絵話塾だより

Gallery Vieが主宰する絵話塾の授業等についてのお知らせです。在校生・卒業生・授業に興味のある方は要チェック!

2022年2月9日(水)絵本わくわくコース・高科正信先生の授業内容

2022-02-09 17:52:54 | 絵本わくわく塾
本日のテーマは「子どもと秘密・成長の証としての秘密」でした。

前回は「私とは誰か・家出という”私”探し」のテーマでお話しましたが、時間がなくて紹介出来ていなかった
『ピーターのいす』エズラ・ジャック・キーツ 1969年 (偕成社) を紹介していただきました。



ピーターのものだったゆりかごが、妹が産まれたことで自分のものでなくなる。
ピーターは「誰にもかまってもらえない」と思い、小さい頃に座っていた椅子を持って小さな家出をします。
でも自分がもう座れなくなったことを実感して「ぼくは大きくなった」と、お兄ちゃんになった自覚をする。
子どもにとって、自分自身のものが自分自身のものでなくなること(妹のものになること)は、悲しみ・やりきれない気持ちでいっぱいになる。
ピーターは、この悲しみを家出をするという行為で表しています。
子どもが家出をする(行って帰って来る行動)は、成長するのに大事なことなのです。
『ピーターのいす』は、子どもの自立を描いた素晴らしい絵本です。


では本題の「子どもと秘密」のお話に入ります。

秘密は私だけ(私たちだけ)が知っているもので、子どもが秘密をもつのは、子どもの成長にどんな役割があるのか?
今回の授業では、子どもの秘密がテーマになっている絵本を紹介していただきました。

『クローディアの秘密』 E.L カ二グズバーグ 作・絵 (岩波少年文庫) 1967年
平凡な暮らしに飽き飽きした11才のクローディアは弟を連れて、メトロポリタン美術館へ家出をします。
クローディアは大金持ちのおばさんと出会いお互いの秘密をもちます。



秘密が何なのか知られることはいやでも「秘密をもっている」ということを知られることは大切。
秘密は何なのかと関心をもたれるからです。
そして家出をすることで私自身(新しい自分)を発見でき、私が私であることを知るきっかけにもなるのです。

『手のひらのねこ』 舟崎靖子 文・ 小泉孝司 絵 (偕成社) 1983年
自分の心の中で猫を飼う女の子のお話。
女の子は小さい頃に飼えなかった猫を、心の中で飼い続けていた。
成長していく過程、いつも心の中には猫も一緒。誰も知らない自分だけの秘密。

『ぺろぺろ』 島野千鶴子 作・絵 (偕成社) 1985年
駄菓子屋さんでズルをしてくじを引いて、当たりが出たが嬉しくなかった……
人は誰も子どもの時に負った傷(秘密)をかかえて大人になっていきます。
この絵本は誰もが経験するであろう秘密を、切り絵と型染めで制作されています。

『おしゃべりなたまごやき』 寺村輝夫 文・ 長新太 絵 (福音館書店) 1972年
王さまの秘密を聞いためんどりが、たまごの中に秘密を入れるお話。
秘密が持つ深刻さを、パッと割って秘密が面白くなるナンセンス絵本。



子どもが秘密を持つことは、成長過程では重要なこと。
人が秘密を持つことを、子どもの文学ではこのように表現されているのですね。

前回の課題は「森の絵本」をテーマにして絵本のテキストを書いてくるでした。
マリー・ホール・エッツの『もりのなか』や『またもりへ』のような、森をテーマにした絵本はたくさんあります。

心理学者の河合隼雄さんは、森は母親の胎内であるとおっしゃっていたそうです。
制作者の意図を持って、どういうテーマで制作をしたのか、絵本には書かなくても、人に問われた時に答えれるほうがいいですね。

次回の課題は「うみの絵本」がテーマで絵本のテキストを書いてください。
4月6日(水)提出です。



絵話塾 第19期生
12月からいよいよ募集開始です。
2月のガイダンスにご参加の方でお申込みされますと「特典」がございます。
人数に限りがありますので、興味のある方は
ギャラリーVie絵話塾までお問い合わせください。
皆さん待っています!

●ガイダンスのお知らせ
2月11日(金・祝)……p.m2:00~ p.m5:00~
2月12日(土)  ......a.m11:00〜
2月13日(日)  ......p.m5:00~
2月19日(土)  ......p.m2:00~
2月20日(日)  ......a.m11:00〜
2月26日(土)  ......a.m11:00〜
2月27日(日)  ......a.m11:00〜

……………………………………………………………
〒650-0022
神戸市中央区元町通3-2-15セントラルビル元町5F
ギャラリーVie 絵話塾 村上政行
mail:kaiwajuku@galleryvie.jp
URL:https://www.galleryvie.jp/
tel.078-332-5808
fax.078-332-5807


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

2022年1月29日(土)文章たっぷりコース・6回目の授業内容/高科正信先生

2022-02-02 19:03:40 | 文章たっぷりコース
今回は、先生のお住まいの近くに空き地があり、そこは土地が肥沃で一年中違う花が咲くという話から始まりました。
秋の終わりに全部きれいに伐採されたのに、今はラッパズイセンとヒメオドリコソウが咲いていて、
季節が変わればアジサイやダリアも咲く。このように移り変わりながら、花を付けていきます。
全部伐採してしまうと、その下に生えている別の草が一斉に出番を迎えて、芽を出し、花を咲かせる。
出番が来るまで、土の中でじっと待っているのです。自然ってすごいですよね。
ウイルスは人類が登場するはるか昔から存在しているといいますから、コロナの流行も今出番が来ただけなのかも…



授業の前に、先生のお知り合いの作家さんの新刊を紹介してくださいました。
森忠明さんの『末弱記者(すえよわきしゃ)』(株式会社Tuulee)です。



弓道には「末強(すえづよ)」という言葉があり、矢が的に当たるまで強い勢いを失わないことを指すそうで、
書名の「末弱」はそれとは真逆な意味で使われています。
児童文学作家である森さんは、“冷めた子どもの目で見る” ような作品を書いておられるそうですが、
本書は『飛ぶ教室』(光村図書出版)や、その他の出版物に掲載された短編をまとめたものです。
高科先生は森さんの作品をほとんど読んでおり、大好きだとおっしゃっていました。

そして、テキスト『日本語の<書き>方』(森山卓郎 著・岩波ジュニア新書)に入ります。
今回は前回の「第3章 『文』を組み立てる」の続きで、72p〜84pまでいつものように順番に音読します。



2. 語の位置関係
・予想を裏切る文
・倒置法


ここでは、3回目の授業の時にも使用した瀬戸賢一の『日本語のレトリック: 文章表現の技法』 (岩波ジュニア新書)から、例文を見ていきました。



倒置法は文章の中にあることばの順番を変えると、表現の効果が出るというものです。
日本語は語順を変えても意味が通じる言葉ですが、普通の順番と変えるのはあくまでも効果を狙う場合ですので
たまに使うのはよいですが、基本的にがあまり使わない方がよいでしょう。

3. 表現の効果を考える
・助詞の選び方──「お池のまわりに」?「お池のまわりで」?
・「空を」?「空で」?
・文章を生き生きとさせる文末──瞬間的解像度を上げるには?
・時間を止める描写?──出来事の流れと状態表現
・文章を生き生きとさせる会話、そして伝聞




文章を書くとき、助詞はどれを使うか、必ず考えてから書きましょう。
基本的に主語には「、」を打ちませんが、強調する場合には打つこともあります。
また、強い印象を与えるときには、敢えて違和感のある使い方をするときもあります。
同じ文末が続くときはどれか一つ変えてみたり、リズムや躍動感、臨場感を出すようにしたり…
助詞の選び方一つで、よりよく情景が思い浮かぶようにもなりますので
文章を書くときは、立ち止まって考えるのも大切なことですね。

テキストを終え、今回紹介してくださる詩人は茨木のり子
詩集『おんなのことば』(童話屋)から、「女の子のマーチ」「わたしが一番きれいだったとき」「汲む─Y・Yに─」の3編を見ていきました。
2006年に79才で亡くなった彼女の作品は言葉に力があって、今でもたいへん人気があり
1999年に出版された『倚りかからず』(ちくま文庫)は、詩集としては異例の20万部を超すベストセラーだそうです。
エッセイ集『一本の茎の上に』(ちくま文庫)や、『詩のこころを読む』(岩波ジュニア新書)なども薦めてくださいました。



その後、前々回の課題「ふゆの絵本のテキストを書く」について、参考になる冬の絵本を読み聞かせてくださいました。



エズラ・ジャック・キーツ『ゆきのひ』、片山令子/文・片山健/絵『つめたいあさのおくりもの』、筒井頼子/文・片山健/絵『ながれぼしをひろいに』
の3冊です。



いずれも始まりがあって、主人公が登場し、副主人公や行きずりの登場人物を巻き込みながら物語は展開していきます。
真ん中辺り(とは限りませんが)にお話の分岐点があり、お終いに向かって進んでいく、という構成です。

前回提出してもらった作品は、どうやら皆さん苦手だったようですので、もう一回チャレンジしてみましょう!
ということで、今回のテーマは「もり(森)」です。森に関する、森を舞台にした創作絵本のテキストを書いてください。
森のイメージはどんな感じですか?
木が多い、自然がいっぱい、人ではないものたちが住んでいる、迷い込んだら出られない、明るいところではない…
皆さんいろんなイメージがあるようです。



マリー・ホール・エッツの『もりのなか』や、長田弘/文・荒井良二/絵のい『森の絵本』のように
森をテーマにした絵本はたくさんあります。

「創作=つくりばなし」は、こんなことがあったらおもしろいだろうと想像し、妄想することで、人間が生きていくうえで大切なことです。
とりわけ絵本は子どもから大人まで楽しめて、川本三郎によれば「ここではないどこかへ連れて行ってくれるもの」です。
内容はリアリズムでもファンタジーでも、どんな森でもお話の中に何が出てきても何が起こってもOKです。
難しい漢字は使わないようにすることだけ気をつけて、皆さん頑張ってください。

次回の授業は2月12日(土)です。よろしくお願いいたします。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする