日頃読んでいただいている読者ならご承知の通り、スピーカーをとっかえひっかえしているオーディオ三昧の毎日だが、実際のところ当たりの確率といえば「1/10」くらいですかね。
言い換えると、「良くもない悪くもない」という「普通の音」が9割というわけ。
ブログでは毎回「素晴らしい音」が出たかのように記載しているがそれは当初だけで1~2週間じっくり聴き込むと何かしら欠点が鼻についてきて「普通の音」に成り下がってしまう。
これはスピーカーに限らず押しなべてオーディオ機器はそういうところがある。
いや、オーディオに限らず「人間世界」だってそう。自分だって欠点があるのにね~(笑)。
つまり、「新鮮さはそれだけで人を惑わせる」ということが言いたいわけだが、今回は珍しく1/10に該当する本格的な「当たり」が出たので報告させてもらおう。
つい先日のブログ「ジャズ愛好家から所望があったオーディオ機器」の中で、「075ツィーター」(JBL)と並んで、興味を持っていただいたのが「トライアクショム」(グッドマン)。
口径30センチの同軸3ウェイで、まず滅多にオークションでも見かけない古典派ユニットの逸品である。
実を言うと、我が家ではまだうまく鳴らし切れていないユニットである。どうしても中高音域が優って低音域がついてこない感じといえばいいのかな。
もっと音の重心を下げたいのだが、フルレンジ方式なので2台のアンプを使うわけにもいかないし~。
そこで、ジャズ愛好家からご所望があったことでもあり再び欲が出て今度はまったく違う視点からトライしてみる気になった。
以前「AXIOM80」(オリジナル)を容れていた「自作の箱」(板厚1.5cm)を活用しようという算段である。
それも思い切った手段で勝負してみた。
「トライアクショム」を300ヘルあたりでハイカット(コイル:6.8mH)し、その上に「175ドライバー」(JBL)を1500ヘルツあたりでローカット(オイルコンデンサー:12μF)するという荒療治である。
おそらく世界中でも類を見ない組み合わせだろう。
ん!?
「お前のポリシーだった200から4000ヘルツまではマグネットの違うユニットを混ぜ合わせない」というのはどうした?
さらには「金属のダイアフラム+ホーンでは弦楽器がうまく鳴らない」というのはどうした?
また「宗旨替え」かと怒鳴られそうだ。
ま、「非常事態の前ではそんな悠長なことは言ってられない」と申し上げておこう。
ほら、「論語」に「君子豹変す」という言葉があるでしょうが(笑)。
とにかくこれで信じられないほど「いい音」が出たんですよねえ。
「トライアクショム」のコーン紙がメチャ軽いため、低音がそれはもう小気味よく弾んでくるのには参った!
ポピュラー「オンリー・イェスタデイ」(カーペンターズ)の冒頭のバスドラムが「カツン、カツン」と理想的な弾み方で迫ってきた!
以前に聴かせてもらった福岡の「S」さん宅の「モニター・シルヴァー」(タンノイ)を彷彿とさせてくれるような透明感のある低音だ。
そして、「175ドライバー」の水も滴るようなヴァイオリンの響きにもウットリ。世の中には例外がいくらでもあるんですねえ(笑)。
ちなみに、「175」を駆動するアンプは、出力管が71系の「171(トリタン・フィラメント)シングル」アンプである。前段管は「A411」(バリウム昇華型フィラメント)。
古き良き時代の真空管は「フィラメント」に凝ってますよ~。
あのJBLの冷たい素っ気なさがみるみる影を潜めてクラシック向きの穏やかな暖かい音になるのがいかにも不思議。
それにしてもよくもこんな「ずぼら」なネットワークで鳴るもんだと感じ入った。
ハイカットが300ヘルツ(ー6db/oct)、ローカットが1500ヘルツということから、「300ヘルツの2倍=600ヘルツ」まで「ー6db」の減衰カーブ、そして「1500ヘルツの1/2=750ヘルツ」まで「-6db」の減衰カーブのお互いが丁度折よく馴染んだのだろう。
もちろん、2台のパワーアンプ側のボリューム調整が必要だが、あまりにも気に入ったサウンドが出たため、この1週間ほどこのスピーカーにかかりっきりで、ほかのスピーカーを聴く気がしない。
いや、今度こそ「ほんとの当たり」だってば~(笑)。