「音楽&オーディオ」の小部屋

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音質を左右するプリアンプの真空管

2017年09月28日 | オーディオ談義

ブログを始めてからこれまで1700件余に及ぶ過去記事の中で、いまだにアクセスが絶えない記事のうちの一つが「プリアンプはもう要らない?」(2010年)だ。

もう7年近いロングランだから、プリアンプの存在に懐疑心というか興味を持っている人が多いのだろう。

周知のとおりプリアンプはレコードでは必須だが、CDではそれ無しでも聴ける(パワーアンプにボリューム付きの場合)ので、きっと身近な問題になっているに違いない。

念のため、この記事の内容を振り返って要点をかいつまむとこういう中味だった。

プリアンプの機能を絞ると、次の5点に絞られる。

1 種々の入力信号の切り替え  

2 フォノ入力をラインレベルに増幅 

3 ボリュームの調整 

4 高音や低音の調整 

5 正しい入力負荷インピーダンスを与え、低いインピーダンスを出力する。

このうちまず、2はレコード用の機能のためCDを聴くときには要らないし、4は余計な回路でかえって音を悪くするだけなのでこれまた不必要、そして5はよっぽど特殊なCDプレーヤーとメインアンプを使っていない限りこれまた必要なし。

となると、1と3
の機能が必要なだけなので、そうなると「パッシブプリアンプ」で十分間に合ってしまう。 

「パッシブプリアンプ」とは入力切替スイッチとボリュームだけの機能でまったく増幅を行わない制御装置のこと。」

とまあ、こういう調子だったが、何といっても機能の面で一番肝心な「音の増幅機能」を挙げ忘れていたのだからまったく世話はない(笑)。

当時は、プリアンプを使っていなかったので、滔々と「プリアンプ不要論」をぶったわけだが、今となっては現実にプリアンプを使っていることもあって若気の至りと深く反省しつつ「プリアンプの必要性はその状況によってケースバイケース」という考え方に落ち着いている。

現時点での我が家の場合、プリアンプを外すと何だか音が蒸留水のようになるし力感も無くなるので、プラス面、マイナス面の差し引きを考慮した結果、使う方がプラス面が多いと判断している。

もちろん、良質のプリアンプを使うというのが絶対に欠かせない条件だが、その点では過去にはない実に恵まれた状況にある。

4台もの真空管式のプリアンプが選り取り見取りの状態で、その内訳だが知る人ぞ知るクリスキットの「マークⅥカスタム」(2台)、プリアンプ3号機(12AX7を6本使用)、同4号機(12AX7を3本使用)と、いずれも甲乙つけ難し。

これらの4台を手に入れた経緯を述べると、いずれも半年前から懇意になったオーディオ仲間が絡んでいる。

まず、「マークⅥカスタム」の改造機を譲ってもらったところ、これまで使ってきた中で一番気に入ったのでオークションで完品として整備済みの2号機を手に入れて予備とした。

すると、仲間が「プリアンプならまだあるよ」と、ご自宅の倉庫から2台見つけて持参されたので試聴してみたところ、いずれもGOODで是非にと譲っていただいた。これをプリアンプ3号機、4号機としておこう。

肝心のお値段の方だが「使ってくれればそれでいいです。気持ちだけいただいておきます。」ということなので、ご好意に甘えて雀の涙のような金額で決着させてもらったのは、ほんとうにありがたい限り(笑)。

現在は「マークⅥカスタム」1号機とプリアンプ3号機を同時並行して接続しスピーカーごとに使い分けしている。

詳細なツクリは省くが「マークⅥカスタム」では使用真空管が「12AU7」を6本使用してあり、片や「プリアンプ3号機」では「12AX7」が6本使用してある。

通常、プリアンプに使用されている定番ともいえる真空管は「12AU7」と「12AX7」なので、この2種類の比較がモロに出来るので実に興味深い。

両者の比較でいちばん違うのは「μ(ミュー)=増幅率」で、前者が20前後で、後者は100前後と5倍も違う。こんなに違うと音質の傾向も違ってきて当たり前だろう。

もちろんμだけで比較するのは短慮の謗りを免れないだろうが、あえて全般的な印象を述べてみると「12AU7」は穏やかでおとなしいもののチョット刺激が物足りない印象を受けるし、その一方「12AX7」は切れ味が良くて音がやや前に飛び出してくる感じで、上滑り気味の印象を受ける。

ずっと以前にあの有名な「マランツ7」(復刻版)を使っていたことがあり、これは12AX7を6本使用してあったが、やはり同様の傾向があった。

したがって、我が家では12AU7がクラシック向きとすると、12AX7はジャズ向きの傾向にあると勝手に判断している。

そういうわけでクラシック向きのグッドマン(AXIOM80や150マークⅡ)を聴くときはクリスキット1号機を使うことが多いものの、つい接続が面倒くさくなってプリアンプ3号機で聴くことも再々あり、その都度「もう少しおとなしく鳴ってくれると言うこと無しなんだが・・・。」

そこで、元の持ち主だった仲間に訊ねてみた。

「プリアンプに使ってある12AX7ですけど、12AU7に差し替えが利きますかね?基板の印字にはわざわざ12AX7とハッキリ書いてありますけどねえ」

「ああ、別に構いませんよ。何を挿しても鳴ると思いますよ~。」 

何ともおおらかな返事に
「エ~ッ、ほんとにいいんですか!?」とビックリ。

さっそく、12AX7(6本)を総入れ替えして実験してみることにした。

しかし、ありきたりの12AU7を挿し込むのではあまりにも芸が無いので代わりに挿し込んだのが「E180CC」だった。これはヨーロッパ系の真空管で手元に10本近くもあり、使ってやらないと勿体ないといつものビンボー性が手伝っている(笑)。

これがプリアンプ3号機の内部画像で、稀少なジャデスの回路基板が使ってある。大きめの電源トランスといい、容量の大きな電界コンデンサーといい、部品類に不足なし。

          

肝心の「E180CC」の「μ=増幅率」は50前後なので、これならクラシックにもジャズにも両方いけるかもしれないと、やや乱暴な思考法になるが、期待感がいやが上にも増してくる。

そして出てきた音といえば、まったく期待以上で、実にバランスが良くこれはまさしく12AU7と12AX7の「いいとこ取り」だと感激!

            

左がムラードのECC83(12AX7)、右が「E180CC」(7062:メイド・イン・フランス)で、ご覧のとおりやや大きめ。

これまで、プリアンプ用の真空管をいろいろ使ってきた。たとえば12AX7、12AT7、12AU7、ECC88、6FQ7、12BH7、E80CCなど多岐に及ぶが、このE180CCが我が家のシステムにはベストの相性だった。

真空管式プリアンプにご不満があったり音の変化に興味がある方で、もし差し替え可能であればこの「E180CC」を使ってみるのも面白いと思いますよ~。

「叩けよ、されば開かれん」というわけで、いっちょうやってみますか。もちろん自己責任ですが(笑)。

 

 

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