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春支度

 先週末の暖かさとうって変わって、今週月曜・火曜と冬が戻ってきたような寒さだ。二日続けて小雪が舞ったのには驚いた。さらにひとりの中学生が、その雪を「なごり雪」と称したのにはさらに驚いた。結構、言葉を知っているものだなと感心したが、ひょっとしたらイルカの歌を知っているのかなと思った。するとその瞬間、頭に歌詞が浮かんできて思わず口ずさんでしまった。

  汽車を待つ君の横で
  ぼくは時計を気にしてる
  季節はずれの雪が降ってる
  「東京で見る雪はこれが最後ね」と
  さみしそうに 君がつぶやく
  なごり雪も 降る時を知り
  ふざけすぎた 季節のあとで
  今 春が来て 君はきれいになった
  去年よりずっと きれいになった   伊勢正三 作詞

 高校入試も終った。私には束の間、時間に余裕ができる。新学期の準備も色々忙しいが、とりあえずこれでしばらく日曜が休みになる。正月2日から休みなく、ずっと毎日塾を続けてきたのが、やっと一息つける。だが、ちょっと考えれば、やらなけりゃいけないことが山積している。まず、もういくらなんでも積もるほど雪は降らないだろうから、スタッドレスタイヤの交換をしなければいけない。まず、それから始めることにした。
 でも、車4台、16本のタイヤを交換するのはなかなか大変だ。気合を込めなけりゃとてもやる気が出てこない。「よし!やるぞ!」と思いっきり叫んで、11時頃から作業を開始した。まず、午前中に2台完了する予定で始めたのだが、一番大きな15人乗りのマイクロバスのタイヤ交換に手間取る。ナットを外すのに使うレンチの穴の大きさが上手くあわない。いつもはこの車だけはスタンドで交換してもらうのだが、今回は全部自分でやろうと決めているから泣き言は言っていられない。スタンドに持っていけば、一本600円、一台2400円取られる。4台分で9600円節約しようと、私にしては殊勝な心がけで始めたことだから、頑張るしかない。横を通った父が削ってやると言って、工具でレンチの先を磨耗してくれたので、その後はスムースに進んだ。結局午前中は大きなバス1台しか完了できなかったが、これくらいの遅れは計算済みだ、仕方ない。
 昼食もそこそこに、作業を再開する。私は何かを始めるまでは、なかなかその気になれないが、一旦始めると半ばヤケの気持ちも手伝ってわき目も振らずやりだす。昨日もそういう状態になって、本格的に作業の手伝いをし始めてくれた父の力を借りて、流れ作業的に進んでいく。途中、また小雪がちらつき始めたが、さすがに「なごり雪」を口ずさむ余裕はなく、ただ黙々と作業を続けた。小一時間で2台完了した。私はちょっと、ふらふらになってきて「もう一台は明日にする」と父に告げたところ、「なら、俺が後の一台はやっておいてやるから、車を出しておいてくれ」と答えた。えっ、まさか「それならお願いしますね」とも言えないだろう・・と気持ちを奮い立たせて、やむなく残りの一台の作業に取り掛かった。やれば、どうってことなく短時間で無事タイヤ交換は完了したのだが、こうやって「作業を中途半端に残さない、できるときには全部やる」というのが、父のように長い間職人として働いてきた人たちの習性なんだなと改めて思った。私のように力仕事とは縁の遠い毎日を過ごしていると、少しくらい疲れたぐらいですぐに弱音を吐いてしまう。そこで、グッと踏ん張って最後までやり遂げれば、後々楽だし、予定も遅滞なく進んでいくものだと、父から教わったような気がした。いつまでたっても、父からは教えられることばかりだ。
 本当は、のばし放題になった髪の毛も切って一気に春支度を済ませたかったのだが、ゲンを担いで毎年入試が終るまでは切らないでいるものだから、合格発表のある22日まで待ってから切るべきだと考え直した。先週末の暖かさが続いていたら、暑苦しくなって切ってしまったかもしれないが、寒の戻りがあったためこのままにしておいた方が寒さしのぎになるだろうと、いささか身勝手な理由もなくはない。
 しかし、なれない作業は疲れる、本当に疲れた・・・
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