北大大学院・榎木助教ら 細胞変化を確認
北大大学院医学研究科の榎木亮介助教(神経生理学)のグル-プが、脳の神経細胞が情報をやりとりする瞬間の画像化に成功し、30日付けの米科学誌ニュ-ロンに発表した。ものを覚えたり忘れたりする際、情報を出す側の細胞も変化することが確認され、アルツハイマ-病や認知症などの治療法開発に役立つという。
脳内では、情報はグルタミン酸の形を取り、シナプス(神経細胞同士の継ぎ目)前細胞からシナプス後細胞へ受け渡すことで伝わる。この情報伝達が良くなったり悪くなつたりすることが、ものを覚えたり忘れたりする記憶の脳内メカニズムと考えられているが、なぜ良くなったり悪くなったりするのかは十分、解明されていない。従来は後細胞の形が受け取りやすく、または受け取らないよう変化することは分かっていたが、情報を出す側の前細胞は小さく、変化しているのかどうか調べるのが困難だった。榎木助教らは記憶で重要な役割を果たす脳の一部「海馬」のシナプスに注目。マウスのシナプス1個を生かしたまま、後細胞に情報を受け取ると光るよう色をつけ、最新式レ-ザ-顕微鏡で調べた。ものを覚えるときの刺激を与えると、前細胞は常に情報を放出し、後細胞がそれを受けて頻繁に明るく光った。反対に忘れるときの刺激を与えると、前細胞は情報をほとんど放出せず、後細胞もほとんど光らなかった。これは、ものを覚えたり忘れたりする際、前細胞も情報を出したり、出さないよう変化することを示すという。榎木助教は「記憶や学習には前細胞と後細胞がバランスよく変化することが重要と考えられる。今後、前細胞の働きにも注目することで、記憶障害の治療法開発が進むと期待できる」と話している。
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