北大チ-ムが解明手法 BSEなど予防応用期待
北大電子科学研究所の小松崎民樹教授(生物物理)と馬場昭典博 士研究員の研究チ-ムは、生命活動の源となるタンパク質を分子レ ベルで観察し、タンパク質がどのような過程を経て立体構造を形成 するかを解明する手法を開発した。構造に異常を来たしたタンパク 質が原因で起るアルツハイマ-病や牛海綿状脳症(BSE)といった 疾病の解明・予防への応用が期待される。研究論文は、米国科学 アカデミ-紀要電子版に近く公開される。 分子レペルのタンパク質の大きさは数ナノメ-トル(ナノは十億分の 一)。当初はヒモのような状態だが、絶えず変化し(振る舞い)、最終 的に複雑な立体構造になる。しかし、「振る舞い」のメカニズムはよく 分かっておらず、研究者の間では「タンパク質の折り畳み問題」と呼 ばれて解明が課題となっている。研究チ-ムは、特殊な顕微鏡や標 識となる蛍光分子などを使って分子レベルのタンパク質を観察する手 法を活用。蛍光分子が出す光の強さが時間ごとに変化する情報など を数学的に処理し、タンパク質の「振る舞い」をグラス化する手法を開 発した。グラフを読み取ることで、タンパク質が折り畳める過程が分か るという。BSEやアルツハイマ-病などは、折り畳みに<失敗>し 構造に異常を来たしたタンパク質が突然変異で発生したり、外部か ら新入したりして、脳に蓄積することで発症するとされる。新しい解析 法により、異常タンパク質発生の仕組みの解明が期待され、馬場研 究員は「将来的には疾病予防や治療への応用のほか、人工タンパク 質の設計や新薬開発にも可能性が広がる」と話している。
折り畳み問題解明へ前進 木寺詔紀・横浜市立大大学院教授(計算生物学)の話
折り畳み問題は半世紀以上、研究者を悩ませてきた不思議な現象だ った。それを観測する手法が出てきたことには非常な価値があり、これ により研究が一歩も二歩も前進することになる。
タンパク質
DNAの遺伝情報に従い合成される。性質が異なる20種のアミノ酸 が数百個、鎖状につながり、ヒモのような状態から、最終的に立体 構造を形成する(折り畳まれる)。人間の体内には構造の異なる数 万種のタンパク質があり、合成と分解を繰り返しながら、酸素や栄養 の運搬、筋肉の収縮運動などの機能を担っている。
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