じゅくせんのつぶやき

日々の生活の中で感じた事をつぶやきます。

井上ひさし「握手」

2018-12-15 21:29:15 | Weblog
☆ 井上ひさしさんの短編集「ナイン」(講談社文庫)から「握手」を読んだ。確か検定教科書にも採用された作品だ。

☆ 児童養護施設の園長を務めていたルロイ修道士。故郷に帰るのでかつての園児たち(今はすっかり成長している)と別れの挨拶に回っているという。

☆ かつて力強くて日々の作業でゴワゴワした修道士の手。今、作者が握手をした手はかつてのそれではなかった。柔らかな手だった。

☆ 作者はルロイ修道士の大病を患っているのに気づく。でも、それを語りはしない。「困難は分割せよ」、修道士は遺言のように語った。

☆ 二人は握手をして別れる。今は私の方が力強い。
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小川洋子「まぶた」

2018-12-15 02:50:35 | Weblog
☆ 小川洋子さんの短編集「まぶた」(新潮文庫)から表題作を読んだ。

☆ ふと出会った15歳の少女ともはや初老の男性。人目を忍んだ彼女たちの交際が始まる。プラトニックだけれど、セクシーだ。

☆ 男には何か過去がありそうだ。それに不運が重なりすぎる。貧血で転んで鼻血を出すは、少女を高級レストランに誘ったのにカードが使用停止になっていたり。待てども友人からの為替は届かず、それに最後は・・・。

☆ 不運を絵にかいたような男だが、きちっとした身なりやアブラで固めた髪型は変わらない。

☆ 少女はなぜこんな男に魅かれたのか。こんな男だから魅かれたのか。

☆ もしや男は異界の人で、13年前にプロポーズをして振られたという女性はハムスターにされたとか。そう考えるとちょっとサスペンスホラーにも読める。

☆ ともかく、何と言っても小川さんの繊細な文章が心地よい。
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梶井基次郎「檸檬」

2018-12-15 00:07:27 | Weblog
☆ 梶井基次郎の短篇集「檸檬」(新潮文庫)から表題作を読んだ。

☆ 夭折の作家だと知っているせいだろうか、作品に死の影、生き急ぐ焦りのようなものを感じた。

☆ 「えたいの知れない不吉な塊」におさえつけられ街を彷徨う主人公が出会った「檸檬」。鮮やかな色彩と透き通るような香りが漂ってくる。「檸檬」に出会って、主人公はある悪戯を思いつく。

☆ 枯葉のように沈んだ色合いの書籍と冴えわたる檸檬色。それはまるで画題の静物だ。

☆ 京都は戦災を免れたので町筋の様子は梶井の時代とあまり変わっていないのではなかろうか。河原町、寺町、新京極。北に南にと巡る梶井の姿が目に浮かぶ。
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