今日は雨こそ降らなかったものの、日差しに恵まれなかったためか寒い一日となりました。今日は気象庁によって東京のソメイヨシノの開花が予想されていましたが、どうやらまだ無理な様子です。
ところで、今日3月24日はテレマンの誕生日です。
ゲオルク・フィリップ・テレマン(1681〜1767)は後期バロック音楽を代表するドイツの作曲家で、40歳以降は主に北ドイツのハンブルクで活躍した人物です。
テレマンは18世紀前半のドイツにおいて高い人気と名声を誇っていただけでなくフランスでの人気も高かった作曲家で、クラシック音楽史上もっとも多くの曲を作った作曲家としてギネスブックにも登録されました。作曲だけでなくヴァイオリンやオルガン、チェンバロ、リコーダー、リュートなど多くの楽器を演奏することができ、特にヴァイオリンとリコーダーについては高い技術を有する名人であったといいます。
同時代の作曲家であったゲオルク・フリードリヒ・ヘンデル(1685〜1759)とはライプツィヒ大学時代からの友人で、頻繁に手紙のやり取りをしていました。またヨハン・セバスティアン・バッハ(1685〜1750)とも親密な交友関係にあり、バッハの次男カール・フィリップ・エマヌエルの名付け親になっただけでなく、1750年にバッハが死去した時にはバッハの業績を最大限に称える追悼の言葉を送っています。
そんなテレマンの誕生日である今日は《4つのヴァイオリンのための協奏曲 ト長調》をご紹介しようと思います。『協奏曲』と題されていますが、この協奏曲に登場するのはヴァイオリン4本のみで、通奏低音などの伴奏は登場しない特殊な編成となっています。因みにテレマンは、この種の作品を少なくとも4曲作曲しているといいます。
多作家だったテレマン(一説には約4000曲と言われていますが、これはバッハの約4倍にあたる数です!)は協奏曲というジャンルでもおびただしい数の作品を遺していて、そのほとんどが緩-急-緩-急の4楽章形式で書かれています。これは、バッハや、バッハがお手本としたヴィヴァルディと決定的に異なる点で、むしろヴィヴァルディより前の世代で、ヘンデルもお手本としたコレルリなどが多用した『教会ソナタ(ソナタ・ダ・キエザ)』形式に則っているのが大きな特徴です。
ヴァイオリン4本のみということで当然ながら低音楽器による伴奏は入らず、その役割はヴァイオリンの最も低い「G=ソ」の弦が果たすことになります。この手のバスの無い楽曲でヴァイオリン2本というものはよくあるのですが、ヴァイオリン4本だけでアンサンブルさせたのは、テレマン以前にはいなかったのではないかと思います。
楽譜を見てみると、どのパートもメロディラインやベースラインを担当するところがあり、第1ヴァイオリンだからずっと主役、それ以外はオマケという感じにはなっていません。つまり、4人の奏者の力量が同じくらいでないと上手くまとまらない作品でもあるのです。
そんなわけで、今日はテレマンの《4つのヴァイオリン"のみ"のための協奏曲 ト長調》をお聴きいただきたいと思います。自身も高い演奏技術を持ち合わせていたアイディアマンたるテレマンの、面目躍如といってもいい作品をお楽しみください。