毎日いろんなことで頭を悩ましながらも、明日のために頑張ろうと自分を励ましています。
疲れるけど、頑張ろう!
人間の証明
『人間の証明』を見た。松田優作主演の1977年の角川映画だ。松田優作ファンを自認している私だが、どういうわけだかこの映画だけは見たことがなかった。当時、あれだけTVCMが流れていた作品だから、松田優作が出ていることは当然知っていたが、何故だか一度も見たことがなかった。それが、先週の土曜日朝起きて朝刊をぼんやり眺めていたら、番組表の一番下に『人間の証明』という文字を見つけた。深夜1:30からの放送だったが、これこそ天からの贈り物とばかり、録画予約をした。と言っても、妻から譲り受けたDVD録画機を使って初めて録画しようとしたものだから、勝手が分からず、妻に教えを請いながら何とかセットした。しかしどうにも心配だったため、予備のために違うTVでビデオの予約をしておいた。
が、そんな心配はいらなかった。うまく予約できていたようで、最後まで見終えることができた。それにしても驚いたのは画質のよさだ。HDDに標準速度で録画したものを液晶TVで見たのだが、本当に「なんじゃこれ?」と松田優作の真似をしたくなるほど鮮明な画像だ。30年近く前の映画だから、元テープがかなり古くなっているはずなのにこれだけきれいに見えるなんて驚きだ。ホームシアターというものが存在するようだが、これだけAV機器が進歩すれば、文字通り家に劇場を作り出すことも可能だろうなと、初めて欲しいと思った。まあ、デジカメを買う勇気もない奴にそんな立派なものが買えるはずもないのだが・・・
映画の内容ははっきり言って大したことがなかった。森村誠一の原作がかなり分厚いのに、たった130分ほどで全てを描こうというのがどだい無理な話だ。登場人物に過去の結びつきをあまりに持たせすぎたため、そんな話はないだろうと突っ込みを入れたくなるようなストーリーで、ご都合主義といえなくもない。しかし、私にはそんなことはどうでもよかった。若い頃の松田優作を見られればそれで十分だ。若さのせいか、常に眉にしわを寄せた深刻ぶった表情ばかりで、見ている私はかなり肩がこったが、それも松田優作、いくらぎこちなさが目立ったと言っても、間違いなくかっこいい。当時、28歳。これから大スターへと成長し始めた彼はどう見たって素晴らしい。
松田優作もいいが、さらに素晴らしいのが共演者たちだ。三船敏郎、鶴田浩二、岡田茉莉子(この芸名は谷崎潤一郎が命名!)、ハナ肇、伴淳三郎、氾文雀・・・岡田茉莉子を除いて亡くなってしまった人ばかりだが、いずれも名役者ばかりだ。特に三船敏郎と鶴田浩二という日本映画の二大スターが、名を連ねる映画というのは素直にすごいと思う(からみは一度もなかったが)。話の進行そっちのけにして、「あっ、伴淳だ」とか、「えっ、竹下景子?」とか思わぬ人が登場するたびに声をあげてはしゃいでしまった。さすが総製作費が6億円を越えたというだけあって、出演者が豪華なのには感動した。
しかし、いくら出演者が豪華でも、アメリカロケがふんだんに敢行されたにしても、この映画の真の主役は西条八十の詩「帽子」だろう。劇中、松田優作が口ずさみ、岡田茉莉子も暗誦した詩だ。
母さん、僕のあの帽子、どうしたんでせうね?
ええ、夏、碓氷から霧積へゆくみちで、
谷底へ落としたあの麦わら帽子ですよ。
母さん、あれは好きな帽子でしたよ、
僕はあのときずいぶんくやしかった、
だけど、いきなり風が吹いてきたもんだから。
母さん、あのとき、向こうから若い薬売りが来ましたっけね、
紺の脚絆に手甲をした。
そして拾はうとして、ずいぶん骨折ってくれましたっけね。
けれど、とうとう駄目だった、
なにしろ深い谷で、それに草が
背たけぐらい伸びていたんですもの。
母さん、ほんとにあの帽子どうなったでせう?
そのとき傍らに咲いていた車百合の花は
もうとうに枯れちゃったでせうね、そして、
秋には、灰色の霧があの丘をこめ、
あの帽子の下で毎晩きりぎりすが啼いたかも知れませんよ。
母さん、そして、きっと今頃は、今夜あたりは、
あの谷間に、静かに雪がつもっているでせう、
昔、つやつや光った、あの伊太利麦の帽子と、
その裏に僕が書いた
Y.S という頭文字を
埋めるように、静かに、寂しく。
ジョー山中の歌うテーマソングが聞こえて来る・・・
Mama, Do you remember the old straw hat you gave to me
I lost the hat long ago,flew to the foggy canyon・・・
が、そんな心配はいらなかった。うまく予約できていたようで、最後まで見終えることができた。それにしても驚いたのは画質のよさだ。HDDに標準速度で録画したものを液晶TVで見たのだが、本当に「なんじゃこれ?」と松田優作の真似をしたくなるほど鮮明な画像だ。30年近く前の映画だから、元テープがかなり古くなっているはずなのにこれだけきれいに見えるなんて驚きだ。ホームシアターというものが存在するようだが、これだけAV機器が進歩すれば、文字通り家に劇場を作り出すことも可能だろうなと、初めて欲しいと思った。まあ、デジカメを買う勇気もない奴にそんな立派なものが買えるはずもないのだが・・・
映画の内容ははっきり言って大したことがなかった。森村誠一の原作がかなり分厚いのに、たった130分ほどで全てを描こうというのがどだい無理な話だ。登場人物に過去の結びつきをあまりに持たせすぎたため、そんな話はないだろうと突っ込みを入れたくなるようなストーリーで、ご都合主義といえなくもない。しかし、私にはそんなことはどうでもよかった。若い頃の松田優作を見られればそれで十分だ。若さのせいか、常に眉にしわを寄せた深刻ぶった表情ばかりで、見ている私はかなり肩がこったが、それも松田優作、いくらぎこちなさが目立ったと言っても、間違いなくかっこいい。当時、28歳。これから大スターへと成長し始めた彼はどう見たって素晴らしい。
松田優作もいいが、さらに素晴らしいのが共演者たちだ。三船敏郎、鶴田浩二、岡田茉莉子(この芸名は谷崎潤一郎が命名!)、ハナ肇、伴淳三郎、氾文雀・・・岡田茉莉子を除いて亡くなってしまった人ばかりだが、いずれも名役者ばかりだ。特に三船敏郎と鶴田浩二という日本映画の二大スターが、名を連ねる映画というのは素直にすごいと思う(からみは一度もなかったが)。話の進行そっちのけにして、「あっ、伴淳だ」とか、「えっ、竹下景子?」とか思わぬ人が登場するたびに声をあげてはしゃいでしまった。さすが総製作費が6億円を越えたというだけあって、出演者が豪華なのには感動した。
しかし、いくら出演者が豪華でも、アメリカロケがふんだんに敢行されたにしても、この映画の真の主役は西条八十の詩「帽子」だろう。劇中、松田優作が口ずさみ、岡田茉莉子も暗誦した詩だ。
母さん、僕のあの帽子、どうしたんでせうね?
ええ、夏、碓氷から霧積へゆくみちで、
谷底へ落としたあの麦わら帽子ですよ。
母さん、あれは好きな帽子でしたよ、
僕はあのときずいぶんくやしかった、
だけど、いきなり風が吹いてきたもんだから。
母さん、あのとき、向こうから若い薬売りが来ましたっけね、
紺の脚絆に手甲をした。
そして拾はうとして、ずいぶん骨折ってくれましたっけね。
けれど、とうとう駄目だった、
なにしろ深い谷で、それに草が
背たけぐらい伸びていたんですもの。
母さん、ほんとにあの帽子どうなったでせう?
そのとき傍らに咲いていた車百合の花は
もうとうに枯れちゃったでせうね、そして、
秋には、灰色の霧があの丘をこめ、
あの帽子の下で毎晩きりぎりすが啼いたかも知れませんよ。
母さん、そして、きっと今頃は、今夜あたりは、
あの谷間に、静かに雪がつもっているでせう、
昔、つやつや光った、あの伊太利麦の帽子と、
その裏に僕が書いた
Y.S という頭文字を
埋めるように、静かに、寂しく。
ジョー山中の歌うテーマソングが聞こえて来る・・・
Mama, Do you remember the old straw hat you gave to me
I lost the hat long ago,flew to the foggy canyon・・・
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