渓流詩人の徒然日記

知恵の浅い僕らは僕らの所有でないところの時の中を迷う(パンセ) 渓流詩人の徒然日記 ~since May, 2003~

小説を読む 『戦争の犬たち』(フレデリック・フォーサイス)

2024年07月18日 | open



原作は素晴らしいのに映画化
したら駄作になってしまうこ
とがある。

『戦争の犬たち』もその一つ
なのではなかろうか。

クリストファー・ウォーケン
は独特な神経質な味を出して
いたけどね。

生き延びる傭兵とは、よく映
画で描かれるようなゴリラの
ような男では
なく、繊細で非
常に神経過敏で神経質だ。
だが、大胆でもある。


駄作とはいえ、原作を良く知
る私は楽しく本作品を観るこ
とができる。

回数はそれほど観ていない。
20回くらいか。



冒頭の戦地からの撤退のシー
ンは、この映画ではAR-15コマ
ンド(ボルトフォワードアシス
ト機構なし。米国の傭兵スクー
ルではこのタイプの小銃が多い)
を使っていて、
南米からの撤退
となっているが、原作小説では
ビアフラからの撤退であり、銃
ベルギーのFAL小銃となってい
る。ここはどうしてもFALを出し
てほしかった。
その後のシーンでは敵方でFALが
たくさん出てくるが、傭兵が持
つFALと敵方では意味が異なる。
AR-15では原作の持つ含みが消失
してしまっている。



若き日のトム・ベレンジャーは
本作品ではキャラを生かし切れ
ていない。



雰囲気はいい感じなんだけどね。

何といっても、ウォーケンの
病的な演技が良い。



どこかで、「あんな優男(やさ
おとこ)の傭兵などいない」と
か書いている
レビューを読んだ
が、噴き出しそうになった。
傭兵知ってるの?と。
ウォ~とかガォ~とかエイド
リア~ン!みたいなのが傭兵
とちゃうで。ほんまもんは。



原作はかなり複雑で、かつ大
作であるのだが、これも何度
も読んでいる。
何度読んでも背筋が凍りそう
になるが。

よく小説や映画で「その先の
ストーリー言わないで」とか
いう人いるでしょ?

あれ、絶対に一回読んだら読
み捨てだったり、映画もきち
んと観ないで
細切れ観だった
りするような人だと思う。
求めているのはオハナシの流
れだけなんだよね。細かい表
現描写や映像技法はどうでも
いい。

内容や細かい表現描写につい
て後に尋ねても大抵は覚えて
いない。

アメリカチックだよね。読み
捨てポイのペーパーブックス
のような。
「もう観た」とか「もう読ん
だ」とかで、二度と同じ作に
は触れようとしない。
日本刀鑑賞の趣味など絶対に
なさそうな感じがする。
なぜなら、日本刀は何度も何
度も繰り返して眺めて楽しむ
ものだからだ。
古美術全般がそうだよね。使
い捨てポイ捨て感覚とは対極
にある。
大量消費文化のような使い捨
てポイはとてもアメリカ的だ
と私は感じる。


日本というのは少し違うよう
な気がする。
読み捨てのよう
な小説ブックスであっても、
きちんとしたカバーがついた
「文庫」
という文化がある。
使い捨てポイ、用済みポイ、
というのは日本にはあまり

なかった感覚なのではなかろ
うか。

まあ、俺のように気に入った
映画や小説を何度も見たり読
んだりするのも
どうかと思う
が、『ボディガード』のケビ
ンコスナーの役どころもそう
いう男
だった。

『戦争の犬たち』は、作戦決
行前の周辺環境、世界情勢、
地理的位置、
人間関係等が複
雑だ。
だが、読みごたえはたっぷり
ある。大人の小説だ。

不明瞭な点やわからない点が
あったらメモを取ればよい。

こんな感じで。(相関図まで
書いてる(笑
実は日本刀に関する学習も私
はこのような形でやっている。
そして自分でまとめて記述し
た事は全て頭に入れる。この
ノートには事実関係だけでな
く、諸情報からの所見も記述
するようにしている。物理情
報に併せて見識の構築の為の
思惟も書き残すようにしてい
る。物理的情報と思惟部分が
交雑する記載は一切排除する。
私的見解となるものと物理的
事実の認知は自分自身で識別、
区別、弁別する。


ガッコのベンキョもこれくらい
身を入れて真面目にやっていた
ら、
もうちっとはできただろう
に(笑
これは「整理のための学習」と
してこういうことをやっている。
ただし、作品に登場するような
本戦状況では、メモは一切取っ
てはならない。すべて頭の中に
入れる。
日本刀鑑賞もそうで、刀を観て
メモを取ってはならない。
これは佐藤寒山先生が研究者た
ちに残した教えだが、ある意味
「実戦的」であると思う。
座学は重要だが、すべての座学
は実刀を観る前ではなく、事後
に実行する。これが日本刀が
「見えるようになる」コツだ。

フォーサイスの『戦争の犬たち』-
これは人生の中で、一度は読
んでおいてもよいだろう小説だ。
あとね、映画作品で「これは」
と思ったのは『ブラッドダイヤ
モンド』だよ。
あれは洒落にならない。ウルト
ラくそリアルすぎて(苦笑
エグゼクティブアウトカムズ社
やデビアスの恐ろしさというの
はですね、あれは経験してみな
いと解らない。
日本の国家警察でさえ、アン
タッチャブルなんだから。い
やほんとに。
事実は小説より奇なり、てなぁ、
本当にあるもんだよ。
日本のヤクザの抗争なんて運動
会程度に思えてくるもの。



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