言葉のチカラこぶ——『いい言葉塾』

言葉はコミュニケーションの基本。伝えたいことは「言葉のチカラ」できっと伝えられる。もっとうまく伝えられる。

「時代においていかれたテーラーの復活」(その4)

2012-05-16 15:05:23 | 繁盛店物語(創作)
こんにちは。
販促経営コンサルタント、藤田です。
本日は2回目の投稿です。

このカテゴリーは基本的にフィクションです。
販促経営コンサルタントの本田というわたしの分身を登場させて、様々な経営再生の様子を描写していきます。
内容はフィクションですので、モデルそのものはありませんが、実際に自分が経験したことも混じっていますので、これを読むあなたにもずいぶんと参考になることが出てくると思います。
あなたの経営改善のヒントにご自由にお使いください。
(なお配信は原則毎週1回水曜日にと思っていますが、基本的にランダム配信です)


「時代においていかれたテーラーの復活」(その4)


本田は事務所に帰ると、以前インタビューしたことがある、大岡にも話した、特定の顧客を獲得して成功しているテーラーのインタビュー記を読み返してみた。

そこからは大岡に向けて出す提案は出てこなかったが、今の状況だけは再度把握することができた。

大岡には、上記のようなテーラーとして再出発するようにという提案はできない。

置かれている状況が全然違うからだ。




折しも、百貨店やショッピングセンターでは、今ちょうど夏物のバーゲンセールをやっている。

本田は妻のショッピングに同行した。

もちろんバーゲンセールがお目当てだ。

本田も夏物の、仕事ではくズボンが欲しいと思っていた。

そうして、妻の買物につき合いながらも、自身もあるショップでズボンを1本手に入れた。

そのショップでは、定番のものなら裾あげはサービスになっているが、バーゲン商品は裾上げ代が別にかかる。

仕方がないので、それは町にあるリフォームショップでやってもらうことにして、ズボンをそのまま持ち帰り、翌日近くのショッピングセンターに入っている、あるチェーン化しているリフォームショップにズボンを持ちこんだ。

その店では、受付の奥で数人の女性が盛んにミシンを操作して、指定されたリフォームをやっている。

「あ、そうか。これだ」と本田は思った。

大岡のように洋服のいろはをよく知っている技術者が、これをやると信頼感が出て、ヒットするんじゃないかと感じた。

町のリフォーム屋さんでは、パートの奥さんたちが片手間のように作業しているが、この作業を大岡のような熟練者が店でやっているとなると、安心感があるはずだ。


提案のコンセプトが固まった。

『洋服づくりの匠が、あなたの要望に120%応えます。』

これだ。

お客様が持ちこんだ洋服のリフォーム依頼を、期待以上の出来でお渡しする。

それができるのは、もともと30年以上のテーラーとしての腕があるからだ、というわけだ。



このコンセプトをもとに、それから数日後に本田は大岡を訪れた。

しかし大岡の技術者としてのプライドが、その本田のプランを拒否した。

今さらそんな、大岡に言わせれば、片手間のような仕事はできない、と拒んだ。

「大岡さん、あなたは片手間としか考えないが、お客様は違う。大岡さんとこに持ってくるお客様の洋服には、きっと強い思い入れがあるものかもしれないんです。だって、だからこそ大岡さんのような確かな技術を持った人にリフォームしてもらいたいんですよ」

「わたしはこの腕一本で、今までテーラーとしてジャケットやスーツを作ってきたんだ。今さらどうしてそんな中途半端なことが出来るというんだ!」

「中途半端? 中途半端とは失礼じゃないですか」

「わたしにとっては、きちんと生地から1着仕上げてこその仕事なんだ」

「その仕事がなくなったから、私に依頼したんじゃないですか?」

「だから、あんたに頼めば、何か自分が持っている技術を活かせるようなものを提案してもらえるんじゃないかって思ったからだ」

「大岡さん、世の中にハイこれですって、ぱっと提案できるような新しい仕事なんてありませんよ。どんなに新しく見えても、それは今までの仕事の延長線上で考えだされてきたものばかりです。大岡さんの技術を活かせて、地域のお客様に貢献できることを考えたとき、大岡さんにはこれだ、とわたしは思いました。とてもいい仕事ではないかなって思いました。それをあなたは中途半端仕事だとしかと思わないのなら、仕方ないですね。わたしは手を引きます」



                                      つづく


<5>へつづく。
(このストーリーは、リアル体験を元にしたフィクションです)

それでは今日はこれで。
あなたの一日が今日もいい一日でありますように。
藤田販促計画事務所、お客様力(ぢから)プロデューサの藤田でした。

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サービス業の真髄

2012-05-16 09:45:16 | 読んだ本から
こんにちは。
前橋の販促経営コンサルタント、藤田です。
今日もよろしくお願いします。

昨日はほぼ一日中雨でした。
今朝もまだ曇っていますが、これから徐々に晴れてきそうです。
でも、それに連れて気温も上がっていきそうな気配です。
ここに坐る前に机周りや床、廊下などを拭きましたが、汗がけっこう出てきましたから。
蒸し暑くなるんでしょうね。
予報では夏日になるそうだということです。

今日は先ほど読み終えた本を紹介します。
タイトルは「サービスの達人たち」。
この本の続編には「サービスの裏方たち」「サービスの天才たち」もあります。

上記の「サービスの裏方たち」を先に読みました。

その出会いは、いつものように暇な時にのぞいたブックオフで、何気なく本棚を物色していたときに、ふと目に止まったのがきっかけです。
そのときは何だか向こうから、「私の方を見ろ、このタイトルを見ろ」と呼びかけてきたみたいな感じでした。

こんなときってありますね。
自分で意識しないで何気なくという感じで、つい手がそこに行って引き出してしまいました。
それが「サービスの裏方たち」という新潮文庫でした。ページ数250ページほどの薄めの文庫本で、普段ならあまり目に止めない分類のコーナーにありました。

不思議ですね。そのときはよほど暇だったのか、時間があったのか、いつも見ないコーナーまで何気なく目がいった時に、その本の背表紙だけが私を呼んでいました。

さてこの「サービスの裏方たち」の紹介はおいといて、まず「サービスの達人たち」の方を紹介します。

この本もページ数230ページほどの薄さです。
この本で紹介されている達人たちは、ロールスロイスの営業マン、「並天丼」一筋の料理人、今では絶滅した職業の三助さん、ウイスキーのブレンダー、伝説のゲイバーの経営者、電報配達人、銀座ではなく新宿ナンバーワンのホステスさん、“呼び屋”と呼ばれた興行師、世界一の靴磨き、です。

これを解説している酒井順子さんの文章の中に、この本に出てくる達人たちをよく表現してくれているところがあります。

おそらく日本人が本当に好きなのは、技術によるサービスではなく、『そうせずにはいられない』から行われるサービスだと思うのです。そしてこの本で取り上げられているのは『そうせずにはいられない』からサービスをしている人ばかりです

まさにこの文章の通りです。

その中でも最後に登場するキャピトル東急ホテルの靴磨き“源ちゃん”こと井上源太郎さんの「ヘップバーンを虜にした靴磨き」のサービスのこだわりには、その真髄が示されているように思われます。

靴を磨いている時にはお客さんの姿をイメージしながら仕上げるんだよ。だからその人の姿が思い出せないようになったら、仕事したくないんだ、うん。それが人と人とのつき合いってもんでしょう。

サービスというのは単に値段を下げるというのではなく、お客様の姿をイメージし、その人が一番喜ぶことをしてあげるということで、そのためには自分のお客様の名前だけではなく、その性格や好み、ライフスタイルまで把握して、それをサポートするというのが究極のサービスではないでしょうか。

日本では“サービス”というと、値引きするとか、無料にするとか、何かもうひとつつけるとか、そんなことの言葉として普段は使われていますが、サービス業のサービスとは、そういうことではなくて、ひと言で言えば、相手をその人の身になってサポートすることではないでしょうか。その奥にはさまざまな要素が含まれていますが。
サポートした対価として料金をいただく。それがサービス業ですよね。
それが真のサービス業だと思います。

考えてみれば(ここで考えるんか?)、私もそのサービス業に携わっている一人です。
相手の身になって明日を考えなければいけないですね。

この本をものにした作者の野地秩嘉(のじつねよし)さんは経済関係のライターではなく、もともとはルポライターですので、経済面からの角度ではなく一人ひとり人間として眺め、本人に密着しながら、一歩も2歩も引いたところから書いているというところは凄いですね。
書いた人たちがたまたまサービス業に従事している人たちだったということなんでしょうね。

さて、次は「サービスの天才たち」を読まなくちゃ。

さあ今日もがんばろう!

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