高村薫「地を這う虫」

☆　高村薫さんの短篇集「地を這う虫」（文春文庫）から表題作を読んだ。

☆　事情があって退職した元刑事。家族とも別居し、今は倉庫会社と製薬会社の警備で生計をたてている。刑事時代に比べれば退屈な日々。そんな中でも彼なりの工夫をして暮らしていた。

☆　あるとき、彼は空き巣事件に遭遇する。習性なのか、好奇心なのか、彼は事件に興味を持ってしまった。そうなると追求せずにはいられない。彼の視線に読者も引き込まれていく。

☆　図や映像を使えば簡単なことも文章で表現するのは難しい。状況をイメージさせるのは緻密な文章力の技だろう。

☆　彼の執念が実って、事件は解決へと向かう。

☆　解決してみれば意外と小ぶりな事件だったが、事件そのものよりも主人公の生きざまに焦点が当てられているようだった。「地を這う虫」というタイトルが示すように。