京大・山中伸弥教授 世界的に競争激化 問い合わせも殺到
大人の皮膚細胞から多様な細胞に変わる新世 代の万能細胞と期待される「人工多能性幹(iP S)細胞」を作り出すことに成功した京都大再生 医科学研究所の山中伸弥教授(45)。ノ-ベル 賞級の研究成果は世界の注目を集め、先月21 日の発表後、海外から問い合わせや取材が殺 到している。論文は年明けに発表する予定だっ たが、10月に米国を訪れた際、「競争相手の米ウィスコンシン大 の研究者が科学誌に論文を投稿したかもしれない」という情報を入 手。慌てて、サンフランシスコから日本に向かう帰りの飛行機の中で、 書きかけだった論文を仕上げたという。米科学誌セル(電子版)に掲 載されると、ワシントン・ポストやニュ-ヨ-ク・タイムス゛など十数カ 国のマスコミから、百件近い取材を受けた。研究室で一日中、国際 電話の問い合わせに応じた日もあった。講演の依頼も相次ぎ、「多 過ぎて断りの返事さえ書けない状況。今は取材などに対応している が、早く研究生活に戻りたい」と本音も。好きなジョギングの時間も取 れず、「もう若くないので、体の方も限界に来ている」と苦笑いする。 「わたしの病気は治るのか」。脊髄を損傷した患者や糖尿病患者らか らも、これまでに数十件の電話やメ-ルが寄せられた。山中教授は 「実用化のゴ-ルはまだ遠く、感受さんに過度の期待をさせてはい けない」としながらも、今回の成果について、「再生医療に向け、一歩 前進したことは間違いない」と話す。万能細胞をめぐって世界的に研 究競争が激化する中で、「わたし個人や京大だけが研究費をもらって も、米国や英国などに勝てない。日本の優秀な研究者が集まり、チ- ムをつくるしかない」と指摘。「若手研究者が侵食を共にしながら研究 する『日本国幹細胞研究所』を1日も早くつくる必要がある」と訴える。 福田康夫首相は政府の総合科学技術会議に研究環境の整備を指示 し、国も動き始めた。先月二十六日には、「移植医療やがん治療に希 望を与える研究」と評価され、ドイツがん研究センタ-から「マイエンブ ルク賞」を授与された。しかし、山中教授は「再生医療とか装薬のため に作っているのがiPS細胞。まだ全く人の役に立っていない」と厳しい 表情。「わたしにとっては人の役に立つことが唯一の賞」と研究への 意欲をにじませた。
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