☆ 年末になるとこの1年間に身に着いた「モノ」を整理しようと決意するのだが、決意だけでいっこうに作業は進まず、また1年、また1年と先延ばしになっている。「モノ」は増える一方だ。このままひょんと死んでしまえば、残された家族は大変だろうと思うのだが、なかなか捨てられないでいる。
☆ 安倍公房さんの短篇集「笑う月」(新潮文庫)から「鞄」を読んだ。
☆ 半年も前に出した求人広告に応募してきた男。手には「赤ん坊の死体なら、無理すれば三つくらい押し込めそうな」大きな鞄をさげていた。
☆ 事情を聞いてみると、どうやらその鞄が彼の行き先、生き方を決めているようだ。傍目には随分制約的で窮屈に感じるのだが、彼自身はその苦が心地よいようだ。
☆ 男を雇うことにして下宿の世話もしてやった。彼が留守の間に鞄を持ってみたのだが・・・。
☆ 「鞄」が私を導いてくれるという体験。不自由なのに自由を感じる。制約の中でこそ自由を感じる。病になって初めて健康の意味を知るというようなものだろうか。
☆ ところで、そうじをしなければ。