本書の著者スロニムスキー(1894-1995)は、「プロフィール」
によれば、サンクトペテルブルク生まれのロシア系アメリカ人。
1923年アメリカに移住後、ボストンを中心に、音楽学者、事典
編纂者、作曲家、指揮者、ピアニストとして活躍。
スロニムスキーいわく、
音楽批評家たちは、私生活ではたいていの人が温和なことこの上ない人物な
のに、なぜこれほど罵倒の言葉を用いることが多いのだろう?
(本書は)ベートーヴェン時代以降の作曲家を攻撃したアンソロジーである。
・・・・・・この『「酷評」事典』では、偏見に満ち、不当で、とげとげしく、先
見の明を著しく欠いた判断の数々を取り上げている。・・・・・・本書の心楽しき
目的は、音楽は発展し続けている芸術であると示すこと、そして、音楽界の
革新者に向けられた抗議は、どれも同じ心理的抵抗から生じたものであると
示すことである。この心理的抵抗とは、『なじみなきものに対する拒否反応』
とでも呼べるだろう。
たしかに、音楽上の「革新」とは something new と言い換えられ
るのかもしれない。
例えば・・・・・・ 本書より
〇ベルリオーズ《幻想交響曲》
最終楽章は、不協和音だらけのうんざりするような大混乱、長々
と続く意味不明のたわごとである。
〇ブラームス《交響曲第1番》
単なる過剰さ、執拗なまでの反復に次ぐ反復があるように見受け
られる。まるで、自分の考えをきっぱり述べることができない、
あるいは自分自身で満足のいくようにさえ整理できない人のよう
だ--形式、調性、リズムが次々に変わり、平凡さが露骨に表れ
ているところも一、二カ所ある。
〇ブルックナー
このように腐りかけた対位法による不協和音から発せられる、鼻
腔を刺すような腐臭の前には、恐れをなしてたじろいでしまう。
〇プッチーニ《ラ・ボエーム》
愚かしくたわいない出来事や対話が、(中略)楽器という絵の具
を用いてまだらに塗りたくられているが、たいした理由や効果は
なく、せいぜい騒々しい興奮と混乱を生み出す程度だ。
そもそも「酷評」するにもそれなりの知識が必要である(笑)。
初版発行は2021年4月10日。
最新の画像[もっと見る]
- 11/16 新日本フィル第659回定期 井上道義 22時間前
- 11/16 新日本フィル第659回定期 井上道義 22時間前
- 11/16 新日本フィル第659回定期 井上道義 22時間前
- 11/16 新日本フィル第659回定期 井上道義 22時間前
- 11/16 新日本フィル第659回定期 井上道義 22時間前
- 11/16 新日本フィル第659回定期 井上道義 22時間前
- 11/16 新日本フィル第659回定期 井上道義 22時間前
- 11/16 新日本フィル第659回定期 井上道義 22時間前
- 11/16 新日本フィル第659回定期 井上道義 22時間前
- 11/16 新日本フィル第659回定期 井上道義 22時間前
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます