自分の生涯を通じての趣味といえば3つあって「音楽&オーディオ」「魚釣り」「ミステリーを読む」だが、このうち「魚釣り」は体力の衰えとともに足が遠のくばかりだし、「ミステリー」は根気と集中力の持続性に問題があって一気読みが難しくなってしまった・・、で、今や「音楽&オーディオ」が以前にもまして存在感を増してきて、どっぷり浸かっている有様だ。
とにかくオーディオをやっていると時間がいくらあっても足りないのだから、このくらいありがたい趣味はない。
ときどき、これは「趣味の王様」ではなかろうかとさえ思う。
と、ここまで書いてきて、ふと過去記事を思い出した。再掲しよう。
読売新聞の朝刊に目を通していたら、3面の片隅に載っていた小見出しが視野に入った。「シベリア抑留死名簿 新たに5000人」。
フ~ンという感じでそのまま紙面をめくっていくと、改めて3面すべてを使ってカタカナで5000名の氏名が個別に記載されていた。
すると、急に一人ひとりの名前の背景にある人生が立体的に浮かび上がってきて、何だかいたたまれないような気持ちになってしまった。
厳寒の地シベリアから無事生き延びてどれだけ故郷日本の土を踏みたかったことだろうと思うと、お気の毒という月並みな言葉ではとても済まされず、つい言葉を失ってしまう。
つくづく平和な時代に生まれてよかったと、ありがたさを噛みしめるとともにオーディオに夢中になって音質がどうのこうのと勝手な御託を並べているじぶんが、何かとんでもない贅沢をしているように思えてきた。
「音が無事に出て音楽が聴けるだけでもありがたいと思え」とお叱りをうけているような気分だ。
それかといって(オーディオを)止める気にもならないが(笑)、頭の片隅に刻み込んでおくことは必要だろう。
そういえば、いろいろある趣味の中で「オーディオは世界一の贅沢だと思う」という記事がオーディオ専門誌に載っていた。
運動ジムの帰りに立ち寄った本屋でたまたま見かけた「ステレオ サウンド」誌。
久しぶりに現代オーディオの動きを知っておくのも悪くはなかろうという軽い気持ちで購入した。
中身の方は相変わらず〇百万円もする高価な機器のオンパレードで昔はこういう機器を手にすることができる人を うらやましく 思ったものだが、今では逆にバッカじゃなかろかと思ってしまう(笑)。
ビンテージの真空管と古典派のスピーカーという世界にどっぷり浸かると、近代システムの無機的な音なんかどうでもよくなる。
「聴いてもいないくせに無機的な音なんて言うな!」とお叱りを受けそうだが、古典管とアルニコ・マグネット付きのスピーカー独特の人肌の温もりを感じさせる音質は現代機器ではとても無理だろう。もちろん好みの世界なのであれこれ言っても詮無き事だけどね~。
一昔前の熱心に読んでいた時代と違って評論家先生の顔触れもすっかり変わってしまったが、買わせんがための抽象的な美辞麗句が羅列されているのは相変わらず。
そういう中でぐっと興味を惹かれた記事があった。
☆ オーディオは世界一の贅沢な趣味だと思う
日本で「一番音がいいジャズ喫茶」とされている「ベイシー」(岩手県一関市)の店主「菅原正二」さんは相変わらずご健在のご様子でまことにご同慶の至り。291頁に対談形式で表題の記事が掲載されていた。該当部分を抜粋してみよう。
「何が大事って音より大事なことはない。オーディオによって古今東西の音楽を居ながらにして聴くことができるんだよ!超一流の音楽、演奏家と対話ができるんだから、こんなに凄いこと、僕にとっては他にないよ。そのための努力だったら何も惜しまない。」
「やっぱりオーディオは世界一贅沢な趣味だと思うな。音楽は何度聴いても汲めども尽きぬ魅力があるが、同じ音は二度と残せない。そのおかげで何度もトライできるし新鮮なんだと思う。オーディオは不思議なくらい飽きない。ぼくはオーディオで一生を棒に振ったかもしれないけど(笑)、おかげで退屈しないで生きてこられたと思っている。感謝してる。」
以上のとおりだが、これまでいっさい退屈することなく生きてこられたのも音楽&オーディオのおかげなので常に感謝の念を持っています~、家族に少々迷惑をかけたけどね(笑)。