万葉ロマンの地 蒲生野 と 彼岸花 ・・・youtube by Mryoshi3838
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天皇、蒲生野(がもうの)に遊猟(みかり)したまいし時に、額田王の作る歌
・茜草指 武良前野逝 標野行 野守者不見哉 君之袖布流 -- 万葉集の一・20
あかねさす 紫野行き 標野行き 野守は見ずや 君が袖振る
(船岡山 陶板画)
天智天皇(一般には中大兄皇子)の寵姫であり、かつては皇弟大海人皇子(のちの天武天皇)の恋人で
大海人皇子の間には十市皇女(とおちのひめみこ)をもうけた額田王が、
蒲生野で薬狩りがあった時に詠んだ歌
薬狩というのは、鹿の若角(鹿茸という薬にする)をとるための狩りで
標野とは禁野のこと、つまり天皇の狩猟地。
紫草の生い茂る蒲生野の只中で、鹿を追って馬を駆る男たちを眺めての相聞歌
皇太子(ひつぎのみこ)の答ふる御歌
紫草能 尓保敝類妹乎 尓苦久有者 人嬬故尓 吾戀目八方・・万葉集20・21
紫の にほへる妹を 憎くあらば 人妻ゆゑに 我恋ひめやも
この様な心情の歌が、安易に世に残る訳もないと考えられ、色々な解釈がなされていますが
人の心情が表現された舞台の蒲生野に興味がつきません。
あかねさす 紫野行き 標野行き 野守は見ずや 君が袖振る
紫草の にほへる妹を 憎くあらば 人妻ゆゑに われ恋ひめやも
★一旦恋愛の歌の贈答であると思わせておいて、宴の席での座興であったことに気づかせる。
1.文法的説明をする。
2.語釈をする。
・あかねさす=「紫」の枕詞。
・紫野=紫草が栽培されている野原。紫は恋焦がれる思いを表す。
・標野=立入禁止の野原。
・野守=野の番人。
・袖振る=愛情を伝える動作。
・にほふ=色が美しい。
・妹=あなた。男子が姉妹や妻や愛人など親しい女子を呼ぶ言葉。
3.現代語訳をさせる。
・紫草を栽培する立入禁止の野原を行き、番人が見ていないのですか、あなたが袖を振るのを。
・紫草のように美しいあなたを憎く思っているならば、人妻だからといって、どうして私は恋などしようか、いやしない。
↓
あなたを憎く思っていないから、人妻でも恋をしている。
4.これは「紫の唱和」と呼ばれていることを説明する。
・この二首は恋愛の歌である。
5.系図を見ながら「野守」「君」「妹」とは誰を指すか、この歌の背景を考える。
・野守=天智天皇。
・君=大海人皇子。
・妹=額田王。
・天智天皇が開いた宴の席で、妻である額田王と前夫である大海人皇子が、不倫の愛の歌を詠みあっていることになる。
・元々、天智天皇が自分の娘たちを大海人皇子に嫁がせ額田王を取り上げたという説もある。
・後年、壬申の乱で大海人皇子が天智天皇の子の大友皇子との皇位争いに勝ち天武天皇になった。とすれば、 この歌がその遠因になっていることになる。
6.この歌の部立、三人の年齢などから、本当の背景を考える。
・「相聞」(恋愛の歌)でなく、「雑歌」(宴の歌)になっている。
・この時、天智天皇は四五才前後、大海人皇子は三七、八才、額田王は四〇才過ぎである。
・したがって、この歌は宴の席での余興である。
・「君が袖振る」は大海人皇子の舞振りを、「紫草のにほへる妹」は額田王をからかっている。額田王は大海人皇子が元服した時の添臥と言われている。
・万葉の時代の人の開放的な明るさを感じとる。
市宮神社に、額田王が天智天皇を思い慕い、天皇の訪れがないのを嘆く歌。
君待登 吾戀居者 我屋戸之 簾動之 秋風吹
君待つと わが恋ひをれば わが屋戸の すだれ動かし 秋の風吹く