嗅覚で「おいしい」判定
収穫の秋、旬の食べ物がたくさん出回って、私もおなか周りに気を 使う季節です。おいしい食べ物に出会ったときはとても幸せな気分 になります。この「おいしい」って、どういうしくみなのか考えてみまし た。食べ物を楽しむときには、さまざまな感覚が働いています。とく ににおいと味、つまり嗅覚と味覚は重要です。皆さんの中には「お いしい」は、「よい味」と同じと考えている方が多いと思います。でも、 味覚だけでは食べ物は判定できないことが分かっています。人は 目隠しをして食べ物を口に含んでも、それが何であるのか、ほとんど 当てることができます。ところが、その状態で鼻をつまんでおくと、と たんに、食べ物の判定ができなくなるのです。口の中に入っている ので、甘い、しょっぱいなどの味は分かっているのですが、たとえば、 甘いものだけど、メロンなのかリンゴなのかスイカなのか、判別にか なり苦しみます。鼻をつまむと、鼻腔内の空気が入れ替わらないので、 口のなかの食べ物のにおいを感じないためです。口の中にある食べ 物のにおいは、鼻とのどがつながっているので鼻の後ろ側(後鼻孔) から上がっていきます。ですから、通常のにおいとは少し違い、味と においが一体となった感覚になります。一般に言われる「風味」はこ れをさしているのではないかと思います。ですから、カゼで鼻が詰ま っていると、食べ物はおいしくありません。食べ物を味わうとき、わざ とにおが鼻に通るようにすると、一段とおいしくなりますよ。 (とうせ・のりつぐ=札医大医学部長)
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