勝手に映画評

私の見た映画を、勝手に評論します。
基本的に、すべて自腹です。

アリスのままで / Still Alice

2015年06月27日 | 洋画(アメリカ系)
若干ネタバレあり。

高名な言語学者が若年性アルツハイマー病を発症し、徐々に記憶を失っていくさまを描いた作品。第87回アカデミー賞主演女優賞と第72回ゴールデングローブ賞主演女優賞をジュリアン・ムーアが受賞しています。

ジュリアン・ムーアのアカデミー賞とゴールデングローブ賞の主演女優賞には依存ありません。物語冒頭の颯爽としたアリス、終盤の徐々に子供になっていっているアリス、その“二人の”アリスを、ジュリアン・ムーアが非常に上手く演じ分けています。とりわけ、表情ですよね。颯爽としていた頃は自信に満ち溢れた表情ですが、終盤は、自信なさげで戸惑っているような表情を示しています。

それにしても、若年性アルツハイマー病は容赦無いですね。実際の病気を、この映画で、どのくらい正確に描写できているのか判りませんが、どんどん病気が進行していって、ちょっと前まで何とも無かったことが今は出来ないなんてなっている。アリスが「私が私で居る間に」と言う事を言っていますが・・・、本当にそんな感じで悲しいです。しかも、自分が自分でなくなると、最後の“セーフティーネット”として準備していた装備品も使えませんでしたからねぇ。

いい作品です。何で上映している映画館少ないんですかね?

タイトル アリスのままで / 原題 Still Alice
日本公開年 2015年
製作年/製作国 2014年/アメリカ
監督 リチャード・グラツァー、ウォッシュ・ウエストモアランド
原作 リサ・ジェノバ
出演 ジュリアン・ムーア(アリス・ハウランド)、アレック・ボールドウィン(ジョン・ハウランド/アリスの夫)、クリステン・スチュワート(リディア・ハウランド/アリスの次女)、ケイト・ボスワース(アナ・ハウランド=ジョーンズ/アリスの長女、既婚)、ハンター・パリッシュ(トム・ハウランド/アリスの長男)

グローリー 明日への行進 / SELMA

2015年06月21日 | 洋画(アメリカ系)
1965年、アメリカ合衆国アラバマ州セルマで起きた『血の日曜日事件』を描いた作品。

映画冒頭の爆発シーンは、1963年9月15日に起きたアラバマ州バーミングハムの16番街バプティスト教会爆破事件みたいですね。始まっていきなり爆発するんで、ちょっと驚きました。

原題が『SELMA』と言う事が示している通り、物語は基本的にアラバマ州のセルマを出ません。邦題が『グローリー 明日への行進』と言うことと、そもそも、多くの日本人はアメリカ公民権運動についての知識があまりないので、キング牧師の半生を描いた作品と誤解するかもしれませんね。もっとも、日本人に“セルマ“と言っても、何のことやら、もっとわからないかもしれませんが。

劇中、キング牧師に対する呼びかけが『Dr.King』と聞こえていたのと、エンドロールに“Dr. Martin Luther King, JR.”と書いてあったので、キング牧師が博士であった事を初めて知りました。神学の博士号を持っていたんですね。でも、博士号をもっていると、牧師と言う呼び方ではなく、博士と言う呼び掛けになるんですね。そっちが優先なんだ。

しかし驚くのは、この映画が描いたのは、リトルロック高校事件よりも、有名な『I Have a Dream』の演説よりも後の出来事であって、その時には既に公民権法も成立していたと言う事。公民権法の成立が、公民権運動のゴールでは無かったんですね。もっと歴史を知るべきですね。中々考えさせられました。

タイトル グローリー 明日への行進 / 原題 Selma
日本公開年 2015年
製作年/製作国 2014年/アメリカ
監督 エバ・デュバーネイ
出演 デビッド・オイェロウォ(マーティン・ルーサー・キング・Jr.)、カルメン・イジョゴ(コレッタ・スコット・キング)、トム・ウィルキンソン(リンドン・B・ジョンソン/アメリカ大統領)、キューバ・グッディング・Jr.(フレッド・グレイ/弁護士)、アレッサンドロ・ニボラ(ジョン・ドア)、ロレイン・トゥーサント(アメリア・ボイントン)、ティム・ロス(ジョージ・ウォレス/アラバマ州知事)、オプラ・ウィンフリー(アニー・リー・クーパー)、テッサ・トンプソン(ダイアン・ナッシュ)、ジョバンニ・リビシ(リー・ホワイト)、オマール・J・ドージー(ジェームズ・オレンジ)、キース・スタンフィールド(ジミー・リー・ジャクソン)、ヘンリー・G・サンダース(ケイガー・リー/ジミー・リー・ジャクソンの祖父)、アンドレ・ホランド(アンドリュー・ヤング)、ディラン・ベイカー(J.エドガー・フーバー/FBI長官)、コールマン・ドミンゴ(ラルフ・アバナシー)、ナイジェル・サッチ(マルコムX)

海街diary

2015年06月14日 | 邦画
『そして父になる』の是枝裕和監督の最新作。第68回カンヌ国際映画祭コンペティション部門正式出展作品。

綾瀬はるか・長澤まさみ・夏帆・広瀬すずと、これだけの美女が4姉妹を演じています。しかも、単に美女を揃えただけだとアイドル映画にもなりがちですが、そこは是枝裕和監督の腕が素晴らしく(原作も良いのだと思いますが、原作を読んだことはありません)、しっかりとした4姉妹それぞれの人となりと、生活を描いた作品になっています。

四人が四人とも演技に定評がある女優たち。皆さん、良い演技しています。ただ、時間の制約と物語のストーリー上仕方ないのかもしれませんが、三女の千佳を演じた夏帆がちょっと活きていなかったかなぁ。そこが残念。

すずは、中学生という設定で、サッカークラブに加わります。当然サッカーシーンがあるんですが、あれは、広瀬すず本人?画面にちょっと映っただけなので何とも言えませんが、それほど下手には見えませんでした。撮影技術が上手いということなんですかね?今回の撮影に際して、広瀬すずには台本を渡さず、都度都度セリフを口頭で伝えるという形式を取ったそうです。それが、すずの少し戸惑っているような、自然な感情を作り上げたんでしょうね。

綾瀬はるか・長澤まさみ・夏帆・広瀬すずの四姉妹も素晴らしいですが、脇を演じた風吹ジュン、そして、大竹しのぶもやっぱりいいです。きっちりと存在感を示し、且つ、作品内容も締めていました。ここふたり、やっぱり凄いな。

それに比べ(苦笑)、男性陣の影が薄い気がしました。まぁ、“お父さんが他所に女を作って出て行った”と言う話の背景もあるので、その影響なのかもしれませんが。演技自体は、皆さん定評のある方たちなので良い演技なんですけど、物語の構成に影響を与えるような重要なポジションでは無かったのかな。そんな男性陣の中で、前田旺志郎はいい味出していました。何か、青春って感じです(笑)。

一つ残念に感じたのは、映画という性質上仕方ないのかもしれませんが「えっ?その話、もっと掘らないの?」と思う所があり、話の深堀りが少し足りなく感じた所。でも今回は、四姉妹が一つになっていく世界観を描いたので、あれで良かったのかな。

タイトル 海街diary
日本公開年 2015年
製作年/製作国 2015年/日本
監督 是枝裕和
原作 吉田秋生
出演 綾瀬はるか(香田幸/長女)、長澤まさみ(香田佳乃/次女)、夏帆(香田千佳/三女)、広瀬すず(浅野すず)、加瀬亮(坂下美海/佳乃の勤務先の上司)、鈴木亮平(井上泰之/すずのサッカーチームコーチ)、池田貴史(浜田三蔵/千佳の勤務先の店長)、坂口健太郎(藤井朋章/佳乃の恋人)、前田旺志郎(尾崎風太/すずの同級生)、キムラ緑子(高野日出子/幸の勤務先の師長)、樹木希林(菊池史代/幸たちの大叔母)、リリー・フランキー(福田仙一/山猫亭店主)、風吹ジュン(二ノ宮さち子/海猫食堂店主)、堤真一(椎名和也/幸の勤務先の小児科医)、大竹しのぶ(佐々木都/幸たちの母)、浅野陽子(すずの義母)

靴職人と魔法のミシン / The Cobbler

2015年06月07日 | 洋画(アメリカ系)
四代続く老舗の靴修理職人の家に起きる奇跡。

ファンタジーですが、嫌味がありません。よく「透明人間になれたらどうする?」と言う質問(?)があったりしますが、この作品は、ある意味まさにその質問の具現化ですね。透明人間をテーマにした映画は数多ありますが、多くの場合SFとして描かれますが、これはその描き方をSFでは無くファンタジーにして、コミカルに描描いた作品だと思います。

この手の“他人になる”映画の場合、他人になっているが故に色々とトラブルに見舞われるのですが、この作品もその例に漏れません。って言うか、そういうことがないと、物語として成立しないとも言いますけどね。でも、そのトラブルの解決方法が・・・。あんまり具体的に書くとネタバレになってしますので控えますが、スパイ映画さながらの“掃除屋”なんですかね?まぁ、あれが無いと、あの先物語が進まないので、あれはアレで受け入れざるをえないのだと思いますが、ちょっと疑問。折角他人になれるんだから、違う解決方法はなかったのかと思います。

意外に良いと思ったのが、チンピラのレオンを演じるメソッド・マン。チンピラで居る時と、マックスがレオンになった時の表情が全く違います。顔の表情だけできちんと描き分けている所が凄いと思いました。

それにしても、アメリカでは、まだ靴修理職人と言う職業が有るんですね。日本でも、靴修理ショップはありますが、職人というよりもチェーン店。日本にも古き良き職人もまだ居るとは思いますが、少数派。そんな職人をテーマにしたのは素晴らしいと思いました。もしかしたら、アメリカでも職人は少数派なのかもしれませんが。

実際にはあり得ない設定の話ですが、何となく、ほんわかするいい感じの作品でした。

タイトル 靴職人と魔法のミシン / 原題 The Cobbler
日本公開年 2015年
製作年/製作国 2014年/アメリカ
監督 トーマス・マッカーシー
出演 アダム・サンドラー(マックス・シムキン)、スティーブ・ブシェーミ(ジミー/マックスの店の隣の床屋)、メロニー・ディアス(カーメン・ヘララ/市民活動家)、メソッド・マン(レオン・ラドロー/マックスに靴の修理を依頼するチンピラ)、エレン・バーキン(エレーン・グリーナウォルト)、ダン・スティーブンス(エミリアーノ)、リン・コーエン(サラ・シムキン/マックスの母)、ダスティン・ホフマン(アブラハム・シムキン/マックスの父)