先日のカシどんの話しの続きです。また、昭和39年5月16日付人吉新聞に掲載されたそのままで。
ある時、藤倉さんかたン、カシどんの銭借りいいかいたげなたい。そして「貞六さん、貞六さん、いさぎい、さしつけでぐざんすいども、銭よばちッとばかい貸ァてくだいさんか」て、座りこまいたげなたい。藤倉さんの、カシどんに銭貸ァても、決して戻しゃせんでともうて「おいぎゃあにゃ、銭ァなかがない」て、いいはると、カシどんな、藤倉さんの座っとんなはるすぐうしろのタンスよば指しゃァて、「はら、あの、上から三段目の左のこまかひき出しン中ァ、千三百六十五円八十せんはいッとんもすどうが、あん中から、十円札よば二枚でゆがんすで、どうぞ貸ァてくだんしな」て、拍手ばたたかいたげなたい、そしたげないばひき出しのカギやつが、自分で、パチンちうてはずれさみゃあに、ひといですうッとあかって、中から十円札の二枚、ひらひら、ひらひらして飛うで出て来たげなもん、そして、カシどんが右手ばあげて手まねきさると、カシどんのひざの上ェ飛うて来てとまったげなたい。これェにや、いかな藤倉さんもたまがんなはいつろうが、そん話よば聞いた村のへんしもびつくいしたげなちう話たい。
この話が『日本の民話22 肥後編』になると、日本中で読まれるためか、次のように標準弁に変えられて紹介されています。こうなると分かりやすく通じる言葉使いになっています。
平良のカシどんとうのが、ある日、貞六さんところにきて、「貞六さん、銭よば少しばかい貸して下はんもさんか」と相談をもちかけました。貞六さんはこまった顔つきで、「実ぁ銭ぁ無かがない」というと、カシどんは向こうのタンスを指さして、「ほら、あの、上から三段目の左のこまんかひきだしの中ン、千三百六十五円八十五銭はいっとんもすどうが、あのなかから十円札よば二枚でゆうぐざんもすで(よろしいですよ)」といいながら、パチパチと拍手を打ちました。すると、ひきだしのカギがパチンとはずれて、ひとりでにすーとあいて、中から十円札が二枚、ひらひら飛んできたということです。これには貞六さんもびっくりしましたが、このかしドンは信州戸隠山の飯綱大権現からでている幻術を、日向でおぼえてきたといっていたそうです。
とあります。違っているのは80銭が85銭になってはいます。藤倉さんと云う固有名詞がありますが、どうも実名なようですが「日本の民話」でははぐらされています。本当のはなしだと高田さんは書いていますが、本当にカシどんは幻術使いだったのでしょうか。あるいは高田さんの創作民話だったのでしょうか。木上の平良の人に聞いてみたいものです。
今日も昼間は暑くなりました。朝夕は秋らしくなっています。
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