絵話塾だより

Gallery Vieが主宰する絵話塾の授業等についてのお知らせです。在校生・卒業生・授業に興味のある方は要チェック!

2023年4月15日(土)文章たっぷりコース第4期・10回目の授業内容/高科正信先生

2023-04-23 15:11:39 | 文章たっぷりコース

今年に入ってから、著名人の訃報が続いているという話題から、人間は自分との距離が近ければ近いほど、その人の死を深く悼む傾向があるという話になりました。
先生が、それはなぜかと考えていたら、人の心にある安全弁が自分に近い人であるほど外れてしまい、悲しみの度合いが深くなるのだろうと思い当たったそうです。それは時間とともに修復されていくのですが、またある時ふと悲しみがぶり返すこともあったりします。

先生の近しい人の中では、鹿島和夫さんが亡くなったそうです。
鹿島さんは、高科先生がまだ小学校教師をしておられた頃からの知り合いで、鹿島さんが編纂された子どもの作文集『一年一組せんせいあのね』(理論社)は、日本の作文教育の先駆けとなりました。


鹿島和夫『一年一組せんせいあのね』(理論社)
https://www.rironsha.com/book/20548 ※こちらで紹介しているのは新版の方です

ということで、この日のテーマは「子どもと大人」でした。
まず、子どもの大人の違いを皆で挙げていきます。

違いはいろいろありますが、その境目はどこにあるでのしょう?

ロブ・ライナー監督の映画「スタンドバイミー」では、それぞれが問題を抱えた12歳の少年4人が、夏休みに一泊二日の冒険に出るお話です。
休みが明けると、皆別の学校に進んでバラバラになってしまう彼らの、二度とない子ども時代の最後のひと時が描かれています。
先生の少年時代にも、一緒に遊んでいた子が遊びに参加しなくなったり、半ズボンから長ズボンに変わることで、彼らが大人になったことを知る経験があったそうです。

その、子どもと大人の境目について書いてある長田弘の詩集『深呼吸の必要』(晶文社)から、散文詩「あのときかもしれない」の1と9の箇所を見ていきました。

長田弘『深呼吸の必要』晶文社
https://www.shobunsha.co.jp/?p=6120

その後、4月24日は世界アースデーということで、『沈黙の春』(新潮社)を書いたレイチェル・カースンの『センスオブワンダー』(新潮社)も紹介していだきました。

 

レイチェル・カースン「沈黙の春」(新潮社)
https://www.shinchosha.co.jp/book/207401/

レイチェル・カースン「センスオブワンダー」(新潮社)
https://www.shinchosha.co.jp/book/207402/

この本では、世界中の子どもたちに生まれつき備わっているセンスオブワンダー(神秘さや不思議さに目を見張る感性)は、大人になるにつれなくなってしまう、と書かれています。

以前紹介していただいた河合隼雄の『子どもの宇宙』(岩波書店)でも、子どもが生まれつき体の中に持っている「宇宙」は大人になるにつれ失われてしまう、と書かれています。

河合隼雄「子どもの宇宙」(岩波書店)
https://www.iwanami.co.jp/book/b267809.html

しかし、子どもと大人の違いを明確にする必要はないのかもしれません。
子どもに関わる仕事をする人や、親である人は、境界線上を行きつ戻りつすることが大事なのではないでしょうか。
先生は、子どもと大人の領域が重なる部分で表現できることを考えてきておられて、例えば長新太は「子どもの絵には勝てない」と言い、ピカソも「私はラファエロのように描こうとしてきたが、子どものように描くことを学ぶのに一生を費やした」と言っているそうです。

そして、片山健の『どんどんどんどん』(文研出版)を読み聞かせてくださいました。この絵本は本来の子どもが持つ特性を描いた作品です。

片山健「どんどん どんどん」文研出版
https://www.shinko-keirin.co.jp/bunken/book/9784580813632/

休憩を挟んで、後半は教科書『文章のみがき方』(辰濃和男 著/岩波新書)の「Ⅱ さあ、書こう」から「13. 抑える」と、「Ⅲ 推敲する」から「1. 書き直す」のところを交代で音読していきました。

13. 抑える では、書きすぎると自分は良くても読み手が物語の世界に入り込めなくなることがあるので、感情は作品の背後に隠すくらいの方が思いが伝わるということでした。「悲しい・寂しい」といったような形容詞は極力使わないようにしましょう。
プロであれアマチュアであれ、文章を書くときは読み手がいるということを頭に置いておきましょう。

Ⅲ 推敲する 1. 書き直す の中には、推敲する時に留意すべき点が23個も書いてありました。
ちなみに高科先生は書き直す時に、①、。が正しく用いられているか、②助詞の使い方は正しいか、③同じ言い回しが続いていないか、④改行がきちんと行われているか等に気をつけているそうです。この点を留意すると、5回くらいは書き直すことになるとか…全て手書きだと大変でしょうね。
大江健三郎は、ノーベル賞受賞後のインタビューで「僕の文学の原点は書き直しにある」と言っているそうです。
本の中に出てくる23個の留意点をクリアすれば、書き直しがうまくいくでしょう。

ある表現をする場合、この言葉を使う方が良いか、他にもっとうまい表現はないかと考えることが重要です。その時に役に立つのは辞書です。

最後に課題です。
前回の「私の得意料理」について、参考として川本三郎の『君のいない食卓』(新潮社)を配っていただきました。

川本三郎「君のいない食卓」新潮社
https://www.shinchosha.co.jp/ebook/E005021/

そして、皆で好きな言葉を1つづつ2回りで挙げていき、たくさん上がった中から3つの言葉を選びました。

今回の課題は「まっちゃん」「ふとん」「じゃり道」の3つの言葉を必ず使って、短いお話(創作)を作ってください、というものです。
出てくる順番も長さも自由です。提出は29日(土)、次の授業の時です。

よろしくお願いいたします。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする