北大チ-ム 特定糖鎖の存在解明
北大大学院先端生命科学研究院の西村紳一 郎教授と同大学院医学研究科の藤堂省教授ら の研究チ-ムは、肝臓がんの存在を高精度で 判定できる生体物質を発見したことを明らかにし た。細胞表面にあり、病気になると構造が変化 する物質「糖鎖」の特定の組み合わせが、肝臓 がん患者に特異的に存在することを突き止めた。糖鎖の自動分析 機も企業と共同開発し、数時間で少量の血液から対象の糖鎖を識 別する方法も確立した。独立法人科学技術振興気候(JST)のプロ ジェクト研究で、東京で開かれた研究会で発表した。糖鎖は遺伝子 が生み出すタンパク室の情報を伝達・制御する物質で、がんや糖尿 病などの疾患に関与しているとされる。北大の研究チ-ムは肝臓が ん患者83人と健常者20人の血液中の細胞の糖鎖を分析したとこ ろ特定の四種類の糖鎖による三通りの組み合わせが、肝臓がん患 者の方に健常者より10倍前後多く存在することを発見した。肝臓が んの判定には、AFP(α-フェトプロテイン)という物質がよく使われ るが、肝臓がんではない肝炎患者らにも反応してしまうことがあった。 研究チ-ムが今回発見した肝臓がんの判定は103例のサンプル で誤差はゼロだった。糖鎖の分析は従来、ろ過や濃縮を繰り返し、 多量の採血と4、5日以上の時間が必要だった。西村教授は糖鎖 の識別原理を基に樹脂メ-カ-の住友ペ-クライト(東京)、塩野義 製薬(大阪)などと共同で糖鎖自動分析機の試作機を開発。一滴の 血液で一度に30-50種類の糖鎖を約5時間で調べられるという。 患者の負担が軽減されるほか、他の種類のがんに特徴的な糖鎖の パタ-ンを迅速に見つけやすくなる。研究チ-ムはすい臓や大腸が んなどの研究にも着手、「より早期のがんや糖尿病など他の病気と、 糖鎖の変化との関係分析にも当たりたい」(西村教授)としている。
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