共 結 来 縁 ~ あるヴァイオリン&ヴィオラ講師の戯言 ~

山川異域、風月同天、寄諸仏子、共結来縁…山川の域異れど、風月は同天にあり、諸仏の縁に寄りたる者、来たれる縁を共に結ばむ

今日はヴェルディの歌劇《ファルスタッフ》初演の日〜豪華キャストによる大団円『この世は全て冗談』

2025年02月09日 17時17分17秒 | 音楽
今日もよく晴れた、気持ちのいい天気となりました。それでも、何だか疲れがとれずにいた私はそんないい天気の中に身を投ずるこどなく、今日も自宅で引きこもっていました…。

ところで、今日2月9日は《ファルスタッフ》が初演された日です。歌劇《ファルスタッフ》は、



ジュゼッペ・ヴェルディ(1813〜1901)作曲、アッリーゴ・ボーイト(1842〜1918)改訂と台本による3幕物のコメディア・リリカ・オペラで、原作はイギリスの劇作家ウィリアム・シェイクスピア(1564〜1616)の喜劇『ウィンザーの陽気な女房たち』です。

《ファルスタッフ》はヴェルディが80代目前に制作した最後のオペラであり、26作に及ぶヴェルディのオペラ作品の中でわずか2作しかない喜劇のうちの一つです(もう1作である初期の喜劇作品《一日だけの王様》は、現在では滅多に上演されることはありません)。また、19世紀半ば以降に書かれ、今日も上演されるイタリアオペラとしても、喜劇は《ファルスタッフ》の他にはプッチーニの中篇《ジャンニ・スキッキ》が挙げられる程度です。

シェイクスピアの劇を題材としたヴェルディのオペラは《マクベス》、《オテロ》に次いで3作目となります。同じ原作によるオペラには、カール・ディッタース・フォン・ディッタースドルフの《ウィンザーの陽気な女房たち》やアントニオ・サリエリ《ファルスタッフ》などがあり、半世紀先行してオットー・ニコライが作曲したドイツオペラ《ウィンザーの陽気な女房たち》が序曲を中心に有名ですが、これらの歌劇全体の上演機会はヴェルディ作品に比べずっと少ないものです。

《ファルスタッフ》の初演は1893年2月9日にミラノのスカラ座で行われ、大成功を収めました。直前の作品である《アイーダ》や《オテロ》ほど爆発的な人気を得たわけではないものの、《ファルスタッフ》はその高尚さと音楽的創造性のために大好評となったのでした。

全部聴くと2時間以上かかるので、今回はフィナーレの大フーガ『この世は全て冗談だ』をご紹介しようと思います。

巨漢の騎士ファルスタッフと様々な人たちとのドタバタ劇が笑いに包まれて終わると、まるでロッシーニのオペラ・ブッファのフィナーレのようにキャストが横に並んで

♪この世は全て冗談、人は皆道化師だ!

と陽気に歌います。聴いているだけなら楽しげに聴こえますが、実はこのフィナーレはファルスタッフから始まるフーガになっていて、想像以上にものすごく緻密な音楽が展開されていきます。

そんなわけで、今日はヴェルディの晩年の傑作歌劇《ファルスタッフ》から、フィナーレの大フーガ『この世は全て冗談だ』をお聴きいただきたいと思います。ポール・プリシュカ、ミレッラ・フレーニ、マリリン・ホーン、バーバラ・ボニーといった錚々たる歌手陣、ジェームス・レヴァイン指揮によるメトロポリタン歌劇場でのライブで、ヴェルディが悲劇を書き連ねた果てに行き着いた境地たる喜劇の愛すべきエンディングをお楽しみください。


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