絵話塾だより

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2020年6月19日(金)文章たっぷりコース16回目(最終回)の授業内容・高科正信先生

2020-06-23 17:30:41 | 文章たっぷりコース
11月から行ってきた文章たっぷりコースの授業も、今回で最終回となります。
少人数で先生を囲んで和気藹々と、まるでゼミのように行ってきたこのクラスですが
後半はコロナの影響で出席できない方も多く、不完全燃焼気味な幕切れになってしまいました。
第1期最後の授業はどうだったかというと…
高科先生が児童文学作家を志していた40年程前の話から始まりました。

当時は、今のようにたやすく情報を得ることができない時代でしたので
各地で開催される絵本作家さんたちの講演会などのイベントにできるだけ参加して
その方々が薦めてくれる本を読んだり映画を観たりして
自分の中に吸収・蓄積していったのだそうです。



その頃から好きだった評論家・川本三郎氏のエッセイ集『君のいない食卓』から
「あとがき」と「母のオムライス」「漬け物をこまかく刻む」を見ていきました。



前回出された課題「幸せな食卓」というテーマにもつながるのですが
食の話題になると会話が盛り上がる、食は思い出と共にある、というものです。
確かにこのテーマで何か書こうと思ったら、いろんな記憶が蘇りました。
川本さんは若くして亡くなった奥様との思い出を、
本作と『いまも、君を想う』『そして、人生はつづく』の3部作で綴っています。

その川本さんは、1982〜84年に偕成社から発行されていた『児童文学アニュアル』という
一年間の児童文学の動向を記録した本にも寄稿されていて、絵本の定義を
「読者である子どもを ここではないどこかへ 連れて行ってくれるもの」とされています。
絵やストーリーがどうこうというのではなく、本質的なものですね。



高科先生は、井上ひさしや灰谷健次郎の作品が好きだったので
まだご自分の書きたいものが定まってなかった時代は影響を受けて
彼らのように、辛いけれどどこかにユーモアがある話、
底にあるのはおもしろい、愉快なものを書きたいと思ったそうです。

井上ひさしの言葉
「むずかしいことをやさしく、やさしいことをふかく、
ふかいことをおもしろく、おもしろいことをまじめに、
まじめなことをゆかいに、そしてゆかいなことはあくまでゆかいに」
は、文章を書くうえでも心がけたい言葉です。



先人の道を辿りながら、自分にないものを取り入れるセンスを身に付ける。
そのために、いろんなジャンルの本を読んだり、映画を観るようにしましょう。
以前、文章を書く時は辞書を手元に置く、というのがありましたが
文章の内容がたとえフィクションだとしても、間違ったことは書けないので
自分が知らないことは調べないと書けません。
専門的なことだけでなく、一般常識(例えば常緑樹には落ち葉など存在しないこと)についても
書く前に確認するようにしましょう。



絵本では、絵と文章を違う人が書く(描く)場合がありますが
その場合は、相手の表現が正しいかどうかも確認が必要です。

そして、文章たっぷりコース第1期最後の話題は「幸福とは何か」について。
前回の課題のテーマは「幸せな時間」でしたが
幸福とは何かを決めるのはとても難しいことです。

『ゲド戦記』の翻訳者・清水真砂子さんの「幸福に驚く力」という一文から
「子どもたちは、つまらない日常の中でも喜びを見つける “幸福に驚く力” を持っている。
この力はある程度の年齢になると弱まって、やがて再び幸福に驚こうともするけれど、
それにはとてつもないエネルギーが必要になる」

トルストイは
「幸福な家庭はどれも似たものだが、不幸な家庭はそれぞれに不幸である」
と言うけれど、他人から見たら不幸なことでもその人にとっては幸せなこともあります。

高科先生は最後に
「それぞれに違う幸せの中味の一つ一つを書くことが子どもの文学。
書くということを幸福と結びつけたいと思うし、清水(真砂子)さんの言うように
機嫌の良さこそが子どもの文学の本流だと思う」とまとめられました。

そして、今期本当は取り上げたかった、哲学者・鶴見俊輔さんの
『思い出袋』をできれば読んでもらいたいとのことでした。



高科先生、第1期クラスの皆さんお疲れさまでした。

第2期は10月頃から、今度は月2回土曜日の夕方(17時〜19時30分)に行う予定です。
初心者向け文章教室という大まかな路線は変わりませんが、
参考文献や課題などは第1期とは異なるものになります。
ご興味がある方は、ぜひお問い合わせください。


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