絵話塾だより

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2020年6月5日(金)文章たっぷりコース15回目の授業内容・高科正信先生

2020-06-10 17:18:11 | 文章たっぷりコース
今回は県内の方が戻って来られたのと、見学者がいらっしゃったので、
久しぶりに教室が賑やかになりました。

先生は、最近ホトトギスが鳴くの耳にしたそうです。
コロナ禍で、人間の生活は変わっているけれど、
そんなこととは関係なく、自然の摂理は動いている。
人間なんか大したことない、と思うのだとか…



今日も辰濃和男さんの『文章のみがき方』の続きで、「肩の力を抜く」という箇所を学びました。
肩に力の入っていない文章の例として、本の中で武田百合子さんの『富士日記』『日日雑記』等を挙げています。
彼女の夫で作家の武田泰淳さんが、肩の力を抜いて書くことを妻にすすめたそうです。
何も書くことがなくても、その日にあったことや、おもしろかったこと、いやだったこと、
なんでもいいから、まず書く。そこから出発しよう、と言うのです。
最初から後世に残るいいものを目指すのではなく、
肩に力の入らない文章は、読む方も気楽な気分になれるのです。

宇野千代さんも、
①毎日、机の前に座る。
②なんでもいいから、書く。間違っても「巧いことを書いてやろう」
 「人の度肝を抜くようなことを書いてやろう」などと思ってはいけない。
③最小限の単純な言葉で、あなたの目に見えたこと、あなたの耳に聞こえたこと、
 あなたの心に浮かんだことを素直に、単純に、そのままを書く。
と言っていて、それは文章を書き始めようとする人に対する、
実に適切で実用的な忠告になっています。

机に座るのは儀式のようなもので、文章を書くスイッチを入れるために
ある人はコーヒーを飲んだり、ある人は万年筆を握ったりします。
皆さんはモードを切り替えるとき、どんなことをするのでしょうか?

次に、英文学者外村滋比古さんの『ことばのある暮し』から、
「テンとマル」について見ていきました。
文章を書いていくうちに、文法では 「。」 にすべきところを
文章の勢いを止めないように、あえて 「、」 にする場合もあるそうです。
その他、引用符の使い方の約束が日本語では曖昧で、
英語では、引用文が続いているときに段落が変わっても、
とじの引用符を使わず、新しい段落の頭に引用符を付けるそうですが
外村さんはそのようにしようとして、編集部と揉めたことがあるとか。
このように、表現するときに細部にこだわって
特別なルールで記述することがありますが、
一つの作品の中では統一しましょう。

例えば、会話文が長く続いているのに改行すると分かりにくいので
そんな時は段落を短くしたり、途中で地の文を入れるテクニックを使います。
絵本など、会話文だけの文章になりがちですが、
それだけだと情景描写がないので、地の文で補う方が読み手に親切です。



ということで、会話文がたくさん出てくる、高科先生(文)と荒井良二さん(絵)の絵本
『おおきなおおきなさかな』を、読み聞かせてくださいました。
※ この本は今月の「キンダーおはなしえほん」で再版になり、絵話塾でも販売しております。(¥400)



たくさんの登場人物がいろんな場面で主人公の ぼく と会話をしますが、
誰がしゃべっているかよく分かります。

どうしたら文章が書けるようになるかを考えると
人の書いた文章をたくさん読んで、体に染み通らせるようにして
それを糧にし、自分で書く時の参考にすることが大切だということでした。



次は、以前出ていた課題「ブランコの情景描写」の参考として
『くまの子ウーフ』シリーズの作家、神沢利子さんの
『同じうたをうたい続けて』と『いないいないばあや』から
ちょうどブランコを漕ぐ描写のあるところを読み聞かせてくださいました。

情景描写は、景色が映像として見えるように書くもので
読むと、人物の表情、仕草、声音なども想像できます。
人物と人物の関係性や、心の動きを表すのにも必要になります。
「桃太郎」や「はなさかじいさん」などの昔話には、
記述はありますが、情景描写はありません。
もし、桃太郎が鬼をどのようにして退治したか克明に描写して
血がどう飛び散ったかなど描写をすると、たいへんなことになります。



そして高科先生の『ツバメ日和』から、
二人の少年が別れを惜しむシーンを朗読してくださいました。

先生は、創作でもリアリティが大事だと思っているので
少年二人が抱き合った時に爪痕がつく場所を探して
ご自分の腕をあちこちぎゅっと掴んでみたそうです。

また、この作品では会話が関西弁ですので
文章にするのが難しかったそうです。

関西弁の作品もたくさんありますが
田辺聖子さんの『ブス愚痴録』
マイク・セイラーの文を今江祥智さんが翻訳した『ぼちぼちいこか』は秀逸とのこと。
ちなみに関西弁の絵本の先駆けは、
長谷川集平さんの『はせがわくんきらいや』だそうです。

また、TVドラマでメインキャストなのに関西弁を使ったのは
明石家さんまだった、というお話もされていました。

いよいよ次回で文章たっぷりコース第1期は最後の授業になります。
少人数で、途中まで楽しく進んでおりましたのに
コロナで皆さんが思うように授業に参加出来なくなり大変残念です。

最終回までにはもう少し落ち着いて、
皆さん無理せず参加できるようになって欲しいです。

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