゛まるかん人゛プラトーク

元気とキレイを追求すると、人生は楽しく過ごすことと・・・!?

寒風けいざい温風「担い手育てる農業大学校」

2008-12-01 15:00:00 | 社会・経済

山形で卒業生の6割就農=生源寺 真一解説

山形県立農業大学校で特別講義を行うため、初秋の新庄市を訪れ                             た。農業大学校は明日の農業を支える若者を養成する専修学校で                             あり、42の道府県に設置されている。2年間の修業年限で、ほとん                             どが全寮生を採用している。農業について深く学ぶことと並んで、生                             涯の人的ネットワ-クづくりも大切だとの判断からであろう。山形県                              立農業大学校は、元気の良さという点で全国有数の存在である。知                             事の「日本一の農業大学校を目指す」との掛け声の下、校長先生を                             先頭に大小さまざまな新機軸に余念がない。成果も着実に表れてい                            る。何よりも、卒業生の就農率が高い。今年3月の卒業生の6割近く                             が農業に進んだ。農業以外の就職先も、ほとんどが農協や農業関                              連企業である。まさに明日の農業を支える若者が巣立っている。

政府の支援策重要

農業従事者の高齢化か゜進んでいる。特に深刻なのは水田農業だ。                             少数の専業農業や法人経営を除くと、水田農業は昭和一けた世代                                の頑張りによって支えられていると言ってもよい。このまま推移すれ                             ば、現在は生産過剰に頭を痛めている稲作も、供給力が急速に落ち                             込む事態も考えられないではない。そこで政府が打ち出しているの                              が担い手政策である。農業中心で生活する農家や集落営農と呼ば                             れる組織的な取り組みを経済的にサポ-トする政策を担い手政策と                             呼ぶ。日本農業の将来を考えるとき、担い手政策にはもっと力を入れ                            てよい。けれども、現在活躍中の担い手を支援するだけでは十分と                              は言えない。担い手の卵である若者を対象に、ひなの段階から一人                             前の親鳥になるまでのステップを支援することが重要である。若者を                             受け入れた法人経営や集落営農を支援する間接的な手法も考えら                              れる。もちろん、支援の対象を農家の子弟に限定する必要はない。

将来の若者対策も

考えてみれば、農業従事者の高齢化はここ5年や10年で急に生じ                              た現象ではない。30年、40年前に若者であった人々の就業先の                              選択が累積した結果として、今日の深刻な担い手不足が生じてい                               るのである。この状態を一朝一夕に変えようなどということは考えな                             い方がよい。担い手政策に加えて、「明日の担い手政策」を充実す                              ることで、日本の農業は長期的な持続性を獲得することになる。「明                             日の担い手政策」に応えて農業にチャレンジする若者は少なくない                             はずだ。農業大学校の講堂でそう確信した。熱心に聴講する100人                               の学生を前に、東大生に対する日ごろの講義に比べて、私のテンシ                             ョンも幾分高めだったようである。(しょうげんじ・しんいち=東大教授)

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ナマコ増産に道筋

2008-11-27 16:30:00 | 社会・経済

九大 生殖行動促すホルモン精製

九州大などは21日、高級食材として中国で需要が高まっているマ                               ナマコの生殖行動を促すホルモンの精製に成功したと発表した。マ                               ナマコの受精を大幅に効率化でき、大量の養殖が可能になるという。                              九州大の吉国通庸教授(比較内分泌学)らの研究チ-ムは、マナマ                              コの神経組織から精巣や卵巣に働き掛け生殖を誘発する神経ホル                               モンを抽出。構造を解明して化学合成し、産業レベルの養殖に実用                              化できることを確認した。繁殖期のマナマコに、このホルモンを一定                               の体内濃度まで注射すると、約1時間で精子や卵子を放出するとい                             う。マナマコは、体内から人為的に摘出した卵子では受精しないため、                            養殖の効率化には、産卵を促す技術が課題となつていた。財務省の                             貿易統計によると、乾燥ナマコの輸出額は昨年、約167億円と200                             4年の3倍に急増。吉国教授は「受精卵の飼育にまだ課題が残るが、                             養殖の大幅な効率化を図ることができる」と話している。

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ジャガイモ水耕栽培に成功

2008-09-27 16:33:00 | 社会・経済

産総研100_0542 収量 露地の4倍/安定供給に道筋

独立行政法人・産業技術総合研究北海道セン                              タ-(札幌)ジャガイモ水耕栽培に成功した。                               水耕栽培はレタスやトマトでは実用化されてい                              るが、ジャガイモは国内で本格的な研究事例が                             なかった。収量も露地栽培の約4倍を記録。                                通年収穫にめどがつけば、原材料の安定確保が                             課題の食品加工会社などから注目されそうだ。                             国内の露地物のジャガイモは通常5-11月に                              かけて収穫されている。このためボテトチップス                              などの製造会社は、春先の瑞境期には保存したジャガイモを使用                              する。だが保存期間が長くなるほどでんぷんが糖に変わり、脂で揚                             げると焦げて黒く変色しやすくなる問題があった。同センタ-は水耕                             栽培に向け、特製のステンレスケ-スを開発。栄養分を含んだ水を                             循環させるもので、茎の生育を助けるため筒で支える工夫も凝らし                             た。この装置を同センタ-内の研究施設に設置。昨年6月から水耕                             栽培に取り組み、光の照射時間や室温などを調整しながら最適な生                            育環境を探っていた。その結果、収量は一平方㍍当たり約15㌔と                               露地栽培の約4倍を達成した。同センタ-は「装置の改良が進めば、                            収量は露地栽培の10倍にもなる可能性も」と期待する。また、水耕                             栽培では土壌を通した病害虫感染の危険性が大幅に低くなり、無農                            薬栽培ができるようになるほか、ジャガイモではタブ-とさける連作                              も可能という。今後の課題は、装置の設置費用などのコスト。今回                              の試験では算出していないため、同センタ-は「生産経費を把握し                              たうえで実用化の可能性を示したい」と話している。

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寒風(けいざい)温風「必要な道路」の定義は

2008-09-27 16:04:00 | 社会・経済

厳しい費用対効果分析を=宮本 勝浩関西大学教授

「道路整備事業財政特別設置法」が衆議院で再可決された。これ                              で道路特定財源が再び確保されたことになるが、来年度からの一                              般財源化がすでに閣議決定されているので、新たな法令により来                              年度からはこの財源が道路建設以外にも使われることになる。しか                            し、道路族議員や関係者は「必要な道路は従来通り造る」と既定し、                            実質的にこの財源のほとんどを使い道路を造り続けることができる                              ともくろんでいる。一方、一般財源化を主張した関係者は、来年度                              以降この財源が社会保障や教育などに使うことができると考えて                              いる。一体どちらが本当なのだろうか。

一般財源から出資

道路特定財源は新たな道路建設に使われてきたが、実はそれ以外                             にもすでに造った道路費用の借金返済にかなり充てられてきた。つ                             まり多くの地域は道路特定財源をあてにして、すでに道路を造ってし                             まっている。2008年度の国土交通省予算の総道路投資額は約7                              兆8千億円。うち道路特定財源からの出費は約4兆9千億円で、一                             般財源からも約1兆7千億円が出資されている。残りは財政投融資                             や料金収入で補っている。つまり現在でも道路建設は道路特定財源                            だけでは不足しているので、一般財源から補てんされているのだ。と                             いうことは道路特定財源が一般財源化されても、従来通りの道路建                             設を続ければ、道路特定財源から社会保障や教育などに使うお金は                            ほとんどないことになる。

すべて情報公開を

日本の道路はすべてに世界のトップクラスであり、他方子育て支援な                            どは先進国の中では低い水準であるといわれる。では、どうすれば道                            路特定財源を社会保障や教育などに使うことができるようになるだろ                             うか。それには「必要な道路」の定義が重要だ。地方出身の議員や首                            長は「道路は必要」と言う。それでは「必要な道路」とは何か-。よく使                            われる評価基準は費用対効果分析だ。費用を分母にして、道路が建                             設された後の便益を分子にした比率が「1」を超えると、効果の方が大                            きいから道路を建設すべきと評価するものだ。だが費用対効果分析に                            は問題がある。道路建設後の通行車両数の予想が非常に甘く、関係                            省庁が自分たちで試算することが多いことだ。従って、これからの費用                            対効果分析は①通行車両に関し甘い予測をせずに現実的な「厳しい                            予想をする」②すべての情報を公開③関係省庁で試算させず大学など                           第三者研究機関に依頼④その道路以外に他に同額の出費を行った時                            との便益効果の比較の実施-などが必要だ。

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ナマコ最大規模の養殖

2008-09-26 17:00:00 | 社会・経済

三重 中国への輸出狙う

三重県桑名市の食品製造会社「ヤマモリ」が、地元漁協などの協力                             を受けて、国内最大規模の稚ナマコ養殖に成功した。現時点での年                             産規模は二十万匹程度。来年度は五千万匹、5年後までには一億                             匹を目標に量産し、日本産ナマコが高値で売買される中国向けに輸                             出していく計画だ。独立行政法人「水産総合研究センタ-」によると、                            国内ではナマコ養殖があまり進んでおらず、岩手県が産官共同で行                             っている養殖事業が年間数万匹の規模。ヤマモリの取り組みはこれ                             を上回る国内最大級となる。中国では乾燥ナマコが高級食材として                             珍重され、特に日本産は最高級品として一㌔当たり10万円以上で取                            引されることもあるという。ヤマモリは同国大連市に昨年設立した現                             地法人を通じて、しょうゆやレトルト食品を輸出販売してきたが、乾燥                             ナマコ市場の大きさに注目し、養殖に乗り出した。同社の三林州生・                            新事業開発部長は、「中国から養殖技術者を招き、水温コントロ-ル                            や菌の処理などのノウハウを取り入れたことが(国内最大規模での養                            殖の)成功につながった」と語っている。

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寒風<けいざい>温風「栃木の農村レストラン」

2008-06-10 17:00:00 | 社会・経済

中山間地域の集落に活気 「関 満博」

近年、全国各地の農村に興味深いことが起っている。特に、全国の                           各地の農家の夫人たちによる農産物の「直売所」「加工場」「農村                           (家)レストラン」の展開がまことに興味深いものになってきた。いず                           れも農家夫人たちが共同で事業化し、自立的に運営されているとこ                           ろに注目すべき点がある。農村レストランが最も活発とされている栃                           木県の中山間地域を訪ねてみた。栃木県では「地域の農業者が共                           同で、または、市町村、農協等が主体となって、地域の活性化や農                           業振興をめざし、地場農産物を農業者自らが料理して提供する施                           設」を農村レストランと称している。財団法人・都市農山漁村交流活                           性化機構の『きらめく農家レストラン』(2007年)を見ると、栃木県が                           一番多い。06年段階で70店を数え、第2位の宮城県(42店)、第3                           位の広島県(37店)を大きく引き離している。ちなみに北海道は第6                           位の24店であった。

7割以上がそば店

また、栃木の農村レストランの営業品目は、圧倒的に「そば」であり、                           08年現在の72店のうち55店(76%)を占めていた。そばは単品で                           勝負できることから、農家の夫人たちでも手掛けやすいのかもしれな                          い。栃木県の中でも旧・今市市(現・日光市)の取り組みが注目され                          る。1990年代の始めごろ、当時の市長が農村の集落活性化のため                         に、地元産のソバを使った「そば屋」となると難しい。この点を栃木県                           と協議を重ね、農家の共同経営であれば「そば屋」にも補助金が出                           るようにしていく。建設費のほぼ半分が助成された。各集落がそば                           屋の組合をつくり、組合員の夫人たちがそば打ちをうるという仕組み                           を形成した。おりしもバブル経済が重なり、順調にスタ-トしていった。                          日光市の「手打ちそば店マップ」には130店が記載されているが、集                           落の農家の組合による農村レストランは7店か゛紹介されているその                          中の一つ、小百田舎そば組合の場合は、35軒の農家で設立され                            (一軒五万円の出資)、50歳から80歳までの18人の組合員の夫人                          たちが交代で運営していた。8時半から16時半まで、時給870円。                           来客数は年間6万人に達し、組合員への配当も20%を出していた。                          日光の農村レストランのそば屋は、いずれも昼時は1時間待ちの盛                           況ぶりだ。

原料は地産地消で

また、原料のソバについては、集落の農家に生産組合をつくらせ、地                          産地消を原則にしていた。買い上げ価格を農協の倍程度に設定し、                           農家の生産意欲を高めるなど、興味深い循環的なやり方だ。地元産                           原料を使用し、付加価値を高め、集落に就業の場を形成し、高齢者                           雇用を拡大させ、さらに、農業生産に意欲を持たせるという興味深い                           取り組みであった。それは中山間地域の集落に大きな「希望」を与え                          ていた。(せき・みつひろ=一橋大学教授)

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限界の先に<地方再生の道⑤>

2008-06-09 17:00:00 | 社会・経済

財政の歯止め                                                           常に市民自ら点検

100_0572 夕張市の財政破たんがきっかけだった。「うち                            のまちは大丈夫なのか」-。北海道から遠く離                            れた長野県にも、そんな心配が住民の間に少し                           ずつ広まっていた。昨年11月。「市の決算資料                            を公表しないなら、情報開示請求だって考えます                          よ」。松本市役所の財政課で、男性が思わず声                            を荒げると、市職員は表情を硬くした。

開示請求

声の主である手塚英男(69)は「市民が作る松本                          市財政白書の会」の世話人を務める。市に対して                          詳細な決算資料の開示を求めてきたが、市側はなかなか首を縦に振                らない。豪を煮やした手塚の口を突いて出たのが「開示請求」という言                          葉だった。松本市の財政は「健全」とされる。財政力指数(2006年度)                         は県内19市のうち、良い方から二番目。収入のうちどのくらいの割合                          を借金返済に充てているかをみる実質公債費比率も12・7%と「安全                         圏」ある。だが手綱を緩めれば、財政は途端に悪化の坂道を転げ始め                          る。天下の台所は役人に任せておけばいい-。手塚の目には、旧城                          下町の松本市がそんな「官高民低」の体質に今も凝り固まっているよ                          うに見える。以前、市民芸術館の建設計画が市民を二分した際に反対                         運動に加わったのも、そんな旧態への疑問に突き動かされたからだ。

ばらまき

前市長が打ち出した同施設の建設計画は市長選の争点に発展。結局、                         同施設は4年前に完成したが、140億円もの建設費を投じながら、今                          は月10回ほどの催事にしか利用されていない。選挙を意識し、目に見                         える成果を示そうとする“点取り行政”。地方政治にも国政の予算のば                          らまきに似た体質が潜む。「市民が税金の無駄遣いを目にした時には、                          財政は既にむしばまれ始めているんじゃないか」。市がようやく開示した                        決算資料を基に財政の分析を始めた手塚は言う。松本市は38の第三                          セクタ-に出資する。三セクの経営が立ちいかなくなれば、市が損失を                         補償する。その契約は三セクに公的な信用を与える一方で、三セクの経                        営難がそのまま市財政の悪化につながる危険性を抱えている。市民有                         志でつくる「松本市の財政を考える会」は昨年、三セクとの損失補償契                         約を解除するよう市に求めた。三セクの発芽玄米販売会社が経営難に                         陥っていたからだ。同会代表の胡桃裕一(45)は「市議会が予算執行を                         点検すればいいのに、何もしないから市民が動くしかない」と憤る。市民                        の無関心が、政治や行政の横暴を許してきた。そんな反省から、地元自                        治体の財政を市民自らが監視する「平成の民権運動」が全国に広がりつ                        つある。先駆けは01年から活動を始めた東京・日野市。今では「さっぽ                         ろの『おサイフ』を知る会」など全国約50の自治体で市民が財政分析に                         取り組む。鳥取県知事時代に改革派知事として知られた慶応大学院教                         授の片山善博(56)は、住民自治の新たな動きにエ-ルを送る。「自治                         体財政は公の台所だ。家計のやりくりに腐心するように、市民が自治体                        の歳入・歳出に目を光らせることは民主主義の原点だ」と。財政白書の                         会の手塚には、忘れられない光景がある。05年11月、訪れた夕張市で                        ホテル・マウントレ-スイに宿泊。約3百人が収容できる朝食会場に、わ                         ずか3人の客しかいなかったのだ。その数ヵ月後、同市の財政破たんを                         報道で知ることになる。「松本が第二の夕張市にならない保証はどこにも                        ない」と手塚は思う。住民の暮らしの将来を左右する自治体財政。破たん                        のふちから戻るには多くの努力と苦難が伴う。そうなる前に何をすべきか。                       いま、重い問いかけが住民一人一人の前にある。    (敬称略)

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限界の先に<地方再生への道④>

2008-06-09 15:00:00 | 社会・経済

都会の孤独                                                            まち分断する高齢化

100_0564 東京都多摩市の「多摩ニュ-タウン」-。副都                            心の新宿から私鉄で四十分ほどのこのベットタ                            ウンにも、高齢化の波が押し寄せる。止めどない                           荒波は住民の足元を浸食し、ここにも限界集落を                          つくろうとしていた。

見えぬ境

「ニュ-タウンどころか、もうオ-ルドタウンさ」。                            地元商店街で菓子店を経営する永井照章(58)は                          自嘲気味に語ると、お年寄りがまばらに行き交じ                           る通りに目を移した。ニュ-タウンが開発されたの                          は1970年代。地元の諏訪・永山地区には、都営                          と独立行政法人・都市再生機構の賃貸団地、それに同機構が手がけた               分譲団地がある。そのいずれねが千戸単位の巨大団地を形づくつて                          いる。どこにでも訪れるはずの高齢化。だが、その影響がどこも同じだ                          とは限らない。分譲団地に現役世代が多いのに対し、賃貸団地には                           もっぱら年金生活者が住む。最近はその賃貸団地の中で、機構の団                            地から、家賃が半分ほどの都営に移り住む高齢者が増えてきた。年                          齢差や収入差に従った流れが、ニュ-タウンを三つに分断する。見え                          ない境界線を意識するかのように、分譲団地に足を踏み入れることは                          あまりない。独り暮らしの高齢者が多くなった都営賃貸団地は社会的                          な孤立を深め、孤独死が目立つようになった」(地元住民)地元で一級                          建築士として働く秋元孝夫(59)は10年ほど前、そんな団地の変化に                          気が付いた。NPO「多摩ニュ-タウン・まちづくり専門家会議」(通称・                          まちせん)を立ち上げたのは、小さな変化の中に衰退の兆しをかぎ取っ                         たからだ。秋元はいま、まちせんの理事長として、商店街の七夕祭り                          の復活などまちの活性化に奔走。団地住民らに「特定の賃貸団地に                          高齢者が集中する流れを変えていかないと、現代のうば捨て山ができ                          る」と訴える。

けん引役

なおも人口が増え続ける首都圏。過疎化とは無縁ながらも、足元は磐                          石とは言えない。政策研究大学院教授の松谷明彦(62)は「高齢化が                         顕著な北海道など地方の陰に隠れて目立たないが、これからは大都                          市でも急速に高齢化が進む」と指摘する。首都圏に一極集中的な人口                         増が続くとしても、20-30歳代の人口構成は既に高齢化が進んだ地                         方と大差がなくなると予測する。むしろ、首都圏の方が経済成長力が                          大きい分、いったん活力を失い始めれば、地方よりもその落差は大きい。                        戦後、日本は都市部と地方を交通・通信網で結ぶことで、地方の発展                          を伸ばしてきた。だが、都市部がけん引役を担えなくなれば、「もはやそ                         ういう政策はとりえない。大胆な政策転換が必要だ」と松谷は言い切る。                        団地住民と一緒に再生に智恵を絞る高齢者用の部屋を造る。そして、                          高齢者が入居している中層階をメゾネット型の(高層住宅の中で二階建                         て風の意)広い部屋に改造し、子育て世代を呼び込む-。「各世代が混                         然一体と暮らすまちにすれば、新たなニュ-タウンができる」。秋元は、                         迫りくる重たい壁を押し返すように言葉に力を込めた。高齢化の波に押し                        流されるように、かつて誇らしげに「ニュ-タウン」を冠した団地はその輝                         きを失いつつある。それは多摩市だけで起きているのではない。                             (敬称略)

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限界の先に<地方再生の道③>

2008-06-07 17:00:00 | 社会・経済

綱渡りの命                                                            「予防」へ住民と対話

100_0562 年に延べ百人を超える医学生が、長野県の奥                            深い山村にやってくる。鉄道も国道もない南相                            木村。人口1千人余りのこの村の国保直営診療                           所で、医者の卵たちはお年寄りの話に耳を傾け、                          村内の家々を訪ね歩く。

生活指導

「色平先生がね、しょっちゅう家まで診に来てくれ                           るからね。独り暮らしでも安心なんだあ」。診療所                          に顔を出した倉根ちづ(88)は医学生らの前でシ                           ワだらけの笑顔をつくった。色平先生とは、診療                           所長の色平哲郎(48)。10年前、約30㌔離れた                           佐久市の総合病院から派遣された。20年ぶりの常勤医だった。医学                          生らは色平が主宰する「塾」の参加者である。色平は着任以来、村に                           医学生らを招き、都市との橋渡しを続けている。地域医療をじかに知っ                          てもらうためだ。滋賀医大3年の平野雅穏(26)は「過疎地の医師を志                          しても、大学の勉強ではどうしたらいいか分からなかった」と色平塾に                          参加した動機を語った。コンビニもなく自給自足に近い暮らし。築100                           年の旧家でいろりを囲む。「こんな生活があったなんて」。村民の暮ら                           しぶりを肌身で感じ、都会育ちの医学生たちの顔つきは次第に変わっ                          ていく。県を挙げて予防医療を重視する長野は、高齢者一人当たりの                          医療費か゛全国で最も低い。色平もまた、その予防医療所での診察を                          終えると村内の家々を回る。お年寄りの体調に気を配り、茶飲み話を                          するように生活指導をする。「医者語だけじゃなく、ムラ語も分からない                          とね」。地域医療は医の技術だけでは太刀打ちできない-と色平は考                         えている。しかし、南相木村での色平の取り組みは、いつ崩れるとも                           知れぬ土台の上に立っている。色平を派遣した病院は研修医80人を                          含め2百人の医師が在籍し、県東部の医療の「最後の砦」。いまその                          病院では医師不足の地域からの患者が集中し、時に病床数を越える                          受け入れを余儀なくされるなど綱渡りの状況が続く。「過酷な現場の                           状況を嫌って研修医が来なくなれば南相木の常駐医派遣もできなくな                        る」。色平は懸念を口にした。

医局離れ

1月中旬、県南部の飯田市の市立病院を、厚生労働相の舛添要一か゛                            視察に訪れた。地域医療の現場を見終わった舛添の顔からは、いつも                            の愛想笑いが消えていた。「長野の医療は全国のモデルだと思ってい                          たが、医師不足がここまで深刻とは・・・」市立病院は地域の中核病院                          ながら、産科医不足のため4月からは「里帰り出産」の受け入れを休止                         する。周辺の医療機関でも、派遣医の引き揚げや医師の退職が相次ぐ。                        地方から医師が消える引き金になったのは、2004年度に導入された                          臨床研修制度だった。研修医は労働条件のよい都市部の病院に流れ、                        研修後も大学病院に戻らない医局離れが進んだ。大学からの医師派遣                         に頼っていた地方の医療機関はその影響を受け、拠点病院でさえ医師                           確保が困難に。残った医師も負担増に耐えかねて職場を去る「ドミノ倒                         し」が生まれた。舛添は視察後の住民との対話集会で「目先の問題もあ                        るけど、長期的問題も車の両輪でやる」と力説した。だが、国が緊急対                         策として導入した医師派遣制度は、派遣期間が最長でもわずか半年で                         しかない。昨年派遣を受けた後志管内岩内町の岩内協会病院では、ほ                         かの医師の確保ができないまま2月2日に派遣期限が切れた。厚労省                        は、異例の措置として派遣期間を3月末まで延長した。しかし、同病院の                        苦悩が消えたわけではない-「あらゆる手段を尽くして医師の確保に努                         めるが、現実派は厳しい」                     (敬称略)

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限界の先に<地方再生の道②>

2008-06-07 16:00:00 | 社会・経済

鉄の街の希望                                                           挫折ばねに活路探る

100_0561 東京・本郷の東大キャンバス。社会科学研究                             所教授の玄田有史(43)は、書類の山から一冊                           の報告書を取り出した。表紙に「釜石に希望は                            あるか」とあった。釜石は、あの新日鉄の城下町。                          堅苦しい研究に不釣合いな「希望」の文字は、玄                          田らが唱える「希望学」の調査であることを示して                          いる。報告書には、昨春のシンポジュウムでのや                          りとりが収録されていた。なぜ釜石だったのか?                           玄田は言う。「製鉄所の合理化という挫折を乗り                           越えようとしているから」。そこで「地域の希望」を                          考えたかったという。

誇り刻む

昨年12月。JR釜石駅前広場の一角に、近代製鉄発祥150周年の                           記念碑が建った。「ものづくりの灯を永遠に」。釜石鉱山の磁鉄鉱で                           造った碑に、市民は鉄のまちの誇りを刻み込んだ。新日鉄釜石製鉄                           所ではいま、線材の好調な生産が続く。だが、「ヘルメット姿の作業                           員が闊歩した」(地元商店主)昔の熱気は町中にはない。1960年                            代に約8千人を数えた製鉄所の従業員は、89年の高炉休止を経て                           2百人を切った。市の人口も4万2千人と最盛期の半分以下だ。東                            北新幹線の新花巻駅まで百㌔近い道のり。高速道路も通っていな                            い。そんなまちで、聞き取り調査を続けた玄田ら大学の研究者たちは                          「困難に向き合う人々の気概」と出合うことになる。

連携が鍵

石村真一(54)が経営する石村工業の歩みは、高炉を活力源として                            きたまちの歴史と重なる。もとは構内設備業者。仕事はすべて新日                           鉄関係だった。「信じたくなかった」という高炉休止の後、工業用機器                           の製造下請けで生き残りを図ったが、中国製品との価格競争に苦し                           んだ。活路を開いたのは水産・林業など地場産業と連携したものづく                           りだつた。木くずのペレットを燃やすスト-ブは、北海道にも出荷する。                          電気を使わずに効率良く燃やせるのが特長で「いいものを作って売れ                          ばやっていける」。10人まで減った従業員は今、正社員で20人。近く                          発売するワカメ自動刈取り機も「省力化で漁業の後継者確保につな                           がれば」と期待をかる。市内では進出企業が14社を数え、2100人                           が働く。製造業に従事する市民も増加に転じた。一方で、国際競争の                          荒波に押され、撤退した企業も10社ではきかない。進出企業が採用                          するのは、新卒を除けば派遣や臨時従業員などが大半で、地元には                          「低賃金で使われるのなら、植民地と同じじゃないか」との不満がくす                          ぶり続ける。だが、火の消えた高炉が残した深い穴を埋めるのに、え                           り好みができるはずもない。同市産業政策課長の佐々隆裕(53)は、                          首都圏で企業誘致に靴底をすり減らす。大手企業や研究所、果ては                           産業廃棄物の処理業者まで。足まめな営業マンのように歩き回るの                          で、「公務員だと言うと驚かれる」と佐々は笑った。では、釜石に希望                          はあったのか-。玄田たちは調査の中間報告で、誘致企業と地場の                          連携や豊かな観光資源の活用などの課題を並べ立てた。まちを生き                           返らせようと懸命になつている人たちも、まだ力を合わせ切れていな                          い。だが、玄田は「ある」と確信する。「挫折を経験しなければ、希望                           は生まれてこないから」。苦境からはい出そうとする釜石の気概は、                           一度苦難をなめたからこそ。玄田はその姿の向こうに再生への道筋を                          見る。石炭、造船、漁業・・・。道内経済も基幹産業の衰退で低迷にあ                          えぐ。道は2008年度以降、4年間で10万人の雇用創出を目標に、                          企業誘致や中小企業の育成に力を入れようとしている。  (敬称略)

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限界の先に<地方再生への道①>

2008-06-06 17:02:09 | 社会・経済

老いる集落                                                            押し寄せる崩壊の波

100_0563 地方が疲弊している。止まらぬ人口減小と高齢                           化に、都市部との格差が追い打ちをかける。昨                            夏の参院選での与党惨敗は、そんな追いつめら                           れた地方の「反乱」でもあった。地方は再生の道                           を踏み出せるのか-。年内にも衆院解散・総選挙                          が予想される中で国内各地を歩いた。

日本中がマネ-ゲ-ムに酔い始める中で、警鐘                           は静かに鳴っていた。「この集落は自分らの代わ                           りで終わりだ。もう限界、もう限界・・・」。バブル景                          気の足音が近づいていた1986年。長野大教授                           の大野晃(67)は、高知県の山村でうめきのも似た住民の嘆きを耳に               した。住民の半数以上は65歳以上の年寄り。自らを支える力を失っ                           た暮らし。大野はそうした集落を「限界集落」と呼ぶことにした。そして                          今。地域崩壊の波は町や村を侵食する。「限界集落」は、都市と地方                          の格差の象徴となった。徳島と愛媛の県境に近い高知県大豊町。く                           ねった細い山道を10㌔ほどたどると、奥大田集落が山あいに見えて                           くる。わずか14世帯21人。

沢も枯れ

独り暮らしの北村亀子(76)は昨年秋、思わぬ“断水”に見舞われた。                          水道代わりの沢水が枯れかかっていた。「人がいなくなって山が荒れ                          たから・・・」。引き込みホ-スの漏れを直すと、どうにか水か゛流れてく                          るようになった。北村が集落の外に出るのは、結婚して県内に住む娘                          が来たときだけ。買い物は週一度の移動販売が頼りだ。「今はまだ元                          気だけど、病院にかかるようになつたら出なければね」集落を囲むスギ                         はかって多くの仕事を生んだが、輸入材に押され林業は衰退。若者は                         仕事を求めて都市に流れ、集落に残った住民は皆、そのまま年を取っ                         た。住民の4人に3人は65歳を超えている。住民総出だった道路の草                          刈も今では外からの応援が頼みだ。区長の吉川政史(57)は「誰も新                           しいことをしようとしない。みんな先のことは考えない」。描けぬ将来に                          もどかしさだけが募る。大豊町は町全体でも65歳以上が半数を超える                          限界自治体。限られた税収では、小規模な農地の整備でさえままなら                         ない。「このままでは人がいなくなるのではないですか」。昨秋、大豊町                         長の岩崎憲郎(56)は中学校で生徒から問われて、一瞬答えに詰まっ                         た。かっての高度成長期。都市部に人を吸い上げられながらも、大豊町                         のような地方にも恩恵は回ってきた。都市部で生み出したカネが補助                          金や景気対策の形で地方にばらまかれ、道路や施設に形を変えた。                          だが、バブル崩壊後、財政難の国からはカネよも、財政再建の名の下                          に「ツケ回し」が押しつけられるようになった。

風吹けど

疲弊した地方を前に、国は「地方重視」と言い始めた。昨年の参院選で                         農民票を失った与党の党勢挽回策・・・。理由はどうあれ、過疎と高齢化                        に押しつぶされつつある限界集落にとって、地方重視の政治の風は慰                          めにしか感じられない。「われわれにはもう、風を生かす体力がない」。                         岩崎は嘆いた。集落の高齢化は道内でも急速に進み、道は全庁的な検                        討チ-ムを設置した。「限界集落」の名付け親である大野の目には、市                         町村合併で町の中心部から離れた集落ほど過疎化が進む地方の姿が                         見える。北海道もまた、その例外ではない。むしろ、広大なだけにその危                        険は大きい。「限界集落になる前に、対策を打つことが重要だ。後手の行                        政はコストを高める」残された時間は多くない。         (敬称略)

団結、活性化を模索

「地域格差」が地方と都市部を分断し、人と冨の偏在をつくり出して                           いる。この言葉を時代のキ-ワ-ドに押し上げたのは、産業の乏し                            い地方を置いてきぼりにした経済のグロ-バル化や、高齢化へと突                           き進む社会の変容だけではない。国の財政難の中で地方自治体に                           自立を迫り、地方交付税を削り取った小泉純一郎政権下の三位一                            体改革が、地方の疲弊を一段と加速した。そんな中、過疎化にあえ                           ぐ小さな集落が、次々と荒廃のふちへとこぼれ落ちていった。人口の                          半数以上が65歳を超え、存続の瀬戸際にある「限界集落」は、国土                           交通省の2006年の調査で、全国で7878に上る。過疎市町村にあ                          る集落の12・7%を占める。西日本に多く、全国を十圏域に分けろと                           その比率は四国か゛20・6%で最も高い。道内は319を数え、比率                           は8・0%にとどまっているが、1999年の前回調査と比べて比率は                           倍以上に跳ね上がっている。そうした中、過疎の集落を抱える自治体                         か゛、団結して活性化を模索する動きも出始めた。昨年11月、限界集                          落の再生を目指す「全国水源の里連絡協議会」が発足。上川管内中                          川町など道内四町村をはじめ全国から約150の自治体が結集し、国                          土保全や環境面での中山間地の役割の重要性を訴えようと、活動の                          ための基金づくりに乗り出した。再生への取り組みが成果を挙げてい                          る地域もある。高知県の馬路村はユズの加工品で年間30億円の売                           り上げを誇る。農協はこの5年で10人以上が村外から就職した。徳                           島県の上勝町では、高齢者らが高級料理に添える季節の花や葉の                           出荷に取り組む。1人で一千万以上を売り上げる人もいる。こうした再                          生の芽をどう育てていくか。地方は疲弊との闘いの中で新たな奮起を                          迫られている。                          (敬称略)

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兼業農家持続性に黄信号

2007-12-19 14:30:00 | 社会・経済

先を見通した農業政策を-生源寺真一

水田地帯の農村を歩くと、元気な高齢者が農作業にいそしむ姿に                            よく出会う。しゅんせつや草刈など、農業用水路の維持保全に参加                            する高齢者も多い。水田農業は高齢農家、とりわけ昭和一けた世代                           の頑張りによって支えられている面がある。だが、昭和一けた世代                           の一番若い人は今年で七十三歳。健康な生活のための農作業は大                          変よいことだが、長期的に地域の農業を支えてもらうことはできない。

プロの確保不十分

昭和一けた世代の農業技術は本物だ。その多くは終戦から高度成                           長の始まる1950年代半ばにかけて就職し、半世紀を超える農業経                           験を持つ。息子や娘が農業以外の仕事に通勤しても、父親と母親が                          農業を守ってきた。作物を見る目は確かで、農業機械にも結構強い。                          これが兼業農家の典型的なパタ-ンだった。こうしてある種安定状態                          にあった兼業農業が、昭和一けた世代の大量リタイアによって持続力                          を急速に失いつつある。農業経験に乏しい次世代の多くの兼業農家に                           は、機械作業のサポ-トや栽培管理のアドバイスが必要だ。問題は機                         会作業を担当したり、技術的な助言を提供できるプロの農業者が十分                          に確保されていないことだ。水田集落八万の半数には、農業中心に所                         得を得ている主業農家は一戸もない。農業以外に仕事を持ちながら、                          朝夕や休日に土に親しむ兼業農業は、これからの農村の生活スタイル                           として魅力に富んでいる。しかし兼業農家だけからなる農業の土台はは                         なはだ脆弱だ。国民に安全で安心な農産物を供給するためにも、農村                         の中心にはしっかりした技術を備えた農業者が必要である。

担い手育成に暗雲

政府が担い手農家や集落営農組織の育成に本腰を入れているの                           は、兼業農業の持続性に黄信号がともっているからだ。2007年に                           は、担い手に施策を集中するための担い手経営安定新法も施行さ                            れた。ところがここにきて暗雲が漂い始めた。参院選に勝利した民                            主党が、担い手経営安定新法の廃止を含む戸別所得補償法案を                            国会に提出。自民党からも、選挙を強く意識してか、担い手政索の                           見直しを求める声が上がり始めた。農政が国会の場で本格的に議                            論されることは大変よいことだ。だが議論は10年、20年先を見通し                           た農業・農村のビジョンに基づくものでなければならない。現在の水                           田農業の構造を固定化することは、農業の衰微を放置することと同                           義だ。国会での論戦が農業戦略なき選挙戦術の応酬とならないこ                            とを希望する。(しょうげんじ・しんいち=東大教授)

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時代の肖像「判決の『非常識』を憂う」

2007-11-28 17:00:00 | 社会・経済

◎裁判所が道徳を壊すと指摘していますね                                         元裁判官 井上 薫さん(52)

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東京大学理学部化学科卒、同大学院化学専門                           修士課程修了の異色の裁判官だった。司法試                            験には2年間の独学で合格したという。                                東京都八王子市在住

「代金は支払う」「借金は返す」。これは法律というより、社会の常識だ                          ろう。だが、今の世の中、学校の給食費や保育料を払わない親が大                           勢いる。文部科学省の調査では、全国の給食費未納額は二十二億                           円以上。払えるのに払わないケ-スが6割もあった。井上さんは、こう                          した「道徳心の欠如」の原因の一端が裁判にあるという。「債務の支                           払い能力があるのに、支払わなくてもいい制度がある。破産法による                          破産免責制度です」司法統計では、自己破産などによる免責の申し                           立て件数は、1975年まで年間60件未満だった。それが80年代以降、                         急激に増え続け、2002年には20万件を超えた。05年には、その99                         %が免責を許可された。一軒当たりの債務は500万円、総額一兆円                          を超すという。破産免責というと、「サラ金地獄」が社会問題になったこ                         ろ、貧しい債務者を救う「弱者救済」のイメ-ジが出来上がったが、「実                         際は違う」という。「借金を帳消しにした上で、その後の収入は手に入                           るので、高所得者に有利な制度なのです」。女性関係で散在した医師                         が破産免責後、二千万円の年収を得ていた事例もあったそう。                              破産法には「浪費や賭博」など、免責を不許可にできる事由が挙げら                          れているが、ほとんど顧みられないという。「裁判官は前例尊重の意識                         が強い。許可が慣例になると、自分も従う。考えないんです。その方が                         楽だから」「正義の府」の裁判所のお墨付きを得て、借金の踏み倒しは                         不道徳ではなくなった。「こんな風潮なら、正直に借金を返すのがばか                         ばかしくなるのでしょう」井上さんの指摘は、頻発する「親殺し」にも及                          ぶ。1973年、最高裁は、厳罰を定めた刑法の「尊属殺人罪」は、「平                          等原則に反した違憲」とする判決を出した。尊属とは父母や祖父母の                          こと。親への敬愛や報恩という道徳に基づく規定だった。「この事件で                         は、殺された父親が反倫理的だった。このケ-スに限って普通殺人罪                          を適用すべきで、尊属殺人罪を否定する必要はなかった」。これ以降、                         司法では尊属殺人罪は適用されず死文と化し、95年には条文が削除                         された。「この違憲判決で、報恩の道徳は否定された。実務への影響                          は大きく、少年事件で裁判官も言わなくなった。親殺しへの歯止めが                          失われたと思います。」井上さんは、横浜地裁時代に「判決文が短すぎ                         る」との理由で再任を拒否され、昨年4月に退任した。短い判決文には                         理由があった。「判決主文に影響を与えない判決理由は蛇足であり、                           違法。書くべきではない」との主張だ。これを「蛇足理論」と名付け、実                          践した。「審理が長引き、被害者の救済が遅れるのも蛇足判決の弊害」                         という。退任後も司法批判を展開、9月に「裁判所が道徳を破壊する」を                         出した。

裁判所が道徳を破壊する (文春新書 590) 裁判所が道徳を破壊する (文春新書 590)
価格:¥ 746(税込)
発売日:2007-09

道徳破壊の最たるものとして井上さんは、昨年9月の東京地裁判決を挙                        げる。「入学式や卒業式での日の丸・君が代の強制は違憲」とし、学校の                         教職員に国旗掲揚の際の起立や国歌斉唱の義務はないとした判決だ。                        この判決には、「思想・良心の自由」などの評価をめぐって賛否があった。                        井上さんは「教職員の国旗国歌の拒否は、生徒らの拒否をあおる恐れが                        ある。判決は結論も理由付けも間違っている」と批判。「国旗国歌に礼儀                        ある態度で接するのは社会常識なのに、尻を向けてもかまわないと言っ                        ているようなもの」と、判決の大きさを指摘した。

あとがき

井上さんは2005年に「司法のしゃべりすぎ」を出版、現役裁判官                            の司法批判として話題ににった。退任後も著述に専念し、新書を中                           心に既に六冊執筆。九月には東京弁護士会に登録し、徐徐に弁護                           士活動も始めるという。強い意志の人でありながら、人柄は温厚そ                            のものに見えた。

司法のしゃべりすぎ (新潮新書) 司法のしゃべりすぎ (新潮新書)
価格:¥ 714(税込)
発売日:2005-02

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<花>競り4秒・即日国外へ

2007-11-27 14:30:00 | 社会・経済

世界一オランダ・ア-ルスメ-ル市場                                             機械化と地の利が武器

100_0373 オランダの首都アムステルダム郊外に、世界一                           の規模を誇る花き卸売市場「ア-ルスメ-ル花                           市場」がある。約百万平方メ-トルの屋内は、                            サッカ-場の140倍の広さで遠くは見通せない                           ほどだ。世界の花の価格はここで決まると言わ                          れ、世界中からの視察者が絶えない。                                (オランダで、高田昌幸・写真も)

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朝6時。競りが始まると、最新システムを備えた                           専用会場で、大勢の業者が品定めにかかった。                           生産農家名、商品名、花の数量、サイズ、質な                            どは電子納品書に記載。

100_0221 それが大きな画面に映し出される。各競り会場                           の座席は3百人分だが、インタ-ネットで場外と                           結ばれており、さらに多くの業者が参加する。市                           場案内係りのホセ・ハウヘイさんの説明を聞くと、                          市場の「すごさ」を実感する。「毎日2、100万本                           の切花と200万個の鉢植えが競りで売られます。                          その8割は、同じ日のうちに国境を越え、世界中                           に出て行きます」オランダは世界の花市場の6割                          強を占める。そのうち、ア-ルスメ-ルの占有率                           は約4割。地元のほか、アフリカ、南米、中東な                           どから仕入れ、欧州各国、ロシア、北米などに出荷する。「花は鮮度                   が命。世界を相手にしているので、スピ-ドが肝心です」とハウ・ヘイ               さん。一つの花の競り時間はたった4秒。機械化で取引成立後、買                           い手の業者が商品を受け取るまで1時間半しかかからない。オラン                           ダの空の玄関、スキポ-ル空港まで車で20分という「地の利」も武                           器だ。同市場の顧客管理部長ユルン・アウトハユ-ストさん(39)は、                           1994年から2年間、日本に滞在し、主に東京でビジネスを学んだ。                           北海道も訪れ、「自然が素晴らしい。花生産にも最適な環境」と褒め                          る。日本産の花では、岩手県のリンドウか人気の的だ。アウトハユ-                          ストさんは「日本人は世界有数の花好き。現代の花ビジネスは、生                           産コストを切り詰めるか、オンリ-ワンを目指して独自の品種を開発                           するかの二通りしかない。北海道の生産者も『大志を抱け』の精神                            で頑張ってほしい」とエ-ルを送っている。

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ゆったり古書選び・・

2007-11-17 14:00:00 | 社会・経済

全国に広がる個性的お店・・・コ-ヒ-もいかが

100_0328 流行のインテリアに個人の蔵書を並べたかの                             ような書棚=写真=。一見すると今風のカフェだ                          が、実は古書店だ。八月にオ-プンした「古書・                           珈琲(コ-ヒ-)の転石舎」(札幌市中央区南19                           西9)は、あえてたくさんの本を置かず、客にとっ                           て本を見つけやすく、居心地のいい空間を目指し                           ているという。ファッション関係の書物や美術書を                          中心に高額ではないが手に入りにくい本を厳選し                          て置いている。店内で提供する飲み物も産地に                            こだわったエチオピアやコスタリカのコ-ヒ-                             (525円)用意。カウンタ-席もあり、コ-ヒ-を飲みながら、お客さ                んと本の話をするのが楽しい」と同店代表の安部幸男さんは話す。                本の買取も行っており・主張買取にも応じる。                                        営業は午後1時-9時、月曜定休。                                              問い合わせは℡011・532・2076へ

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