初夏の山あいの湯治場では、周囲を二、三時間もブラブラすれば、夕餉の菜として十分すぎるほどの山の幸を手にできる。標高の高いせいもあって、6月はじめまで大好きなコシアブラやハリギリ、山ウドは多少の硬さはあっても、調理次第で十分楽しむことができる。
その調理だが、条件としては第一に酒の肴となること、第二に簡単に作れること、そして何と言っても美味いことである。
かく条件に見合う料理として、おひたし、山菜入りペペロンチーノ、山菜の味噌炒め、が今や定番となっている。ペペロンチーノはサラダパスタや早ゆでパスタを茹でたら、すこし茹で汁を残して、きざんだ鷹の爪、チューブ入りニンニク、バター、オリーブオイル、コシアブラなど山菜を入れて炒め煮にし、汁気がなくなる直前に火を止め、塩コショウで味を整えればできあがり。
味噌炒めは、味噌と砂糖でコシアブラや山ウドの皮や葉を炒めれば、それでよし。なんとも簡単に、初夏の山の息吹を体内に注入できる。
味噌、砂糖、オリーブオイル、バター、麺つゆ、マヨネーズ、塩、コショウ、唐辛子、こんなものだけを適量持参すれば、湯宿の夜は至福の時間で満たされる。もちろん、ビールは宿で仕入れるとして、「適量」のアルコールは忘れずに!だ。