今から10年以上前になるが、一時三島由紀夫に凝ったことがあった。
特別に思想に共鳴したわけではなく、興味を持ったという方が正確
かもしれない。
三島由紀夫の本(文庫)をかなり読み、いわゆる三島由紀夫本も読んだ。
本書はその一つである。著者奥野健男は大正15(1926)年7月25日
生まれ。平成9(1997)年11月26日、71歳で亡くなっている。奥野
氏は三島由紀夫の1歳(厳密にいえば1歳半)年少である。
奥野氏はむろん文芸評論家として知っていたが、本業は理系、科学者で
多摩美大の先生だと、ウィキペデアでいま知った。ビックリ!
この本が生まれた経緯については、本書「『三島由紀夫伝説』を書き
終えて(1992/11/25)」に詳しいが、単行本は平成5(1993)年2月に
新潮社から出版された。また文庫本は編集者森孝雅により、単行本の
約3分の2に圧縮されている。それでも文庫にして450ページを超える
分量になっている。
それにしても、小林秀雄をはじめ江藤淳、奥野健男など、名のある文芸
評論家というものは一種の天才だ。
昭和45(1970)年11月25日、三島事件があった日は、水曜日でワグネル
の練習日だった。場所は魚籃幼稚園だったかしらん。練習前に友人と三島
事件の衝撃について会話したことを覚えているが、定期演奏会を間近に
控えた練習は何事もなかったかのように行われた。
畑中先生の『荻窪ラプソディー』にも「三島哀悼」として、「その日」が、
大阪の毎日ホールでの独唱会と重なり、途中で歌えなくなってしまった
ことが生々しく書かれている。
(以前書いたと思うが)その年のワグネル定期演奏会における畑中先生
の曲は、偶然、清水脩の「鎮魂歌」だった。
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