三重奏団。
一応「ディヴェルトメント」(気晴らしの娯楽向け)となっているが、個人的にはれっきとした「弦楽三重奏曲」の方がふさわしいと思っている。
天馬空を駆けるような若い頃の作品とは違って思索的な気風が横溢した曲で40代のころに、それこそ盤が擦り切れるほど聴いた想い出の曲で、この中では「ウィーン・フィル選抜メンバー」が一番好み。クレーメル盤は少し醒めすぎている。
続いて、弦楽カルテットの「第19番 不協和音 K465」を聴いた。
これは「ハイドンセット」全6曲中の最終曲になる。
モーツァルトは楽譜に修正の後がないことで有名だが、さすがに敬愛するハイドンに献呈するとなると至るところに書き直しの後が認められるという曰く付きの曲目であり、数ある室内楽の中でも屈指の名曲とされている。
と、ライナーノートに書いてあったが、自分にはむしろモーツァルトらしい軽快さが失われていると感じた。
モーツァルトは一度書き込んだら修正なんかしない方がいい、考え過ぎたらダメだよ~、と、「ハイドンセット」全般に亘ってどうしようもなく叫びたくなる(笑)。
いずれにしても、弦合奏の艶やかな響きを聴きながらこれからこのシステムをメインにしてもいいかもねえと、ウットリと聴き惚れたことだった。
そのうち、こんなに「いい音」を独り占めするのはもったいない、仲間にぜひ聴いてもらいたいという気持ちになった。
実は「どうです!いい音でしょう」と自慢したい気が無いと言ったら嘘になる(笑)。
折りしも大分の仲間から「委託されたオークションの代金を持参しますけど、ご都合いかがですか?」
このところ、人生の残り時間に鑑みて不要なオーディオ機器を次々にオークションに放出している状況にある。不要になった機器も違ったところで有効活用してもらえるのだから不満はないはず(笑)。
話は戻って「ハイ、OKですよ~。いつでもどうぞ。」
というわけで、日程は5日(土)の午後に決定した。
丁度いい機会なので久しぶりにご近所の「Y」さんにも声をかけて総勢4人による試聴会となった。
お客さんに満足していただけるという意味では、これまでで一番自信が持てる試聴会だったがはたしてその成り行きは・・・。
以下、続く。
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