今期2021年度第3期の文章たっぷりコースは、この日が最終回でした。
高科先生がお住まいの塩屋には、今は廃屋になった元ショッピングセンターの「第二中野センター」があるそうです。
先生の著作の舞台にもなった場所なのですが、先日通りがかった時に
そこの地下に降りる階段と壁の裂け目のところにテッポウユリが咲いているのを見かけて
こんな土も水もないところでも花をつけて、植物が命に執着することがあるのかないのかは分かりませんが
(人間も)簡単に命を投げ出すことはない、ということを考えたそうです。
その後、先日TVで紹介されていた和歌山県橋本市の「きのくに子どもの村学園」に触れ
高橋源一郎が行った同校での課外授業をまとめた著書『5と3/4時間目の授業』(講談社文庫)
にも載っている、木村センさんが書いた遺書を紹介してくださいました。
これは、一昨年教科書にした高橋氏の『間違いだらけの文章教室』(朝日文庫)にも載っていて
円谷幸吉氏の遺書とか、きただいひろさんの「ゆうやけがうつくしい」と同様に
高科先生にとっては「書くことの原点」として心に留めておきたい作品だそうです。
人間は、人に何かを伝えたいと願う生き物です。それは自らの存在の証明になるからです。
大昔、文字のなかった時代には洞窟に絵を描いて伝えました。
『一年一組せんせいあのね』で、ひらがなを覚えたばかりの小学一年生の文章が心を打つのは、
“ 先生に伝えたいことがある ” という気持ちが溢れているからです。
また、日本語の特性として、主語を省略することが多いのですが
文章にするときは、主語と述語を意識して書くようにしましょう。
今日の授業は第3期の最終回とあって、先生の一言一言はいつにもまして重みがあります。
受講生の皆さんもずいぶん感銘を受けていたようです。
この日は他にも、世の中にはさまざまな経験や体験をしている人もいるけれど
そんな人でなく、どこにも行かない、誰にも会わない人というでも
本を読むことは一人でもできて、いろんな人やことに出会うことができる。
世の中は、知らないことでできている(動いている)けれど、本を読んで
知らないことを知れることは嬉しい、楽しいことであるともおっしゃっていました。
休憩の後、前回の課題・新聞に掲載された「女子大生の悩み相談に答える」が返却され、
相談内容についてディスカッションしました。
いろんな意見が飛び交った後、実際の紙面で政治学者の姜尚中が回答したものを読み、
そこから、フィリッパ・ピアスの『まぼろしの小さい犬』(猪熊葉子/訳・岩波少年文庫)と
ナネット・ニューマンの『ぼくのイヌ』(掛川恭子/訳・国土社)を読み聞かせてくれました。
今回の悩みの相談者と愛犬の関係と照らし合わせて、「子どもの本はすばらしい」というまとめになりました。
最後に、長田弘の散文詩集『人生の特別な一瞬』(晶文社)から「目をつぶって見る」と「ブラウニーの魔法」を
先生が音読してくださり、長田氏の美しく力強い言葉の世界に浸って授業を終えました。
先生が無人島に本を持って行きたいとおっしゃる長田弘を、知ることができてよかったとおっしゃる方もいて
和やかな雰囲気で第3期の文章たっぷりコースは終わりました。
高科先生、受講生の皆さん、ありがとうございました。これからもずっと「書くこと」を続けていってくださいね。
お疲れ様でした。
さて、8月28日(日)まで開催中の絵話塾2021年度修了作品展には、
文章たっぷりコース第3期で学ばれた皆さんの作品で編まれた文集「あむ第2号」を展示しており
どなたでも自由にお読みいただけるようになっています。(ご希望の方には一冊税込550円で受注生産いたします)
また、次の第4期は、11月12日(土)から始まります。
このコースにご興味がおありの方は、お気軽にお問い合わせください。
よろしくお願いいたします。