勝手に映画評

私の見た映画を、勝手に評論します。
基本的に、すべて自腹です。

THE LAST MESSAGE 海猿

2010年09月20日 | 邦画
2004年『海猿 ウミザル』で始まった、海猿シリーズ。連続TVドラマの『海猿 EVOLUTION』も含めて、4作目の今回で完結編です。青い海から始まる『海猿』のタイトルバックは健在です。って言うか、そうじゃないと海猿じゃないですよね。

映画第2作の『LIMIT OF LOVE 海猿』でも、日本映画にしては素晴らしいスペクタクルだと思いましたが、今回も、それに勝るとも劣らない規模のスペクタクルを描いています。今回は、3Dでも公開されていますが、それは、撮影後コンピュータ処理で3D化したもの。不自然な3Dだと気持ち悪くなりそうなので、今回は2Dで見ました。

冒頭に若干、大輔と吉岡のシーンはあるものの、映画が始まったら直ぐにレガリアの事故のシーンに入っていき、そこでグッと一気に物語に引き込まれます。レガリアの事故の原因などは、劇中で上手く語られるので、「?」と言う事はありません。とは言うものの、恐らく、悩みに悩んでカットしたのではないかと思うのですが、大輔と吉岡が離れ離れになってしまう理由は、結局不明。いつの間にか吉岡だけ巡視船に戻っていて、結局何があったのかが不明なまま。その事には、若干の不満が・・・。あと、演出上の作りなんですが、大輔の危機的状況の際に、他のみんなの無音のスローモーションカットが多用されていたのも、ちょっと鼻に付きました(苦笑)。

ついでに他のツッコミどころを記しておくと、1)大輔所属の10管本部は鹿児島が所在地です。事故当夜、環菜は鹿児島に居たと思うんですが、事故後の帰還地は7管本部のある北九州。大洋を連れて、深夜移動してきたんですよね? って言うか、夜、大洋は発熱していたはず・・・。 2)1)に関連して、環菜が大洋を連れていった病院では、香里奈が演じる松原エリカが看護師をしていますが、彼女はそもそも海上保安大学校のある呉で看護師をしていたはず。でもなんで、環菜のいる鹿児島に?

まぁ、そんな所を突っ込んでいても仕方ないので、その他のところを。今回物語は、事故現場(大輔)、家(環菜)、現場近く(吉岡)、対策本部(下川)と4ヶ所にわかれ進んでいきます。物語終盤の下川の言葉「俺達は繋がっているんだ。」と言うセリフも、そういう、離れ離れである事を意識してのセリフなんでしょうね。加藤雅也が演じる桜木も、最後に「この人達は繋がっているんだ。」みたいな事を言っていましたしね。

今回も、『LIMIT OF LOVE 海猿』と同様な大規模海難で、それも十分に見物なんですが、それ以上に見物なのは、成長した大輔じゃないんでしょうかね?『LIMIT OF LOVE 海猿』では、ただ単にガムシャラに頑張っていた大輔ですが、今回は、潜水士である事に意義を見出していない三浦翔平演じる服部の成長を促す、大人になった大輔の姿が見られます。って言うか、あんなヘタレに良く怒らないと感心しました(笑)。

でも実は、あれほどの事故で、取り残された大輔達がどうなるか判らないのに、あんまり物語の進行にドキドキしなかったんですよね。事前にメイキングを見ていたからですかねぇ。「あぁ、あれはメイキングで見た、あのセットだよなぁ。」なんて思ってしまいました。なので、映画本編を観に行く前に、メイキングを見るのはお勧めしません(苦笑)。

完結編ということで、これまでの海猿シリーズに出ていた登場人物たちも出演しています。1作目で大輔とライバルだった三島が特殊救難隊員として出ていましたし、テレビ&2作目でも出た特殊救難隊員山路も出ています。その他、出演ではないですが、エンドロールのバックに、映画1作目、テレビドラマ、映画2作目の名シーンが使われていました。そこには、映画1作目で事故死した工藤や、TVシリーズで海賊の襲撃を受けて殉職した池澤の姿もありました。映画2作目で、危機的状況の中、大輔が環菜に電話をしている名シーン(?)もありました。

いやぁ、それにしても、この手のシリーズ物って、後になるほどクオリティが下がりますが、この海猿はそういう事はありませんね。はっきり言って、少し泣きそうになってしまいました。最後の仙崎大輔。お勧めします。

タイトル THE LAST MESSAGE 海猿
日本公開年 2010年
製作年/製作国 2010年/日本
監督 羽住英一郎
出演 伊藤英明(仙崎大輔)、加藤あい(仙崎環菜)、佐藤隆太(吉岡哲也)、加藤雅也(桜木浩一郎)、吹石一恵(西沢夏)、三浦翔平(服部拓也)、濱田岳(木嶋久米夫)、香里奈(松原エリカ)、勝村政信(遠藤翔太)、鶴見辰吾(吉森久貴)、石黒賢(北尾勇)、時任三郎(下川)、海東健(三島優二)、平山祐介(山路拓海)

[2010/09/20]鑑賞・投稿

食べて、祈って、恋をして / Eat Pray Love

2010年09月19日 | 洋画(アメリカ系)
女性作家エリザベス・ギルバートの自伝的小説の映画化。一年にわたり、イタリア(食べる)、インド(祈る)、インドネシア(恋をする)の3カ国を放浪した物語。

女性ってよく“自分探し”に出かけますが、これは、その“自分探しの旅”の映画です。なので、はっきり言うと、映画そのものに特に話の盛り上がりがあったり、サスペンスがあったりするわけでも、淡々と日々が過ぎていきます。タイトル中に“祈って”とあったので、もう少し悟り的な啓示を得たのかと思いましたが、そうでもありませんでした。私が男性だからなのか、特に共感するところもありませんでしたね。

主人公の心の中を描いた(=自分探し?)ものだからなのか、モノローグが多いです。何か、本来であれば俳優が表情なり、言葉なり、周囲の環境なりで表現すべきことを、一気に説明言葉で片付けることができるので、モノローグは便利かもしれませんが、それならば、一流の俳優を使う意味が無いですよね? 今回も、その負のスパイラルに堕ちかけているような気がしました。

はっきり言うと、物語のテーマが浅薄なので、途中で眠くなりかけてしまいました。でも、イタリアとインドとインドネシアの観光案内映画だと思って、必至に寝ないでみましたが・・・。

結構ツッコミどころはありますが、一つだけ。インドネシアで、トゥティが折角「See you later,Alligator!」と言っているのを、「バイバイ」と訳すのは怠慢! 字幕は、戸田奈津子さんでしたが、手抜かないでよ。

女性は共感するのかもしれませんが、男性には不向きな作品だと思います。

タイトル 食べて、祈って、恋をして / 原題 Eat Pray Love
日本公開年 2010年
製作年/製作国 2010年/アメリカ
監督 ライアン・マーフィー
原作 エリザベス・ギルバート
出演 ジュリア・ロバーツ(エリザベス(リズ)・ギルバート)、ハビエル・バルデム(フェリペ)、リチャード・ジェンキンス(テキサス州のリチャード)、ジェームズ・フランコ(デイヴィッド・ピッコロ)、ビリー・クラダップ(スティーヴン)、ヴィオラ・デイヴィス(デリア・シラーズ)

[2010/09/19]鑑賞・投稿

悪人

2010年09月11日 | 邦画
2010年のモントリオール世界映画祭で、深津絵里が最優秀女優賞を授賞した作品。監督は、『フラガール』の李相日。また、美術監督を種田陽平、音楽は久石譲と錚々たるメンバーがスタッフに名を連ねています。

実は正直、見る行く予定は予定は無い作品でした。ですが、深津絵里がモントリオール国際映画祭で最優秀女優賞を授賞したということで、一転して見ることにしました。

観客の年齢層は高め。妻夫木聡が出ていると言っても、カッコ悪い妻夫木聡ですからねぇ。だから、若い観客が少ないのかと勝手に想像です。はっきり言って、パッと見た感じ妻夫木聡とは認識できなかったし。

元々、深津絵里は演技派なので、いい演技するのは当然という感じもします。今回も、自然な演技で、普通にどこにでもいそうなOLを演じていました。モントリオール世界映画祭最優秀女優賞授賞のポイントは、どこだったんでしょうね? でも、この作品の見所は、深津絵里だけではありません。やっぱり、樹木希林と柄本明と言う両ベテランの演技は必見。この二人がいることで、話がグッと引き締まります。深津絵里よりむしろ、その二人の方が凄いと思いました。

話的には、『さまよう刃』や『誰も守ってくれない』に見られるように、この所の日本映画に多い、犯罪を犯した犯人そのものというより、犯人を取り巻く人間模様や環境、犯行後の犯人家族・被害者家族を描いた作品です。『悪人』と言うタイトルですが、かなり、考えさせられるタイトルでもあります。たぶん、本当の悪人は誰?と言う意味なんでしょうね?

139分という、比較的長めの作品。途中、ちょっと冗長だと思いました。前後にあまり繋がりがなく「えっ? このシーン必要なの?」と思ってしまうシーンもありました。結果として、もう少し、絞った内容に出来たのではないかと思います。

祐一と光代の最後のシーンは、祐一が光代の事を思ってわざと・・・ですよね?

タイトル 悪人
日本公開年 2010年
製作年/製作国 2010年/日本
監督・脚本 李相日
原作・脚本 吉田修一
出演 妻夫木聡(清水祐一)、深津絵里(馬込光代)、岡田将生(増尾圭吾)、満島ひかり(石橋佳乃)、樹木希林(清水房江)、柄本明(石橋佳男)

[2010/09/11]鑑賞・投稿