勝手に映画評

私の見た映画を、勝手に評論します。
基本的に、すべて自腹です。

ステキな金縛り

2011年10月30日 | 邦画
ザ・マジックアワー』以来、3年ぶりの三谷作品。今回は、ドジで間抜けな?弁護士が活躍する法廷ドラマ。“三谷組”と言う言葉が有るのかどうか走りませんが(笑)、例によって、三谷映画の常連が多数出演。過去の作品からの、カメオ出演もあります。

深津絵里って、やっぱりスゴイんですねぇ。『悪人』でシリアスな演技を見せたかと思うと、この作品では一転、コミカルな役を演じています。あ、でも、『踊るシリーズ』もコミカルですね。でも、役の幅が広いのはすごいと思います。エミは、彼女でないとダメだったかも。

一方、アメリカABCの『フラッシュフォワード』でアメリカ進出を果たした竹内結子。こちらの主役級も女優さんですが、今回は、脇役です。って言うか、彼女のイメージとはちょっと違う役だったので、何処で出ているのかパッと見ただけでは、判りませんでした(苦笑)。あんなに濃い化粧をする必要があるのか(笑)。

その他、中井貴一とか、阿部寛とか、錚々たる一流俳優陣が出演している中で、お笑い界から出演のTKOの木下隆行が、意外に、イイ味を出しています。そうなんですよねぇ。お笑いの人って、演技させると、意外にイイ味をだすんですよねぇ。やっぱり、お笑いのネタをやっている=演じていると言うことなんでしょうか?

さて、何故かエンドロールにだけ、大泉洋が写っています。これは、Wikipediaによれば、大泉洋の番組で直接監督の三谷幸喜に出演の了承を得て、実際にちょっと出演したらしいのですが、映画がフジテレビ系であるのに、大泉洋の番組がテレビ朝日系であったことから問題化し、こういう形での“出演”となったらしいです。

三谷監督のやりたい事、出したい人が多すぎるのか、所々、冗長。もう少しシーンをカットすれば、もっと締まる作品になったと思います。でも、笑いあり、涙は・・・無かったと思いますが、中々楽しい作品です。

タイトル ステキな金縛り
日本公開年 2011年
製作年/製作国 2011年/日本
監督・脚本 三谷幸喜
出演 深津絵里(宝生エミ)、西田敏行(更科六兵衛)、阿部寛(速水悠)、中井貴一(小佐野徹)、小林隆(菅仁/裁判長)、KAN(矢部五郎)、竹内結子(矢部鈴子&日野風子・二役)、山本耕史(日野勉)、浅野忠信(木戸健一)、市村正親(阿倍つくつく)、木下隆行(工藤万亀夫)、小日向文世(段田譲治)、山本亘(日村たまる)、戸田恵子・浅野和之(猪瀬夫妻)、生瀬勝久(占部薫)、梶原善(伊勢谷)、佐藤浩市(村田大樹/『ザ・マジックアワー』からのカメオ出演)、深田恭子(前田くま)、篠原涼子(ヨーコ/『THE 有頂天ホテル』からのカメオ出演)、唐沢寿明(ドクター)、草剛(宝生輝夫/エミの父)、大泉洋(勝訴を持つ男/エンドロールのみ)

[2011/10/30]鑑賞・投稿

フェア・ゲーム / Fair Game

2011年10月29日 | 洋画(アメリカ系)
事実に基づく映画。9.11以降の、イラクの大量破壊兵器“疑惑”に纏わり、政府に依る情報操作が行われ、CIAのエージェントであったヴァレリー・プレイムの秘密が暴露・漏えいした事件を描いている。

『エネミー・オブ・アメリカ』と言う、政府に依る情報操作を描いた映画がありました。あちらの作品はフィクションですが、こちらは事実に基づいているということで、より一層、怖さを感じます。この話で、不幸中の幸いだったと言って良いと思いますが、プレイムの夫が、元外交官でコンサルタントという職業で、メディアの使い方を心得ていたということでしょうか。実際、プレイムの夫ジョーが、様々なところで講演を行い、政府を糾弾しているシーンがあります。まぁ、それでも、一時は負けそうになってしまいますけどね。でもこれが、普通のサラリーマンだったら、より一層窮地に追い込まれていたと思います。

アメリカが、何故、イラク侵攻に突き進んでいった理由については、様々なことが言われています。その辺りについては、敢えてここでは記しません。でも、少なくともそのイラク侵攻の裏に、自国民をも陥れるような事が行われていたのかということには、失望を感じえません。アメリカは、自由と正義を奉じる国だと思うんですけどね。まぁそれも、指導者(大統領)次第なのかな。

エンドロール直前に、プレイムが米国下院の監査政府改革委員会(かな?)で証言するシーンが出てきます。ここで映像は実際のC-SPANのものに切り替わり、本物のプレイムが証言をするシーンになります。ナオミ・ワッツがプレイムを演じていた理由が、何となく判りました。でも、あんな人が、大胆な秘密工作にも関わっていたというのは驚きでもあります。

一般に、事実を下にした映画の場合、最初か最後にその旨のクレジットが出るんですが、この映画では、そのクレジットは私には見つけられませんでした。まぁ、必ず出すというルールに成っているわけではないと思いますが、ちょっと不思議に感じました。

タイトル フェア・ゲーム / 原題 Fair Game
日本公開年 2011年
製作年/製作国 2010年/アメリカ
監督 ダグ・リーマン
出演 ナオミ・ワッツ(ヴァレリー・プレイム)、ショーン・ペン(ジョー・ウィルソン)、サム・シェパード - サム・プレイム)、デヴィッド・アンドリュース(ルイス・"スクーター"・リビー)、ブルック・スミス(ダイアナ)、ノア・エメリッヒ(ビル)、ブルース・マッギル(ジム・パビット)、マイケル・ケリー(ジャック)、アダム・ルフェーヴル(カール・ローヴ)

[2011/10/29]鑑賞・投稿

猿の惑星:創世記(ジェネシス) / RISE OF THE PLANET OF THE APES

2011年10月09日 | 洋画(アメリカ系)
これまで何度か映画化やTVドラマ化が成された『猿の惑星』シリーズ。なぜ猿が人類を駆逐して地球に君臨したのか?と言う、事の始まりを描いた作品。これまでの『猿の惑星』シリーズでも事の始まりを描いた作品はありましたが、この作品では設定を見なおして、より自然に(?)その始まりが描かれています。

先にあった事の始まりの作品は『猿の惑星・征服』と言う作品だったようですが、この作品もその過去作品に敬意を払ったのか、主人公たるチンパンジーの名前が同じ“シーザー”と言う設定になっています。ただ本作品では、その他の設定がより現実的な設定になっており、そう言う意味では、過去の作品よりも“怖い”ですね。

シーザーは、キングコングを演じたアンディ・サーキスが演じています。昔取った杵柄では無いですが、過去の経験を活かして、猿(チンパンジー)らしい自然な動きが見られます。演技的に特筆することは、そのあたりですかね。

この映画の見所は、何と言ってもそのストーリ。アルツハイマー治療薬の副作用と言う設定は、非常に現実味があって、且つ、世界中でアルツハイマー治療の研究が行われている訳ですから、本当に有りそうな気がしてしまい、中々怖いです。ただ、少し理解不能なのが、ALZ112やALZ113が“ウイルス”と訳されていたこと。字幕版で見たんですが、“VIRUS”に相当する言葉は聞こえなかった気がするんですが・・・?

ウィルの隣人がわざわざ何故職業を意味するセリフを話しているのかは、エンドロールへの伏線だったんですね。エンドロールが始まると席を立つ人が居ますが、その辺りのところを理解して居ないと、この話の怖さがわからないと思います。この辺りの設定は、SARSや新型インフルエンザの経験からのフィードバックなんでしょうね。

タイトル 猿の惑星:創世記(ジェネシス) / 原題 RISE OF THE PLANET OF THE APES
日本公開年 2011年
製作年/製作国 2011年/アメリカ
監督 ルパート・ワイアット
出演 ジェームズ・フランコ(ウィル・ロッドマン)、アンディ・サーキス(シーザー)、フリーダ・ピントー(キャロライン・アランハ)、ジョン・リスゴー(チャールズ・ロッドマン/ウィルの父)、ブライアン・コックス(ジョン・ランドン)、トム・フェルトン(ドッジ・ランドン)、デヴィッド・オイェロウォ(スティーヴン・ジェイコブス)、タイラー・ラビーン(ロバート・フランクリン)、ジェイミー・ハリス(ロドニー)、デヴィッド・ヒューレット(ハンシカー)

[2011/10/09]鑑賞・投稿

はやぶさ/HAYABUSA

2011年10月01日 | 邦画
2010年6月13日、7年間にも及ぶ飛行を終え、地球にイトカワのサンプルを持ち帰った「はやぶさ」プロジェクトを描いた映画。実写版はやぶさ映画は3作製作(競作)される予定ですが、その第一弾。本作品の制作に際しては、JAXAが全面協力。JAXA/ISAS相模原キャンパスでの撮影も敢行されました。

ドキュメンタリーでは無いものの、映画化に際して、モデルがいる登場人物については、監督が俳優陣に対して「完コピ(完全コピー)でお願いします」と言う指示を行ったと言われていますが、確かに良く似ていますねぇ。実際の川口淳一郎氏を講演で見たことがあるんですが、佐野史郎の川渕孝一(=川口淳一郎氏)なんか、非常によく似ていると思います。またそれ以外にも、はやぶさの2回目のイトカワへの着陸時に的場が見せた、ライブカメラへ振り返ってVサインを行うシーンも、実際に的川氏が行った際の映像を下にそのシーンが作られるなど、人物の見た目以外に、起きたエピソードなども実際のエピソードを忠実に再現しています。

リアルさ追求の精神は、セットやCGなどにも反映されています。管制室や第二運用室なども、実際のものを完コピしたセットを組み上げたそうですし、はやぶさ飛行の映像では、3つしかイオンエンジンしか同時点火していないなど、実際の飛行状態をちゃんと表現しています。もっとも、最期のイメージ映像では、4つのイオンエンジン全てに点火した状態になっていましたが、これは見た目を重視したということなのだと思います。

特に原作は無い様ですが、概ね、川口氏の講演と的川氏の著書などを下にしているように思えました。特に、イトカワ着陸後に通信途絶し、人気の無い第二運用室のポットに川渕がお湯を補給していたり、あるいは、イオンエンジンが故障して万事休すとなった後、故障していないイオン源と中和器を組み合わせて運用し始めた時、これまた川渕が中和神社にお札を貰いに行く件などは、川口氏の講演でもよく触れられているエピソードです。また、はやぶさ打上げに際して、地元漁協と漁業交渉(=飲み)に行くと言うのも、的川氏の著書で触れられているエピソードです。

人気の無い第二運用室のポットに川渕がお湯を補給するシーンですが、折角出てきたので少し触れておくと、実はこれは、はやぶさ運用チーム解散の危機を示す象徴的なシーンなんですよね。と言うのも、はやぶさが行方不明になる->作業が無くなる->運用室に人が集まらなくなる->ポットのお湯を使う人が減る->ポットのお湯が補給されない、と言う負のスパイラルに陥っている状況を示していて、プロジェクトマネジャーの川渕(=川口氏)自身がお湯を補給して、「まだまだ、はやぶさは終わっていない」と言うメッセージを発信していると言うシーンなんですよねぇ。川口氏の講演では、よく語られるエピソードなので、川口氏の講演を聞いたことがあると、「あ、これがあのシーンか」と直ぐ判るんですが、その背景知識が無いと、ただお湯を補給しているシーンにしか見えないですよねぇ。ちょっと残念。

また、中和神社の件ですが、これも実際に川口氏がお札を貰いに行っているところです。実は、読み方は「チュウジンジャ」で、「チュウジンジャ」じゃないんですよね。それと、川口氏がこの神社に行ったのは、中和器に悩んでいた時期だったので、“中和”と言う文字が含まれている神社を選んだと言う理由(=ダジャレ)なのですが、実はこの神社は道中安全の神だったという落ちも付いているんです。これも、そう言う背景知識があると、一層、楽しめるシーンなんですが・・・。

さて、登場人物やエピソード、セットなど、リアルに拘った作品ですが、主人公の水沢恵は架空の人物になっています。とは言え、彼女の設定は、複数の実在の人物をミックスして創り上げられた人物像なんですね。でもねぇ、あの水沢のキャラ設定には、理系の研究者に対しての若干の偏見を感じました。理系の研究者には、確かにオタクっぽい人は居ますが、多くは普通の人なんですけどね、研究者といえども。なんか事更オタクっぽいところを強調した水沢のキャラは、私はちょっといただけないと思いました。それと、ツッコミを一つ。最期に彼女は学位を取得しているわけですが、正確には“理学博士”ではなくて、“博士(理学)”と表記するのが正しいはずなんですがね。細かいところにこだわっていたので、ちょっと残念でした。

もう一つ残念な点は、生瀬勝久や蛭子能収など、一般人ではやぶさを見守っているという設定の人達のシーンが所々挿入されていましたが、映画のストーリーとの整合性がイマイチ取れていないかなと感じました。JAXAスタッフの話だけだと、世の中とのつながりを表現できないので作られたシーンだと言うその意図はわかったんですが、ストーリー全般とのまとまりを感じなかったのがちょっと残念でした。

逆に素晴らしいと思ったのが、はやぶさ君の声の設定。エンドロールを見ていると、はやぶさ君の声は、竹内結子ではなくて“水沢恵”となっていました。これは、水沢恵のキャラ設定の件とは逆に、粋ないい設定だと思いました。

撮影の際しては、実際のJAXAのスタッフも多数参加・出演しているそうです。って言うか、見た感じ、明らかに『本物』と言う人達が沢山居ました。ドラマは期待できませんが、はやぶさプロジェクトの概略を理解するには、良い作品だと思います。

タイトル はやぶさ/HAYABUSA
日本公開年 2011年
製作年/製作国 2011年/日本
監督 堤幸彦
出演 竹内結子(水沢恵)、西田敏行(的場泰弘【的川泰宣氏】)、嶋政宏(坂上健一【齋藤潤氏】)、佐野史郎(川渕幸一【川口淳一郎氏】)、山本耕一(田嶋学【矢野創氏】)、鶴見辰吾(喜多修【國中均氏】)、高野長英(萩原理【藤原顕氏】)、マギー(福本哲也【山田哲也氏】)、甲本雅裕(平山孝行【西山和孝氏】)、市川実和子(小田島加那子)、筧利夫(矢吹豊)
※【 】内は、モデルとなった人物

[2011/10/01]鑑賞・投稿