組織力 品質安定へ遠慮せず意見
一件のクレ-ムが新たな道を開いた。2003年 2月、渡島管内知内町の知内町ニラ生産組合組 合長、小西勝則さん(50)は始発列車に飛び乗 った。コ-プさつぽろの札幌市内の店舗で、知内 ニラ「北の華」を束ねたテ-プの内側に針金が混 入した客から投書があった。「替わりのニラを送っ て済む話ではなかった」。駆けつけた小西さんは、 店長に何度も頭を下げた。針金がどの農家から 混入したのか、分からなかった。「原因がつかめないのなら、本当に 謝ったことにならない」。小西さんは知内に帰るなり、動きだした。翌 春、ニラを束ねるテ-プに組合員の番号を入れた。05年は袋に包装 日の暗証番号、06年はテ-プに組合員の名前も記した。問題が起 った時は「いつ」「どこで」「誰が」出荷したか一目で分かるようになっ た。07年春には袋にQRコ-ドを貼り付けた。携帯電話で読み取ると、 生産者の情報が書かれたホ-ムペ-ジにつながる。現組合長の石 本顕生さん(54)は「『安全安心』ま取り組みは着実に前へ進んだ」と 強調する。異物混入から5年。今年3月、札幌市手稲区のコ-プさっ ぽろ新はっさむ店では、「北の華」は野菜売り場の中央に置かれてい た。買い物客の手が次々と伸びていく。コ-プさっぽろの店舗と宅配 を合わせた07年度の二倍にまで増えた。田中宏人宅配チ-フバイ ヤ-(55)は「知内ニラへの評価の表れ」と歯切れがいい。組合員の 切磋琢磨も市場での評価を高めている。3月上旬、年二回の「目揃え 会」が知内町の集荷場で開かれた。春ニラと夏秋ニラの出荷時期に 品種を一定に保つためのもので、翌日出荷する約60戸のニラが箱に 入れられ並んだ。気心の知れた生産者同士も、この日は誰もが緊張 した表情だ。仲間の組合員が作ったニラを手に取り、見つめる。品質 が劣るニラを出荷した農家が注意されることも珍しくない。ある生産者 は「良い物を作るのに先輩、後輩もない。物を言い合える雰囲気がう ちの組合の強みだ」と話す。組合の規定には、知内ニラの「ブランド」 をひどく傷つけた組合員に対する除名の規定もある。組織を貫く厳し い規律。その一方、独自の手厚い支援も組織への求心力を高めてい る。その一つが単価の最低補償制度だ。組合員は出荷時、販売額の 1%を積み立てている。安定出荷を支援するため、価格が時期ごとに 決めた単価よりも下がった場合、その差額を補てんする。「かつては みんな貧乏で冬は家族と離れ、出稼ぎに出た。知内のような小規模 な農家は組織の力で生き残るしかない」。現在、新函館農協代表理 事専務の小西さんは、力強く言い切った。
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