猛暑日寸前の日盛りの午後、小1時間ばかり汗だくになりながら野草園を歩き、今開いている花など数種を撮影する。北緯38度に位置する「野草園」という涼しそうな名前の公園歩きであっても、今や「命に係わる」予感がするほど、日本の真夏は変わりつつある。
今日出会った花たちのなかでとても独創的な姿で、かつ美しいなと思ったのはキンポウゲ科に分類されるレンゲショウマ(蓮華升麻)だ。
ショウマの名を冠した草本は、山菜としてもおなじみのヤマブキショウマ(バラ科)、トリアシショウマ(ユキノシタ科)、サラシナショウマ(キンポウゲ科)などがあるが、これらの花は白い小さな花を穂状につけているのに対し、レンゲショウマや朝の連続テレビ小説「らんまん」で田邊教授事件で話題になったトガクシショウマ(メギ科)や四国や九州に分布するキレンゲショウマ(ユキノシタ科)は全く異なる形状の美しい花を咲かせる。
とくに今日出会ったレンゲショウマは、まさに蓮華のような花弁をうつむき加減に咲かせ、その花弁は純白の曇りガラスにやや灰を帯びた薄紫をまぜあわせたような色合いで、さらに、その中心にシベを包む丸い花びらがあって先のほうが薄紫のムラサキを濃くしていくのであって、まことに典雅で上品な配色だ。
下からこの花を見つめると、まるで天上から降りてきた小さなUFOのようだ。きっと、美しい天女たちが搭乗しているのだろう。
花を咲かせている茎は、緑の球をいくつもつけておりその球がやがてつぼみとなってこの美しい花を咲かせるようだ。
開花して何日ぐらいさいているのだろうか。やや円熟した花弁はシミのような紅斑をみせながらやがて萎れていくようでもある。
この花を真上から見てもまたユニークで美しい。美しいレンゲはやや薄緑のややかたいガク片状なもので支えられているようだが、花の裏側(真上)からでも虫たちに花の存在をしっかり知らせている。
レンゲショウマは本州中部の太平洋側に咲く日本固有種。田邊教授が恋した薄紫の花が美しいトガクシショウマは本州中部の日本海側に咲く日本固有種。レンゲショウマは、今日は野草園でだがいつかどこかで出会った記憶があるのに対し、トガクシショウマはいまだ出会いがないと思う。
図鑑を見ると「尾瀬」で撮影された写真が掲載されていた。レンゲショウマと違って花期は5月から6月と早い。ことしは行きそびれたが来年こそ6月の尾瀬を訪れてトガクシショウマの可憐な花を探し求めたいな。
【今日撮影した何枚かのレンゲショウマ】