青葉の森歩きの主目的はバードウォッチングなのだが、梅雨空の薄暗い鬱蒼とした落葉林ではなかなか姿をみせてくれない。今日も、キビタキくんの甲高い声に誘われて、まるで枯れ木のように小道に立ち止まって何分もじっとしていたのだが、あの宝石のような姿を現してくれなかった。
こう蒸し暑くなっては歩く人も激減したせいもあるかもしれないが、この季節なんどもクモの巣を払ったり、衣服や顔にクモの糸を絡ませたりしながら歩く。不快ではあるが、せっかく早起きして美しい罠をつくりあげたクモさんたちに「すみません・・」という気持ちにもなる。彼らのお腹の中にもうクモの糸の原料が残っていなかったら死活問題なのだろう。「小径やけものみちには張らない方がいいよ」とアドバイスしたくもなる。
開きだしたトリアシショウマの花の穂の先に若い草色のクモさんがクモの巣作りを始めている。そのすぐ近くの草むらには、数センチにも満たないカマキリの幼子が草の葉にじっとしている。アブラムシなどの極小昆虫を狙っているのだろうか、あのカサカサの卵からかえった数百匹の幼虫から、何度かの脱皮を繰り返して人生を全うするのはほんの数匹とのことであり、「ガンバレよ~」と声をかけたい。
近くに、翅をボロボロにしたヒメウラナミジャノメの♂だろうか、かれも葉っぱにじっとしている。クモの巣や天敵やオス同士との艱難辛苦をくぐりぬけて、そのようなボロボロの衣服となってしまったのだろうか。でも「やることやっていきのびたぜよ」とでもいいたいのだろうか、泰然自若としていている。この時季、チョウの♂♀ともボロ服をまとった者が目立つが、もうそんなに蜜を求めて飛び回る必要もないのだろう。あとは、ゆっくり天寿を全うしてほしい。
いつもの空き地には、生まれたてだろうか、しっかりした翅のチョウたちが蜜を求めて花に寄っている。まるで新調したようなキラキラのお洋服と見た。花の近くには、クモの巣の罠も多いので、引っかからないように祈りたいが、クモの巣を見てると意外とチョウたちはかかっていないようなので、なにかしらの罠抜けの特技を持っているのだろう。
もうそんな生きものたちを観察していると、バードウォッチングなどいいやという感覚にもなって、汗をぬぐいながら家路につく。
ヤブムラサキの花のあとに、同じシソ科の仲間のムラサキシキブの小さな花が咲いている。まるで、子供向けにデコレートされた洋菓子のような小さな花たち。秋には、宝石のようなムラサキの実をたくさんつけるのだろう。
オカトラノオやトリアシショウマの白い花たちが風に揺れている。そろそろ、ニイニイの声を聴きたい思っていたびだが、今日はあの高周波は耳に入らなかった。
三枚ともサクラソウ科オカトラノオ
ユキノシタ科トリアシショウマの花の始まり