4月17日(土) 私達夫婦は久方振りに県内の小さな旅に出ることになりました。
少々疲れ気味の二人には丁度よい機会かと思います。以前から「ほたるイカのフルコース」を食べたいと言っていた事に、旬がぴったりと合い水揚げ量日本一の浜坂を目指すことになりました。
お昼は兵庫の母なる山裾にひっそりとある、隠れ家「うなわ」でやまめを頂くことにしていました。山間からのぞむ氷ノ山は昨日までの冷え込みで少し雪化粧です。本日は全15品のフルコースをお願いしました。
これが後にちょっとしたアクシデントになるとは、骨酒ですっかりご機嫌の夫と、殆ど全部平らげた私は、「幸せに酔いしれる二人」で、その後のことに気付くことはありませんでした。
兵庫県養父市鵜縄 やまめ料理 「うなわ」




「お壌ちゃん、い~い、まっすぐ走るんだよ。君の好きな一本道だからね。何にも心配することはないよ。僕がいるからね」
「でも あなた、私そろそろ、ナビがほしいわ」
「ナビ?何でナビなどいるんだ?僕が君のナビじゃないか!」
「・・・」
「ZZZ・・・」 「ゴォ~ゴォ~」
ついにナビは雑音しか入らなくなりました。
「あなた、鳥取、米子方面と書いてありますけど、これでよろしいのかしら?」
(私達は妙に言葉のきれいな夫婦なのです。)
「ああ~いいよ。まっすぐ行こうね。ムニャムニャムニャ・・・」
<いくらまっすぐ行けと言われてもこれはおかしいわ・・・>
私は意を決してガソリンスタンドに入りました。
「ええ~っ、お客さん、兵庫はとっくに抜けて、ここはもう鳥取ですよ」
「あなた、着きましたわ。トットリに!」
「ええ~っ、まっすぐ走ったんだろう?君は!」
「ハイ!まっすぐ走ったからトットリに来ました」
「よ~し、今から兵庫に向かってまっすぐ行こう!」
「・・・」
兵庫県美方郡新温泉町七釜 「あかね荘」




朝食
山陰但馬、浜坂温泉郷のひとつである七釜(しちかま)温泉は湯泉に恵まれ、近辺にそうそうたる温泉場がありながらも、当地は湯治場として、多くの人に大変愛されたそうです。
お湯のことはよく分からない私も、43℃のかけ流し湯を体験し、全身をつけずに半身浴で楽しむ湯入りに、三度も挑戦させていただきました。
さて、本日のメーンエベント「ほたるイカのフルコース」ですが、ほたるイカのみならず、色んな食材が組み入れられたお料理は、見て良し、食べて良し、非の打ち所がありません。が・・・昼食の量がたたり、食べきれないのです。
ほぞを噛むとはこのことなのでしょうか。私にとっては涙を呑む宴になりました。今日は山陰の銘酒などを頂いて、拓郎の「ユカタの君」になろうと思っていたのに・・・残念。さすがの大食漢の夫も、私の分を押し付けられて、困ったことと思います。満腹からか、いつもはずら~と並ぶ王冠も今夜は二個。
しかし人間の回復力は素晴らしく、食べたかった「ほたるイカの釜飯」が朝食に出て、まさにお釜をカラにする勢いで、その他全てを完食いたしました。<あ~ぁ釜飯が朝でよかったぁ~>
可愛いほたるイカをふんだんに使ったお料理は、積年の夢を叶えるに十分でしたが、もう一点付け加えさせて頂きたいのが、ここの若おかみの可憐さです。
もう、行って確かめて頂くしか、私の筆では追いつきません。
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若おかみと再会を期し、年だから無理をしないでおきましょうと、私達は来た道を引き返すべく、養父市関宮を通過していた時、一服の風がさ~と車中に流れ込んできたのです。
「おいっ、寄ってかないのか?」
夫も同時に同じ声を聞いたのかも知れません。瞬間通り過ぎた私達の目の片隅に、「山田風太郎記念館」 の文字が見えたのです。
呼び止めたのは、風太郎に違いない。
「寄る?」 二人は同時に頷き、Uターン。小さな小さな記念館の扉を開けました。

隠すに忍びない私のイケメンの夫 新刊書の数々

最晩年の風太郎のインタビュー(関宮を語る) 風太郎の生家
風太郎さんが但馬の人だとはよく知っていましたが、この場所に記念館があったのは知りませんでした。
風太郎さんに呼び止められて、私達の旅は一気にグレードアップしました。ああ~っ嬉しい!飲み食いだけに終わらなかった幸運を但馬の空に感謝しました。

わたくしがこの記事を書いてから、暫く姿を消したからといってどうぞお探しににならないで。風に誘われてわたくしは、風太郎の世界に身を隠くしたいと考えているところなのです・・・
山田風太郎(本名・山田誠也)の生まれた兵庫但馬は、海と山を合わせ持つ、懐の深い風土にあります。そこはいつも縦横無尽にからころと風が遊ぶ稀有な場所でもあります。


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