人生ブンダバー

読書と音楽を中心に綴っていきます。
現在は、暇に飽かして、日々更新。

川田順『住友回想記』(図書出版社)

2009-05-18 05:15:33 | 読書
[昨日は、小雨の中、4/24、25にご紹介した小田原少年少女合唱隊の定期演奏会を
聴いた。はたしてブンダバーであった。詳しくは近日中にレポートします。見てね
~。]
この本を入手したのはいつだったか。10年以上前、例によって、書店で立ち読みが
てら物色していて見つけたのではなかったか。

川田順Who? 川田順は、明治15(1882)年生まれ、東京帝国大学法学部を明治40
(1907)年に卒業。住友本社に入社し、昭和11(1936)年、総理事を前に54歳で退
職している。歌人として有名で、昭和38年には日本芸術院会員に選出された。

本書に収められたエッセイを読むと、川田順が、白洲次郎ではないが、プリンシプ
ルのある人だったことが分かる。なお、本書がまとめられたのは昭和26年である。

本書の一節、次の「私事は自由」を読んで、私は快哉(かいさい)を叫んだ。
 「会社の勤めさえ怠らなければ、あとは何をしようと各人の自由だ」と私はすで
 に一再ならず強調した。「公のことさえ立派にやっているならば、わたくしのこ
 となどは、他人からとやかく言われる筋合でない」という哲理を私は信奉して来
 たのである。
  宦官的な男のやり方を観察すると、「公のこと」には刃が立たないので、必ず
 「わたくしのこと」を取り上げて上司にいつけ口する。「彼は、たくさんの旅費
 をもらいながらけちな宿屋に泊りました」「彼は、労働争議の最中に、妻君と一
 緒に芝居見物をしました」「彼は、こうこうこういう婦人と交渉があること確実
 です」「彼は、副業で三千円儲けました」「彼は、あなたの禅を野狐禅だといい
 ました」「彼は、家に帰ると小説ばかり読んでいます」「彼は、ダンスをしま 
 す」「彼は、どこということなく、何となく、住友式の人間ではありません」等々。
  まことに馬鹿らしいことだが、こんないつけ口が時と場合によっては奏功し
 て、あったら有為の材の出世を妨げることにならぬとは限らない。ここにおいて
 か、宦官を封じ込めるために、私のごときが「私事は自由なり」と叫ばざるを得
 なくなる。私事にさえ介入させなければ、宦官や奥女中は手も足も出せない。
    (中略)
  これは一会社のことではない。国家社会においても同じことだ。日本人は、他
 人の私事に関心を持ち過ぎる悪癖の所有者だ。」



これに付け加えることは何もない。永田町ひとつをとっても、日本人社会はムラで
ある。すぐにあの人はどうしたこうしたとなる。福澤諭吉が子供のために書いた
「日々のおしえ」には、「人のうはさかたく無用」とある。





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