「坂東玉三郎~歌舞伎座立女形への道~」(中川右介)読了。
※画像をクリックすると「楽天」のページに飛びます
内容としては、筆者が玉三郎の舞台を見ての感想・論評、というよりは、
梨園の御曹司ではない玉三郎が
周囲に見出され、本人の力も相まって
歌舞伎座で立女形に位置付けられるまでの経緯を、
様々な書籍や論評などを元に描いていく、というもの。
筆者の他の本は読んでいないのだが、
おそらくこのあたりの「二次資料」を元にストーリーを紡いでいくのが
この筆者のスタンスなのだろう。
玉三郎の役の推移や観客の声等を知るには良い本ではあるが、
芸術性・新しさがストレートに描かれた書籍だと
純粋に思ってこの本を買うと裏切られるかも知れない。
さらに言えば、この本は玉三郎の芸よりも、
歌右衛門の「権力」「政治」への傾倒を描き、
場合によっては指弾するのがメインになっているように思う。
個人的には、タイトルに「歌右衛門」の文字があって然るべきと感じる。
また、その歌右衛門の言動についても、
どこまで事実でどこから想像かはぼやかされており、
一部は曲解では、と感じるところもある。
政治力のためか、三姫を始めとした大役はずっとやっていたとは言え、
晩年の歌右衛門が綺麗だとは私も思えない。
その歌右衛門の価値を論じる書籍は巷に溢れているので、
この本は(運動論として)「アンチ・歌右衛門」のスタンスで書かれているのだろう。
ただそれにしても、玉三郎と歌右衛門に共通・通底する部分への言及は少ないし、
芸について書かれている部分は、もっと詳細に書かれた適切な本なり劇評なりがある。
この本を読んでも、玉三郎の芸質について理解が深まるとは思えないなあ。
陰謀論・スキャンダルとして読むには面白い本だろう。
あと、誤字誤植が散見され、興醒め。
※画像をクリックすると「楽天」のページに飛びます
内容としては、筆者が玉三郎の舞台を見ての感想・論評、というよりは、
梨園の御曹司ではない玉三郎が
周囲に見出され、本人の力も相まって
歌舞伎座で立女形に位置付けられるまでの経緯を、
様々な書籍や論評などを元に描いていく、というもの。
筆者の他の本は読んでいないのだが、
おそらくこのあたりの「二次資料」を元にストーリーを紡いでいくのが
この筆者のスタンスなのだろう。
玉三郎の役の推移や観客の声等を知るには良い本ではあるが、
芸術性・新しさがストレートに描かれた書籍だと
純粋に思ってこの本を買うと裏切られるかも知れない。
さらに言えば、この本は玉三郎の芸よりも、
歌右衛門の「権力」「政治」への傾倒を描き、
場合によっては指弾するのがメインになっているように思う。
個人的には、タイトルに「歌右衛門」の文字があって然るべきと感じる。
また、その歌右衛門の言動についても、
どこまで事実でどこから想像かはぼやかされており、
一部は曲解では、と感じるところもある。
政治力のためか、三姫を始めとした大役はずっとやっていたとは言え、
晩年の歌右衛門が綺麗だとは私も思えない。
その歌右衛門の価値を論じる書籍は巷に溢れているので、
この本は(運動論として)「アンチ・歌右衛門」のスタンスで書かれているのだろう。
ただそれにしても、玉三郎と歌右衛門に共通・通底する部分への言及は少ないし、
芸について書かれている部分は、もっと詳細に書かれた適切な本なり劇評なりがある。
この本を読んでも、玉三郎の芸質について理解が深まるとは思えないなあ。
陰謀論・スキャンダルとして読むには面白い本だろう。
あと、誤字誤植が散見され、興醒め。