伊豆沼のほとりの電線に、ヒッヒッと甲高い声をせわしなく上げながら、ヒタキ科ジョウビタキの♂君が止まっていた。鳴き声が「火焚く」ようだからヒタキの仲間だとか。
鳴き声よりか、お腹のオレンジが鮮やかで炎のようだ。
彼らは、中国北東部、バイカル湖などで繁殖し、冬鳥として日本の冬を雌雄それぞれ単独で過ごすのだそうだ。子はどうした、嫁はどうした、と疑問が湧くが、春先にどこかで合流し、また北国の生まれ故郷に戻るのだろうか。それとも、また新しいパートナーを冬の間に見つけ出すというのか・・・謎である。
とにもかくにも、長い旅の疲れは微塵も見せず、丸々と太って元気なのだ。どこにそのような「生のエネルギー」を蓄えているというのか。
つくづく、君たちはエライ。そんな君たちを愛する。
オオハクチョウさんたちも尊敬するが、彼らはいつも家族と一緒。
深田百名山 MY SONG 6 トムラウシ 7 十勝岳
【深田百名山を読んで】
いい山は、いい文章を誘う。深田先生のトムラウシの頁は山を愛する気持ちが素直でいい。
はじめの段落で、深田先生は、十勝岳方面からトムラウシの姿を眺めて、「あれに登らなければならぬ。私はそう決心した。」と記載し、いつかその願いが実現してトムラウシのすばらしさを体感し、その最後の段落では、天人峡に向けて山を下るとき、「何度私はトムラウシを振り返ったことだろう。」と締めくくっている。
それだけ、トムラウシは愛着の山だったのだろう。
いくたびも振り返りては立ち止まるトムラの峰の隠れたるまで
深田先生は、戦前よりスキーの山として十勝岳を訪れている。だが、十勝岳は火山、生きている山。「十勝岳は、その地底で何か気味悪くうごめいているようである。」と、幾度も噴火し、幾度もふもとのヒトビトに被害をもたらしていることに触れている。スキーに適した斜面も、開豁な見晴らしも、麓の豊富な湯も火山の恩恵なのだろうが、「生きた山」は、いつでも「気味悪くうごめく」気配に鋭敏となって登るべきだろう。
純白のヴェールと煙をたなびかせ十勝冬の日火と生きる山
【深田日本百名山登頂の思い出から】
(前略)
トムラウシは北海道の山で一番好きな山。五色ヶ原の広大なお花畑、氷河を思い起こさせる岩と雪、岩陰から時折姿を見せる愛らしいナキウサギのチッチの声、もう一度歩いてみたい筆頭のエリアである。
(中略)
トムラウシと近接した山域ながら、十勝岳は火山の山で、ゆったりとした円錐の美しい山容は火山性の岩と砂で構成されている。そのため降雪時期には雪崩の心配がありそうなところ。オイラが、北海道を離れて1~2年あと、旭川の山岳会の仲間だったTさんという女性が、会山行でスキー登山をしている最中、雪崩にあって命を落としたと、北海道の同僚が教えてくれた。送ってくれた遭難記事にTさんのさみしそうな顔写真がのっていた。旭川在住時は、なんどか一緒に登った人。無口だったが、山が好きでたまらないという風だった。
旭川から近いので、ふもとの白銀温泉や十勝岳温泉から十勝岳でなく、富良野岳、美瑛岳、オプタテシケと庭のようにあるいた。もう、1、2年旭川に住めていたら、オイラもTさんらとスキー登山に出掛けたことだろう。
トムラウシ
滑滝(なめたき)と氷河の跡をたどりしにチチと顔出すナキウサギかな
十勝岳
眠りたる 乙女に いくとせ雪のふりつもれるか とかちは真白し