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ドリーム・オブ・ユー

 土曜の朝、バスに乗ったらラジオから「次の曲は『ドリーム・オブ・ユー』です」というアナウンサーの声が聞こえた。「洋楽か」と思いながら、Dream of you と Your dream は意味がどう違うんだろうとぼんやり考えてみた。Dream of you の方は of が「~についての」という意味で、「あなたの出てくる夢」というようなことを表し、Your dream は「あなたが持っている夢」という意味なんだろうな、とどうでもいいような結論に達した。「なるほど」、と勝手に納得してラジオに耳を傾けると、始まったのは意外にも日本人の女性の歌だった。「えっ?」と思ってじっと聞いていると、「竹内まりやの声かなあ」という気がしてきた。「竹内まりやに『ドリーム・オブ・ユー』なんて曲があったっけ?知らないなあ・・」と思いながらさらに聞いていると、何だかあまり歌い方が洗練されていない。歌い慣れていないという感じがして、ちっとも竹内まりやらしくない。「違うのかな」、と思いながら最後まで聞いていたら、アナウンサーが「竹内まりやさんの『ドリーム・オブ・ユー』を聞いて頂きました。この曲は清涼飲料水のCMに使われていましたね」と話した。「やっぱり竹内まりやか。でも、いつの曲なんだろう・・」と彼女についてはちょっと詳しいつもりでいた私は軽いショックを受けた。「初期の頃の歌なのかな・・」とはっきりしない。そこでネットで検索してみた。
 この曲は、1978年にデビューした竹内まりや2枚目のシングルだった。この後に、『September』『不思議なピーチパイ』とヒット曲が続いた。彼女は1955年生まれだから(えっ、今50歳?あの竹内まりやが、信じられない・・)当時24歳。声は若々しいがいささか抑揚に欠け、歌い方もまだまだしっとり感がない。下手だと言ってしまえば言えなくもない。山下達郎と結婚したのが1982年だからなのかどうか分からないが、作詞は竜真知子、作曲は加藤和彦で、曲としてはなかなか軽快だ。歌詞の一部を載せてみる。

  瞳とじれば あなたが見える
  陽だまりの匂いと 優しいまなざし
  遭いにゆきたい 裸足のままで
  あなた両手広げて きっと迎えて

  Dream a little dream of you
  澄んだ目をしたあなたが好き
  It's a dream a little dream of you
  なんて不思議なハーモニー

  レモンライムの青い風
  伝えて愛の Dream of you

 思い返せば、私が本格的に竹内まりやを聞き出したのは、1987年のアルバム『Request』からだった。それまでは『不思議なピーチパイ』の印象が強すぎて、軽い、ノリのいい歌を歌う人だとばかり思っていた。それが『駅』のようなバラードもしっかりと歌えることを知ってからは彼女のファンになった。『元気を出して』『シングルアゲイン』『告白』など、その後の楽曲は全て私の favorite songs である。1992年のアルバム『Quiet Life』は本当に何度も繰り返し聞いた。車で聞くCDは、サザンか竹内まりやかSMAPという時代が長く続き、私の子供たちは彼らの曲と共に育ったと言っても過言ではない。
 2001年のアルバム『Bon Appetite!』は成熟した竹内まりやの魅力を余すところなく伝えてくれる。ポップな曲からバラードまで、彼女の幅広い才能には感嘆するばかりだ。2003年の『Longtime Favorite』はカバー曲を集めたアルバムだが、今も車のCDチェンジャーの中の1枚となっている。
 もし、好きな女性アーティストを1人あげろと言われたら、私はユーミンではなく、竹内まりやを選ぶだろう。時々山下達郎のFMラジオの番組に出演する彼女の話を聞いていると、アーティストとしてだけではなく、一人の女性としてすごく魅力的な人だということがよく分かる。しかし、彼女が50歳を過ぎたなんてとても思えない。
 年なんて関係ない。竹内まりやは永遠に竹内まりやなんだ。
 
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