人生ブンダバー

読書と音楽を中心に綴っていきます。
現在は、暇に飽かして、日々更新。

池田潔『自由と規律』(岩波新書)

2009-05-19 05:25:15 | 読書
[小田原少年少女合唱隊定期演奏会は、明日のブログで詳報します。乞うご期待!]

岩波新書の中にはいいものがある。いまだ版を重ねている本書もそのひとつであ
る。「イギリスの学校生活」という副題のとおり、著者がイギリスのパブリック・
スクールに学んだ経験を著したものである。


本書p76
  よく冷静と評せられて、その実イギリス人ほど感情の強い国民はいない。ディ
 ケンズやトロラップの小説のあるものには、彼等の強い喜び、彼等の強い怒り 
 が、火と燃える様相のままで描かれている。ただ、彼等は赤裸の感情を人に見ら
 れることを厭い、自己の感情のプライヴェシーを飽くまで固守する。これを固守
 すればこそ、当然、彼等の信条とする『他に与え且つ己に取る』精神に基づい 
 て、他人の感情のプライヴェシーをも尊重する。己の激動した感情を露出するこ
 とは、これによって他の感情の平静を掻き乱すことが多い。彼等の間に、感情の
 抑制を美徳としその誇張を不躾とする戒律の生れた所以である。

  1945年5月ドイツが降伏したとき、首相チャーチルが下院にこの重大ニュース
 を発表することになった。この時といいこの人といい、満場が如何なる期待をも
 って彼の登壇を迎えたかは想像に余る。
 「本日ドイツ政府は降伏を申し入れた。したがって対独戦争はこれをもって終了
 した。国王陛下万歳」。これだけである。最大級にも何にも形容詞は一つもな 
 い。しかも聴衆は袖で眼を擦りながら、怪しからぬことを聞かせるではないか、
 と口々に憤慨してみせたということである。


本書は学生時代に読んだものが、今読み返すとあらためて本書の味わいを楽しむこ
とができる。

なお、著者は三井財閥の大番頭池田成彬(最近、この人に関する本が出た。)の次
男である。最近よく本屋で見かける池田清氏とはまったくの別人。(字が違う。)






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2 コメント

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またまたこんなよい本が (ke)
2009-05-19 22:31:47
小生はこのところ何年か,新規採用職員の研修を担当しています。その中のオプショナルメニューに,読書のすすめというのをその日の研修の最後に話します。そこで何回も取り上げたのがこの本です。
Optional Menu=読書の勧め
今週の1冊:池田潔:自由と規律―イギリスの学校生活(岩波新書)735円(税込)
 イギリス社会の中心を担う人々が通うパブリックスクールでの教育の実態を著者の体験に基づきさまざまなエピソードを交えて紹介する。第1次大戦前後の話、本書の出版も1949年と半世紀以上も前のものだが、パブリックスクールという特別な環境の雲の上の話ではなく今の日本の社会を振り返って、学校教育とは、教師の役割とはを考えさせられる。旧字体でやや読みにくいが、腰を据えてじっくりと読んでみてはいかがでしょう。
残念なことに,今の若い世代にはすんなりと受け入れられないようです。
返信する
他には? (katsura1125)
2009-05-20 05:58:43
「新規採用職員」って学校の先生でしょうか?こういう本を読むと学校の先生になりたくなり
ましょう。(私も大昔は中学の先生志望でした。妹はずっと小学校の先生です。)

他のOptional Menuも教えて~。すぐ読みますから。
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