人生ブンダバー

読書と音楽を中心に綴っていきます。
現在は、暇に飽かして、日々更新。

吉田秀和『世界のピアニスト』

2008-05-24 08:16:51 | 読書
4月19日に取り上げた吉田秀和『世界の指揮者』(ちくま文庫)。
それに続き同じ著書の『世界のピアニスト』がちくま文庫から復刊された。(5月
10日)--昨日、三省堂(*)で山積みになっているのを見つけ、買ってしまっ
た。
(*)三省堂本店。文庫が揃っている。隣は「書泉」(しょせん)という書店が
   ある。ショセンそんなものである(笑)。

音楽評論の難しさは、右脳で感じたことを左脳で表現することである。
(注)右脳、左脳の役割はまだ100%解明されているわけではないらしいが、ひと
   まずそれは置くとして。まずは右脳で感じることが第一歩である。

とくに生の演奏会評は、繰り返し読み返せる本と違い、音楽を録音できるわけで
もなく、一瞬一瞬で消えていってしまう音楽とその感想を文章にする点、大変難
しい。
吉田さんの音楽評論はそれが必要にして十分なこと、本当に感心してしまう。

この本では28人のピアニストが取り上げられているが、冒頭はグレン・グールド
である。この「グレン・グールド讃」(「絶賛」といっていい。)を読むだけでも
十分である。

新たな、文庫版解説は、青柳いづみこさん。
「私など『新即物主義』でさんざんしぼられてきた世代にはのーびたりちぢんだ
ーりの十九世紀的解釈が実に新鮮に感じられるのだが、吉田さんが音楽を聴きは
じめたころはまだ、ロマンティックな、『情緒の表現を重視する行き方』の名残
があった。その反動として『楽譜に忠実な弾き方』のほうがピチピチと新鮮に感
じられたのだろう。」(解説p567)
--卓見である。

吉田秀和さんは大正2(1913)年生まれでご健在。先年、奥様を亡くされた。
青柳いづみこさんは戦後の生まれ、私と同世代。仏文学者青柳瑞穂はいづみこさ
んのおじいさんである。


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