勝手に映画評

私の見た映画を、勝手に評論します。
基本的に、すべて自腹です。

クライマーズ・ハイ(2008年)

2008年07月05日 | 邦画
『半落ち』などの警察小説で有名な横山秀夫が原作。1985年8月12日のJAL123便墜落事故をベースに、事故現場となった地方新聞社の記者たちの1週間が熱く描かれています。

あのJAL123便墜落事故の事は、良く覚えています。夜中までテレビにかじりついて報道を見ていました。夏休みだったから良かったですが、翌日は完全に寝不足でした。坂本九さんや、阪神タイガースの球団社長など著名人が多数犠牲になったことも、事故の衝撃に輪を掛けましたね。あの年、阪神タイガースは発奮して、優勝しました。

ベースとなっている事故は実際の事故ですが、その舞台の新聞社は架空の地方新聞社です。しかし、実際に新聞記者であった原作者の経験が物語の中に生かされていることは想像に難くありません。その経験があるからこそ、事故による現場の混乱の臨場感と、新聞を作っていく上での困難さと、ワンマン社長・地方紙と言う事から覚える挫折感を上手く描くことが出来たのでしょう。

現在と22年前に時間が動いて進んでいきます。現在のシーンでの堤真一はそれなりの歳の設定のはずなんですが、それほどの歳である事を感じません。設定ミスなのか、どうなのか? もう少し何とかしたほうが、分かりやすかったかもしれません。

山崎務が、ワンマン&セクハラ社長を上手く演じています。この人は、こう言う役は上手いですね。でも、劇中のセリフにもありましたが、22年前に「セクハラ」と言う言葉は、日本に存在していましたっけ? 時代考証的に、ちょっとその辺りに疑問を感じました。

悠木と安西の絡みの描き方が、ほとんど無かった事が疑問。あの程度の描き方だったら、かえって混乱を与えてしまったのではないでしょうか? もっとも、悠木と安西の関係は、現在の悠木のシーンに関係してくるので、完全に無くすと言う訳にも行かないかもしれませんが、この辺りの背景は原作だときちんと描かれているので、時間の限られている映画の難しさなのかもしれません。

事故現場のシーンは、あの衝撃的な事故の模様・現場を多くの人がテレビ報道などで見ているので困難さが伴ったと思いますが、”JAL”の文字の入った翼など印象的な背景も入れてあり、上手く再現できていると思います。生存者救出の模様は、自衛隊ヘリに吊り上げられていくシーンの記憶が数多くの人にあると思いますが、それを髣髴させる描き方はされていますが、実際に要救護者は映像には入っていません。

人間模様が複雑に絡み合ったドラマなので、約二時間と言う時間では、完全には描ききれなかった感じがします。JAL123便墜落事故の事を描きたいのか、地方新聞社の悲哀を描きたいのか、主人公の家族模様を描きたかったのか、少し、消化不良です。いい話だと思うのに、その辺りが残念。

タイトル クライマーズ・ハイ
日本公開年 2008年
製作年/製作国 2008年/日本
監督・脚本 原田眞人
原作 横山秀夫
出演 堤真一(悠木和雅)、堺雅人(佐山達哉)、尾野真千子(玉置千鶴子)、高嶋政宏(安西耿一郎)、山崎務(白河頼三/社長)、皆川猿時(伊東康男/販売局長)、中村育二(粕谷隆明/編集局長)、蛍雪次朗(追村穣/編集局次長)、遠藤憲一(等々力庸平/社会部部長)、堀部圭亮(田沢善吉)、田口トモロヲ(岸円治)、滝藤賢一(神沢周作)、でんでん(亀嶋正雄)、マギー(吉井弁次郎)、野波麻帆(黒田美波)、小澤征悦(安西燐太郎)、西田尚美(安西小百合)

[2008/07/06]鑑賞・投稿