goo blog サービス終了のお知らせ 

絵話塾だより

Gallery Vieが主宰する絵話塾の授業等についてのお知らせです。在校生・卒業生・授業に興味のある方は要チェック!

2022年11月13日(土)文章たっぷりコース第4期初回の授業内容・高科正信先生

2022-11-13 19:20:06 | 文章たっぷりコース

文章たっぷりコース第4期が始まりました。

毎年少しずつ違う内容で授業を進めていくこのコース。今期は、

①先生が児童文学作家なので、その視点で子どもの本と絵本についての話を中心に

②『文章のみがき方』(辰濃和男 著・岩波新書)を教科書にして

③毎回異なる課題が出て、それぞれが書いたものを先生に提出してアドバイスを受ける

という感じで進めていくと説明がありました。

そして、見学の方も含め全員にどうして文章クラスに入ろうと思ったのかを聞いていきました。

それぞれがいろんな思いを胸にこの教室に来ていると知って、気持ちが引き締まる思いがしました。皆さんにとって充実した一年(実質8ヶ月)になりますように!

さてそれでは早速子どもの本についてのお話を。

今日のテーマは「子どもの本を開く」です。

最初は、1959年にアメリカで出版されたレオ・レオニの『あおくんときいろちゃん』の読み聞かせです。

出版された当時、可愛らしい絵が一枚もないこの本は「これは絵本ではない」と批判を受け、大人や親たちからは支持されなかったのですが、子どもたちの評判は上々だったそうです。

そのうち、20歳前後の若者に読まれ始めるようになります。

ベトナム戦争で傷ついた若者たちはこの絵本に癒され、こんな風に生きたいと思ったのでした。

SNSなどなかった時代に口コミで若者たちの間にどんどん広がり、「ぼくといっしょにみどりになろう」という言葉でプロポーズすることが流行するほどだったとか。

 

『あおくんときいろちゃん』が1967年に日本で出版された時、これを読んで感銘を受けたのが田島征三です。

彼はいてもたってもいられず、新聞広告の裏に日本画の絵の具と膠で絵を描き

『しばてん』という手作りの絵本を11冊作って、友だちに配りました。

その中の一冊が今江祥智の手に渡り、1971年の出版に至ったそうです。

荒々しい絵、暗い・重い内容のこの本を、子どもたちに与えることができるのかと

迷いながらある幼稚園で読み聞かせた時、ある女の子が小さい声で「太郎ちゃんがかわいそう。わたし太郎ちゃんと結婚する!」と言い出し、それからは「私も」「私も」の大合唱になったのだそうです。

最後に、一人の男の子が「太郎ちゃんを連れていくな〜!」と言いながら先生のところに来て、絵本の中で太郎を連れていく役人が乗った馬のお尻を拳で叩いたのだとか。

そこで先生は子どもたちに、田島さんにお手紙を書くように促して

子どもたちは、次に絵を描くときは馬の上に役人の姿を描いてほしいと訴えたのでした。(叩かれるべきは、馬ではなく役人なので)

この2冊の本を読んで、絵本ってすごいなーと思った若者・長谷川集平は、『はせがわくんきらいや』(1976年すばる書房・2003年復活ドットコム)を出します。

全編モノクロ、手書き文字、関西弁で書かれたこの本は絵本の概念を変え、空前の絵本ブームが到来します。

 

もう一冊。最近先生が購入した『1まいのがようし』(長坂真護 著・あかね書房)を読み聞かせてくださいました。

美術家の長坂真護が、電子機器のゴミ拾いをして生活しているガーナの子ども達を主人公に描いた本作は、一見寓話のようですが、作者は実際に彼らをモチーフに描いたアート作品を売ったお金を現地に還元しており、経済と夢と情熱について子どもにも分かるような作品になっています。(現代風「アリとキリギリス」かも?)

子どもの本は大人が読んでもおもしろいものですが、大人の本が「生きるとは?」「死とは?」と問いかける文学なのに対し、子どもの本は「人生とは〇〇」「幸福とは△△」と問いの答えが書いてあり、(どんな人でも)この世は生きるに値すると教えてくれるものなのです。

宮崎駿も、著書の中で「この世は生きるに値するところだと伝えるのが、自分のアニメーションである」と言っています。これは高科先生自身の作品のテーマも同じ。

幸せの有様はそれぞれであるけれど、本を開けば物語の世界に入っていけ、この世は生きるに値すると思わせてくれるものが、子どもの本ではないでしょうか。

後半は、今期の教科書『文章のみがき方』を皆で交代で音読していきました。

今回は「まえがき」と「Ⅰ. 基本的なことをいくつか」から

「1. 毎日、書く」「2. 書き抜く」を見ていきました。

アスリートが筋力をつけるためにトレーニングをするように、毎日書くのは文章力をアップするのに役に立ちます。

そして、良いと思う文章を書き抜いて、ノート等に写すのは、文章をみがくのに役に立ちます。

参考資料として、鶴見俊輔の『文章心得帖』(ちくま学芸文庫)から、紋切り型の言葉をつきくずす方法が書かれた箇所のコピーをいただきました。

 

それから、森下裕美の漫画『大阪ハムレット 第5巻』(双葉社)の内容を紹介していただきました。

この第5巻に入っている「サリバン先生」は、少年と文盲のお婆さんのお話ですが、

人はどうして文字を使って自分の感情や思いを他の人に伝えるのかということを、改めて考えさせられる話になっています。

ということで、今日の課題は「私の好きな風景」についての散文を書いてください。枚数は自由、タイトルも好きにつけてください。

内容は、今好きな・昔好きだった・たまたま見かけて好きだと思った…なんでもOKです。いくつか候補を考えて、その中から選ぶのも良いでしょう。

課題は、市販の原稿用紙に手書きするか、出力する場合も400字詰めの原稿用紙のマス目に文字が入るようにして、提出してください。

縦書き原稿用紙の書き方は、2行目の4マス目くらいから題名を、

4行目の下の方に作者名を書き、本文は6行目から、最初は1マス空けて書きます。

、。「」などの役ものは1マスに入れるなどの約束があります。

約束を守って、美しい原稿を仕上げてください。提出は次回11月26日です。

よろしくお願いします。

 

 


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

2022年8月6日(土)文章たっぷりコース16回め、第3期最終の授業内容・高科正信先生

2022-08-16 23:06:48 | 文章たっぷりコース

今期2021年度第3期の文章たっぷりコースは、この日が最終回でした。

高科先生がお住まいの塩屋には、今は廃屋になった元ショッピングセンターの「第二中野センター」があるそうです。

先生の著作の舞台にもなった場所なのですが、先日通りがかった時に

そこの地下に降りる階段と壁の裂け目のところにテッポウユリが咲いているのを見かけて

こんな土も水もないところでも花をつけて、植物が命に執着することがあるのかないのかは分かりませんが

(人間も)簡単に命を投げ出すことはない、ということを考えたそうです。

その後、先日TVで紹介されていた和歌山県橋本市の「きのくに子どもの村学園」に触れ

高橋源一郎が行った同校での課外授業をまとめた著書『5と3/4時間目の授業』(講談社文庫)

にも載っている、木村センさんが書いた遺書を紹介してくださいました。

これは、一昨年教科書にした高橋氏の『間違いだらけの文章教室』(朝日文庫)にも載っていて

円谷幸吉氏の遺書とか、きただいひろさんの「ゆうやけがうつくしい」と同様に

高科先生にとっては「書くことの原点」として心に留めておきたい作品だそうです。

 

人間は、人に何かを伝えたいと願う生き物です。それは自らの存在の証明になるからです。

大昔、文字のなかった時代には洞窟に絵を描いて伝えました。

『一年一組せんせいあのね』で、ひらがなを覚えたばかりの小学一年生の文章が心を打つのは、

“ 先生に伝えたいことがある ” という気持ちが溢れているからです。

また、日本語の特性として、主語を省略することが多いのですが

文章にするときは、主語と述語を意識して書くようにしましょう。

今日の授業は第3期の最終回とあって、先生の一言一言はいつにもまして重みがあります。

受講生の皆さんもずいぶん感銘を受けていたようです。

この日は他にも、世の中にはさまざまな経験や体験をしている人もいるけれど

そんな人でなく、どこにも行かない、誰にも会わない人というでも

本を読むことは一人でもできて、いろんな人やことに出会うことができる。

世の中は、知らないことでできている(動いている)けれど、本を読んで

知らないことを知れることは嬉しい、楽しいことであるともおっしゃっていました。

 

休憩の後、前回の課題・新聞に掲載された「女子大生の悩み相談に答える」が返却され、

相談内容についてディスカッションしました。

いろんな意見が飛び交った後、実際の紙面で政治学者の姜尚中が回答したものを読み、

そこから、フィリッパ・ピアスの『まぼろしの小さい犬』(猪熊葉子/訳・岩波少年文庫)と

ナネット・ニューマンの『ぼくのイヌ』(掛川恭子/訳・国土社)を読み聞かせてくれました。

  

今回の悩みの相談者と愛犬の関係と照らし合わせて、「子どもの本はすばらしい」というまとめになりました。

最後に、長田弘の散文詩集『人生の特別な一瞬』(晶文社)から「目をつぶって見る」と「ブラウニーの魔法」を

先生が音読してくださり、長田氏の美しく力強い言葉の世界に浸って授業を終えました。

先生が無人島に本を持って行きたいとおっしゃる長田弘を、知ることができてよかったとおっしゃる方もいて

和やかな雰囲気で第3期の文章たっぷりコースは終わりました。

高科先生、受講生の皆さん、ありがとうございました。これからもずっと「書くこと」を続けていってくださいね。

お疲れ様でした。

 

さて、8月28日(日)まで開催中の絵話塾2021年度修了作品展には、

文章たっぷりコース第3期で学ばれた皆さんの作品で編まれた文集「あむ第2号」を展示しており

どなたでも自由にお読みいただけるようになっています。(ご希望の方には一冊税込550円で受注生産いたします)

また、次の第4期は、11月12日(土)から始まります。

このコースにご興味がおありの方は、お気軽にお問い合わせください。

よろしくお願いいたします。

 


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

2022年7月23日(土)文章たっぷりコース・15回目の授業内容/高科正信先生

2022-07-27 22:29:06 | 文章たっぷりコース

高科正信先生による文章たっぷりコース第3期の授業もこの日を含めあと2回。たくさんのことを学んできました。

この日は「大暑」。土用の丑の日ということで、まずはうなぎのお話から。

続いての “よもやま話” は、高科先生の次の絵本のお話でした。

ずいぶん前に書き上げていた『プレゼントはひとつ』というお話が、絵をコマツシンヤさんに担当していただくことになり

福音館書店「こどものとも」2023年12月号(発売は11月)として出版されることが決定しました。

もうすぐ書店に配布される、福音館の2023年度の年間出版リーフレットのラインアップに載ることでしょう。

高科先生自身も、毎年このリーフレットを眺めて、面白そうな絵本が出る時に購入されるそうです。

ちなみに、今月発売しているのは『ひみつのえんそく きんいろのさばく』(文:くらさらら 絵:木内逹朗)で

素晴らしく魅力的な絵の、その絵本を紹介してくださいました。『プレゼントはひとつ』も楽しみですね!

その後、いつものテキスト(『日本語の<書き>方』(森山卓郎 著・岩波ジュニア新書)の

最後のところをみんなで見ていきました。(p213〜224)

4. 手紙文と形式
・手紙のフォーマット
・ 頭語と結語
・ 前文 —— 時候の挨拶と安否の挨拶
・ 主文
・ 結びの挨拶 —— 「本来ならもっと……」
・ 記書きなど
・ 電子メール
・ 媒体・文字の選び方
◎ 社会人としての伝え方

世の中にはうんざりするほどたくさん “手紙の書き方の本” が存在します。

この本(岩波ジュニア新書)は高校生向けなので、基本的な手紙の書き方が書かれていますが

要するに、できるだけ失礼のないようにしようと思うと、形式的なこと守った方が間違いが少ないということです。

たとえば初めてのところに書く場合は、できるだけていねいに書く方が良いので

フォーマット通りに書く必要はありませんが、知らないより知っておくほうが良いということです。

相手との関係性によっても書き方は変わりますが、いちばん大切なのは “ 伝えたいことを書きたい気持ち ” です。

誰かに何かを伝えるとき、電話が良いのか、Eメールなのか、手紙や葉書が良いのか、その場合縦書きか横書きか、

フォーマットはどうするのか、その都度ふさわしい方法を選んで、伝えるようにしましょう。

その後は、鹿島和夫編さんの『一年一組せんせいあのね』(理論社)から、

鹿島学級の子どもたちの詩を見ていきました。

一年生といえば、ひらがなを書くことさえおぼつかない年ごろですが、

毎日、先生に宛てた「あのねちょう」というものを書くことによって、いつのまにか表現教育がなされ

やまとなおみ ちゃんの「でんでんむし」という3行の短い詩のように

谷川俊太郎が読んで仰天したという素晴らしい作品を書けるようになったのです。

休憩の後は、前回の課題・長田弘の『読書からはじまる』(筑摩書房)から「子どもの本という本」の箇所を読んで

感想文を書いたことについて、みんなで話し合いました。

「子どもの本」というのは、子どもから読めて大人も読める本のことですが、内容は正反対です。

大人の文学は「人生とは?」「愛とは?」などの問いを発するものに対して

子どもの文学はさまざまな問いに対する答えを示してくれているものです。

「この世の中は、どんなに辛いことがあったとしても、生きるに値するのですよ」

という、「生」を肯定するお話になっています。

高科先生が子どもの本を読み始めたのは、大人になってからのことなので

子どもの頃、本が周りにあれば違う人生になっていたかも…とおっしゃいます。

評論家の川本三郎は、「絵本というのは、読者を今ここではない場所に連れて行ってくれるもの」だと言っています。

子どもの頃に読んだことがある本も、大人になって読むと、その人が重ねてきた年輪の中で

環境や読む力が変わっていて、全く違うもののように受け取れることがあり、だから面白いのです。

残念なことに、子どもの本の名作中の名作『指輪物語』を映画で見たことがあっても、

本は読んだことがないという人が大勢います。

とりわけ、子どもの権利や子どもに関わる仕事をしている人たちの中で

子どもの本を読んでいる人というは、そんなに多くはいないでしょう。

長田弘は「子どもの本という本」の中で、子どもの本に不可欠なのは

1. 古くて歳とったもの 2. 小さいもの 3. 大切なもの だと言います。

とりわけ「大切なもの」=「人や生き物を愛しいと思う力」であり、

子どもの本には、作家が苦労して辿り着いた真理がたくさん散りばめられているからおもしろい。

高科先生は、大人になったからこそ子どもの本を読んでほしいと思う、とおっしゃっていました。

この後、同じく長田弘の『なつかしい時間』(岩波新書)から「絵本を読もう」という箇所を見ていきました。

長田氏は、絵本をもっとも必要としているのは、大人ではないかと言っています。

自分たちが無くしてしまった「大切なもの」を見つけたければ、一冊の絵本を開くところから

やってみるのがいちばんかもしれない、とも。

文章たっぷりコース第3期ももうすぐ終わるという時になって、いま一度子どもの本(絵本)の重要さを

再確認することができました。

年を取って視力が落ち、小さな文字が読みにくくなっても、絵本ならたやすく読めることでしょう。

いくつになっても、絵本を読んで胸躍らせる生活を続けていきたいものですね。

 

高科先生が教えてくださる、文章たっぷりコース第3期は次回8月6日(土)で終わりますので

このコースに興味がある方は、この日が見学できる最後のチャンスです。

第4期は11月12日(土)から始まり、来年7月15日まで全16回のコースです。

ぜひよろしくお願いします。

 


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

2022年7月2日(土)文章たっぷりコース・14回目の授業内容/高科正信先生

2022-07-08 16:58:30 | 文章たっぷりコース
高科先生はつい最近、55cmのハマチを釣り上げたそうです。
が、喜んでばかりはいられないらしく、温暖化の影響で釣れる魚の種類も変わってきているのだとか。
通常は和歌山あたりで釣れるシイラを、先生の地元・塩屋の釣り仲間が見かけたそうです。
今年は梅雨明けが早いので、セミが鳴き始めるのも早くなるかも
セミといえば、羽化してからの寿命は一週間程度と言われていましたが、高校生が実際にフィールドワークを行なった結果
種類によっては同じ個体が1ヶ月近く生息していることを立証したとか。(2016年の夏休みに調査、2019年に発表)
若くても、経験がなくても、疑問に思ったことを自分で調べて、納得できる事実を発見するのはすごいことです。



さて、今回のテキスト(『日本語の<書き>方』(森山卓郎 著・岩波ジュニア新書))は
8章 心を伝える —— 手紙文 のところを見ていきました。(P197〜213)
1. 手紙での表現上の気配りということ
・意外によく使う「こととなりました」型表現
・ 「次第です」表現
・ 手紙で重要な可能表現 —— 自分のことを報告する場合や断る場合
・ お互いの手紙と「つきましては」
・ 婉曲な表現
2. お礼やお詫びの言葉
・ お礼の手紙の言葉
・ お詫びの表現
・ 言い訳の言い方としての「とはいえ」
3. 敬語に注意
・ 丁寧な言葉
・ 尊敬語と謙譲語
・ 人の表し方にも注意


普段生活していく中で、お礼やお詫びの手紙を書く機会は結構多いです。
ですから、今回見ていった箇所は非常に役に立つところです。
けれども、あまりにも「相手によく思われる/思わせる」ためのテクニックが具体的に書かれていたので
読みながら皆で笑ってしまいました。
相手に自分の気持ちを伝えるというのは、なかなか難しいことです。
相手との関係性によって言葉遣いも変わりますし、会話と手紙(文章)でも違います。
過不足なく、伝えたいことが伝わるように、自分の中で約束事を決めることも大切かもしれません。
参考として、高科先生のところに来た仕事の依頼文をみんなで読んで、ディスカッションを行いました。
受け取った側に見透かされてしまわないよう、誠意を込めて書くようにしましょう。

休憩の後は、灰谷健次郎の『せんせいけらいになれ』から
「ほねくん、きみはぼくの足があるとおもって のびてくれるんだね」の箇所を読んでいきました。
事故で足を切断した男の子が書いた詩をまとめているのですが、
大変な状況なのに、周囲は彼の本来持っている楽天性に救われるという内容でした。

その後、偕成社から1982〜84年の3年間だけ出版された
『児童文学アニュアル』から、1983年に掲載された高科先生の文章を見ていきました。
先生が小学校の教師をしておられた時に受け持っていた男の子のことを書いた
「ろくべえ穴」という文章です。




この本は、一年間に出版された子どもの本と、その年に起こった教育現場のできごとをまとめるべく
今江祥智や河合隼雄など、名だたる編集委員のもと編纂された豪華本です。



そして、高科先生が引用しておられた『ろくべえまってろよ』(灰谷健次郎・著/長新太・絵/文研出版)を読み聞かせてくださいました。



いぬのろくべえが落ちた穴は、実は灰谷健次郎さんが落ち込んだ教育現場における絶望で、
17年間勤務した教師を辞めた後で、世界を放浪した灰谷さんが、
各地で過酷な生を強いられて生きる人たちや、子どもたちの在り様を目にすることで
深くて暗い穴から救われた経験があるのだそうです。

こどもたちが協力して、愛犬を穴から救い出す可愛らしいお話の中に
そんな深い意味が潜んでいるなんて、どこかとぼけた長さんの絵を見るだけでは分かりませんが
高科先生を救ってくれる存在の少年が、『ろくべえまってろよ』を読んでいる写真を見ると
この絵本に救われた教育者が大勢いるのだろうなと、想像できる気がします。



それから前回の課題の返却があり、最後は今回の課題についてです。
今回は「大学をやめてでも老いた愛犬と一緒に過ごしたい」という20代女性の悩みに答えるというのものです。
書き方や文字数も自由で、優しく寄り添う答えでも、厳しく突き放す答えでもかまいません。
彼女の決意を強くするか、思い直させることができるか、さて!?
" 心に届くメッセージ " を書いてみてくださいね。

よろしくお願いいたします。















  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

2022年6月11日(土)文章たっぷりコース・13回目の授業内容/高科正信先生

2022-06-15 14:37:53 | 文章たっぷりコース
この日は、「はやぶさ2」が小惑星「リュウグウ」持ち帰った物質から、生命の起源に関わるアミノ酸が発見されたことから
「地球上の生命はどこから来たのか」について考えたというお話から始まりました。
生命の定義は、①外界と幕で仕切られている ②何かを取り入れて、何かを作って、出す(代謝を行う) ③自分の複製を作る
の3つの条件を満たすもの と言われているとか。
(ウイルスは遺伝子とそれを囲むタンパク質の殻しか持っておらず、単体で自己増殖ができないので「生命」ではありません)
恒星の周辺に十分な大気圧がある環境下で、惑星の表面に液体の水が存在できる範囲を「ハビタブルゾーン」といい
そこには地球外生命体や地球外知的生命体が存在する可能性があるのですが
それは “25mプールにバラバラにした腕時計のパーツをかき混ぜて、偶然完成するくらいの確率” なのだそうです。
…果たして宇宙人は存在するのでしょうか???



ということで、テキスト(『日本語の<書き>方』(森山卓郎 著・岩波ジュニア新書)) から
7章 ちょいとブンガクしてみる の続き P180〜195 を見ていきました。
3. 随筆
・「筆に従う」ということの難しさ
・ 随筆のネタになること?
・ 随筆のテクニック
4. 物語の構成
・ モノガタルということ
・ 場面と会話
・ 場面と心情
・ 視点
・ 物語の人物の関係
・ 課題解決型
・ 変化型など
・ 伏線など
・ 主題と題材


随筆(エッセイ)とは、テーマを決めて “自分が経験したり考えたことを自由な形式で書いたもの” で
文学の一ジャンルとして確立しています。
最近ではSNSで自分の身近なことを発信している人も多いですが、エッセイが上手な人は
一見関係ないようなことを書いて伏線を張り(ブリッジを掛けて)、伝えたいことにうまく結びつけます。
皆さんも、エッセイ書くときはテーマと構成に気を付けて、おもしろいものを書けるようにしてください。

小説や戯曲などの物語は、時間進行があって、出来事が場面と共に描き出される文章です。
・登場人物の会話場面を書くときは、誰が言っているかが分かるように気を付けます。
・心情を直接言葉にせず、場面の状況を描くことで分からせるという手法もありますが、わざとらしくならないよう気を付けましょう。
・文ごとに、誰の目から見て書くのかにも気を付けましょう。(子ども向けの場合は、混乱させないように視点は一つにします)
・登場人物の描写がステレオタイプにならないよう気を付けましょう。
・話の展開にはいくつかの典型的な型があります。これを外したりずらしたりするのも意外性があっておもしろい作品になります。
・後で出てくることに関連する事柄を前もって出しておくと、物語に雰囲気や深みが出ます。
・書き手が伝えたいこと・表したいことがあったとしても、解釈は読み手に委ねられていることがおもしろいところです。

日本人が好きな物語の型に「勧善懲悪」があります。(「遠山の金さん」「水戸黄門」など)
物語の流れはステレオタイプですが、受け手が安心できるというメリットがあります。
幼い子どもが同じ絵本を何度も読むのも、安心できるからです。
現代人は複雑になっているので、単純な人物造形はつまらないと感じることも多いです。
また、途中で結末が見透かされるような物語は、納得できても面白くありません。
物語を書くのはエッセイよりもハードルが高そうですが、書いてみなくては何も始まりません。
どうか皆さん、物語にもチャレンジしてみてください。



前回提出した課題は、「原田マハの『小説版 星守る犬』(双葉文庫)を読んだ感想を書く」でした。
返却された後で、どうだったかディスカッションしました。
良い印象・悪い印象、それぞれの人がいて、「作品は受け手が自由に解釈するもの」が立証された形になりました。
先生が気になったのは、犬が一人称の語りで発する言葉だろうかというところ。(妙に文学的な表現が出てくる)
文章の名手である原田マハだから陥ってしまったのではないかというのです。
これは、大人の小説を書いている作家が、子ども向きのお話を書くときにもよくあることだそうで
誰の視点で書いているかをふまえて、書くようにしましょう。



最後に、朝日新聞のコラム「神戸の、その向こう(平民金子)」と「多事争論(大阪編集局・河合真美江)」を見ていきました。
平民さんのは、以前読んだ回と同じように、息子さんとの日常と昔の記憶が交わる話、
河合さんのは、今の世界の状況をふまえ、ご自身も含め数人の本にまつわる話を書いている。
双方とも時空を超えたいくつかのエピソードが出会い、交差して、一つの文章にストンと収まっていて、参考になります。



今回の課題は、長田弘の『読書からはじまる』(ちくま文庫)の中から
子どもの本に関することが書かれた箇所を読んで、感想文を書いてくる、です。
枚数は自由です。次回7月2日までに仕上げてきてください。
よろしくお願いします。



  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする