この日はまず、1月29日の朝日新聞に掲載された、書家の石川九楊さんのインタビュー記事「日本語の乱れ コロナで加速?」を見ていきました。
石川さんは、「新型コロナウイルスの感染拡大によって日本語の乱れが加速し、それがあらわになりつつある」と言っておられます。
例えば「ウィズコロナ」や「GO TO トラベル」など、おかしな和製英語が使われるようになり、
今までは「証拠」や「事実」で事足りていたものをわざわざ「エビデンス」「ファクト」などと言い換えるようになっています。
現代社会では文字を手で書く機会が減っていますが、「愛」と点画を連ねて書くのと、アルファベットで「ai」と入力・変換して出てきた「愛」という文字を選択するのとではまったく違います。
スポーツとeスポーツが違うように、今の文学が従来のものとは異なる「e文学」になっているのではないか、と警鐘を鳴らします。
皆さん読んでいて思い当たる節があるようで、興味深い内容でした。
続いてテキスト『日本語の<書き>方』(森山卓郎 著・岩波ジュニア新書)は、
前回と同じ「第3章 『文』を組み立てる」の続きで、85〜100pまでいつものように順番に音読します。
4. 文を整える
・ ら抜き言葉
・ さ入れ言葉など
・ 呼応のずれ
・ 並列くずれ
・ 文をみがく
「ら抜き言葉」は「見られない」を「見れない」、「来られない」を「来れない」と表現することで
「行かせる」を「行かさせる」、「やらせる」を「やらさせる」と「さ」を入れて使うことは「さ入れ言葉」と呼ばれています。
どちらも今や認知されている使い方ですので、話すときには仕方がないかもしれませんが、書くときには十分気をつけましょう。
ちなみに高科先生が文章を書くときに気をつけているポイントは「、」「。」を打つ場所と、自分が嫌な言葉は使わないことだそうです。
「全然」の後は「ダメ」のような否定形になるはずなのに「大丈夫」と肯定するのも、書くときはしないようにしましょう。
「〜たり〜たり+する」や「〜とか〜とか+する」の言葉を並べる場合は、両方同じような扱いをするよう気をつけましょう。
その後「第4章 『段落』をまとめる」のところ
1. 段落とは何か
・ 段落とは
・ 段落の中の文の構成
・ 段落の大きさ
2. 段落どうしの関係と論理
・ 起承転結
を見ていきました。
段落とは、文をいくつか集めたまとまりです。一つの段落には一つの内容を表し、違う内容になるときは別の段落にします。
段落の最初は一字下げ、最後の文の後は改行することで、形の上での段落が形成されます。(形式段落)
読みやすさを考えて、高科先生は一つの段落を100字(5行)〜300字(15行)を目安にしている、とのことですが、正解はありません。
子ども向けだともう少し短い方がよかったり、漢字が多いと読みづらい場合もありますので、注意しましょう。
複雑な内容の場合は、複数の形式段落を使って表すこともあり、 その段落のまとまりは意味段落と呼ばれます。
段落の中での文の構成の典型的な例として
①主題掲示文(トピックセンテンス)=その段落で一番言いたいことをまとめる。
②主張支え文(サポーティングセンテンス)=具体例や理由などを入れることにより、①をより詳しく説明する。
複数入れることもあるので、段落の中で一番長い文章になり、これで段落が終わる場合もある。
③段落まとめ文(コンクルーディングセンテンス)=①②の流れをさらにわかりやすくするため、最後にまとめ文で締めくくる。
「以上のことから」「このように」のようなまとめ言葉で始まり、「〜のです」「〜わけです」という言葉で終わることが多い。
また、①〜③を積み上げて関連づけ、段落の大きさを調整することで、よりわかりやすい文章にすることができます。
各段落で自分が言いたいことを整理して書いていくことで、よりわかりやすい文章になります。
段落ごとに小見出しをつけるのもよいでしょう。
段落どうしの関係を表す言葉に「起承転結」があります。もとは漢詩から来た言葉で、古典的な構成です。
「起」で文章を始め、「承」でそれをひろげ、「転」で別の見方を導入して検討し、「結」で終わらせます。
始めと終わりはどんな文章にも必要ですが、「承」と「転」は必ずなければいけないというものでもありません。
歌舞伎では「序」「破」「急」という言葉が使われ、それぞれ「始まり」「中ほど」「終わり」という意味です。
一般的に文章はこの二つの構成がありますが、絶対に必要というわけではありません。
長新太の『ちへいせんのみえるところ』という絵本は、起・転・転・転・転・転…というふうに物語が進んでいきます。
「起承転結」や「序破急」を意識して文章を書くことは、良い場合と悪い場合がありますので、
文章を書くときに「順を追って書いたらどう?」くらいの感じにしておく方が良いでしょう。
テキストの後は、詩人の紹介です。この日は茨木のり子の『詩のこころを読む』(岩波ジュニア文庫)から
吉野弘の「I was born」と「小さなユリと」を見ていきました。
この本は茨木さんが好きな詩人たちの作品を集めて解説をしたもので、若い人たちに知ってもらいたい作品がたくさん集められています。
そして、前回の課題「冬のごちそう」を返却してもらう前に、参考書として川本三郎の『君のいない食卓』(新潮社)から
「熱燗と自分で作る小さな酒の肴」の箇所を紹介していただきました。
「ごちそう」とは高価なものである必要はなく、その時の感覚によって変わってきます。
何を、いつ、誰と、どんなふうに食べるのか。
「幸せな家族はどれもみな同じようにみえるが、不幸な家族にはそれぞれの不幸の形がある」(レフ・トルストイ『アンナ・カレーニナ』)
「不幸はさまざま、幸福もさまざま」(アーシュラ・K・ル・グイン『ゲド戦記』)
「世の中には両親が離婚したために不幸な子もいるし、離婚しなかったために不幸な子もいる」(エーリッヒ・ケストナー『ふたりのロッテ』)
映画『ベルリン天使の歌』では、人間に恋して死んでしまう(=寿命のある人間になる)天使が登場するなど
高科先生はさまざまな形の「幸せについて」について表現している作品を紹介してくれました。
生徒さんたちが提出した作品も、自分が考えるさまざまなごちそうについてのエッセイになっていたようです。
最後に、今回出された課題は「コラムを書く」です。
参考として朝日新聞の天声人語が2篇配られました。
今日の授業の最初にも出てきた日本語の乱れについてと、詩人の石垣りんさんの詩集『表札』の復刊に関するエピソードです。
これらを参考に、短い文章で寸評(主調のある文章)を書き、自分の言いたいことを伝えましょう。
天声人語と同じ形式(冒頭6行は14字詰め、残り35行は18字詰め)で書いてください。
最後の行は、なるべくきっちり終わるよう工夫してください。
テーマはとくにありませんが、途中で何かの引用があるとメリハリが出ます。
提出は19日(土)、8回目の授業の時です。よろしくお願いいたします。
石川さんは、「新型コロナウイルスの感染拡大によって日本語の乱れが加速し、それがあらわになりつつある」と言っておられます。
例えば「ウィズコロナ」や「GO TO トラベル」など、おかしな和製英語が使われるようになり、
今までは「証拠」や「事実」で事足りていたものをわざわざ「エビデンス」「ファクト」などと言い換えるようになっています。
現代社会では文字を手で書く機会が減っていますが、「愛」と点画を連ねて書くのと、アルファベットで「ai」と入力・変換して出てきた「愛」という文字を選択するのとではまったく違います。
スポーツとeスポーツが違うように、今の文学が従来のものとは異なる「e文学」になっているのではないか、と警鐘を鳴らします。
皆さん読んでいて思い当たる節があるようで、興味深い内容でした。
続いてテキスト『日本語の<書き>方』(森山卓郎 著・岩波ジュニア新書)は、
前回と同じ「第3章 『文』を組み立てる」の続きで、85〜100pまでいつものように順番に音読します。
4. 文を整える
・ ら抜き言葉
・ さ入れ言葉など
・ 呼応のずれ
・ 並列くずれ
・ 文をみがく
「ら抜き言葉」は「見られない」を「見れない」、「来られない」を「来れない」と表現することで
「行かせる」を「行かさせる」、「やらせる」を「やらさせる」と「さ」を入れて使うことは「さ入れ言葉」と呼ばれています。
どちらも今や認知されている使い方ですので、話すときには仕方がないかもしれませんが、書くときには十分気をつけましょう。
ちなみに高科先生が文章を書くときに気をつけているポイントは「、」「。」を打つ場所と、自分が嫌な言葉は使わないことだそうです。
「全然」の後は「ダメ」のような否定形になるはずなのに「大丈夫」と肯定するのも、書くときはしないようにしましょう。
「〜たり〜たり+する」や「〜とか〜とか+する」の言葉を並べる場合は、両方同じような扱いをするよう気をつけましょう。
その後「第4章 『段落』をまとめる」のところ
1. 段落とは何か
・ 段落とは
・ 段落の中の文の構成
・ 段落の大きさ
2. 段落どうしの関係と論理
・ 起承転結
を見ていきました。
段落とは、文をいくつか集めたまとまりです。一つの段落には一つの内容を表し、違う内容になるときは別の段落にします。
段落の最初は一字下げ、最後の文の後は改行することで、形の上での段落が形成されます。(形式段落)
読みやすさを考えて、高科先生は一つの段落を100字(5行)〜300字(15行)を目安にしている、とのことですが、正解はありません。
子ども向けだともう少し短い方がよかったり、漢字が多いと読みづらい場合もありますので、注意しましょう。
複雑な内容の場合は、複数の形式段落を使って表すこともあり、 その段落のまとまりは意味段落と呼ばれます。
段落の中での文の構成の典型的な例として
①主題掲示文(トピックセンテンス)=その段落で一番言いたいことをまとめる。
②主張支え文(サポーティングセンテンス)=具体例や理由などを入れることにより、①をより詳しく説明する。
複数入れることもあるので、段落の中で一番長い文章になり、これで段落が終わる場合もある。
③段落まとめ文(コンクルーディングセンテンス)=①②の流れをさらにわかりやすくするため、最後にまとめ文で締めくくる。
「以上のことから」「このように」のようなまとめ言葉で始まり、「〜のです」「〜わけです」という言葉で終わることが多い。
また、①〜③を積み上げて関連づけ、段落の大きさを調整することで、よりわかりやすい文章にすることができます。
各段落で自分が言いたいことを整理して書いていくことで、よりわかりやすい文章になります。
段落ごとに小見出しをつけるのもよいでしょう。
段落どうしの関係を表す言葉に「起承転結」があります。もとは漢詩から来た言葉で、古典的な構成です。
「起」で文章を始め、「承」でそれをひろげ、「転」で別の見方を導入して検討し、「結」で終わらせます。
始めと終わりはどんな文章にも必要ですが、「承」と「転」は必ずなければいけないというものでもありません。
歌舞伎では「序」「破」「急」という言葉が使われ、それぞれ「始まり」「中ほど」「終わり」という意味です。
一般的に文章はこの二つの構成がありますが、絶対に必要というわけではありません。
長新太の『ちへいせんのみえるところ』という絵本は、起・転・転・転・転・転…というふうに物語が進んでいきます。
「起承転結」や「序破急」を意識して文章を書くことは、良い場合と悪い場合がありますので、
文章を書くときに「順を追って書いたらどう?」くらいの感じにしておく方が良いでしょう。
テキストの後は、詩人の紹介です。この日は茨木のり子の『詩のこころを読む』(岩波ジュニア文庫)から
吉野弘の「I was born」と「小さなユリと」を見ていきました。
この本は茨木さんが好きな詩人たちの作品を集めて解説をしたもので、若い人たちに知ってもらいたい作品がたくさん集められています。
そして、前回の課題「冬のごちそう」を返却してもらう前に、参考書として川本三郎の『君のいない食卓』(新潮社)から
「熱燗と自分で作る小さな酒の肴」の箇所を紹介していただきました。
「ごちそう」とは高価なものである必要はなく、その時の感覚によって変わってきます。
何を、いつ、誰と、どんなふうに食べるのか。
「幸せな家族はどれもみな同じようにみえるが、不幸な家族にはそれぞれの不幸の形がある」(レフ・トルストイ『アンナ・カレーニナ』)
「不幸はさまざま、幸福もさまざま」(アーシュラ・K・ル・グイン『ゲド戦記』)
「世の中には両親が離婚したために不幸な子もいるし、離婚しなかったために不幸な子もいる」(エーリッヒ・ケストナー『ふたりのロッテ』)
映画『ベルリン天使の歌』では、人間に恋して死んでしまう(=寿命のある人間になる)天使が登場するなど
高科先生はさまざまな形の「幸せについて」について表現している作品を紹介してくれました。
生徒さんたちが提出した作品も、自分が考えるさまざまなごちそうについてのエッセイになっていたようです。
最後に、今回出された課題は「コラムを書く」です。
参考として朝日新聞の天声人語が2篇配られました。
今日の授業の最初にも出てきた日本語の乱れについてと、詩人の石垣りんさんの詩集『表札』の復刊に関するエピソードです。
これらを参考に、短い文章で寸評(主調のある文章)を書き、自分の言いたいことを伝えましょう。
天声人語と同じ形式(冒頭6行は14字詰め、残り35行は18字詰め)で書いてください。
最後の行は、なるべくきっちり終わるよう工夫してください。
テーマはとくにありませんが、途中で何かの引用があるとメリハリが出ます。
提出は19日(土)、8回目の授業の時です。よろしくお願いいたします。